空気入れ・番外編1
(「米式」バルブ、実は高性能)
今更なんで空気入れの話題なんか・・・と、思われる方もいらっしゃるでしょうが、
「今更なんで?」が実は一般にはあまり知られていないことも多い・・・ということも
ありますので、再度復習の意味をかねて取り上げたいと思います。
普段当たり前と思っていたことが、意外に間違っていたということも多いんです。
(;´д`)ゞ
最近の空気入れはプラスチック製が主流になってきて、鉄製に比べて驚くほど軽く
倒しても「ガシャ〜ン!!」と、ヒンシュクをかう音をたてずにすむようになりました。
先日、大手スーパーの自転車屋で、米式・英式兼用が定価980円で売っていました。
もう少しお金を出せば空気圧の目盛りがついているのも売られていました。
「米式・英式」ですが、ここのホームページでは自転車や車椅子に一般的に普及して
いる英式を中心に取上げています。
↑バイクや自動車に使われる「米式」。 ↑普通の自転車、車椅子に多い「英式」。
「英式」に比べて「米式」は
構造が丈夫なので、バルブが壊れることは滅多にありません。
ですから、大きなストレスのかかる自動車、バイク、自転車で言うとMTBなどによく
使われています。
(1度だけ自家用車のバルブが調子悪くなり、スペアタイヤの部品と交換したことが
ありますが、今までユーザー整備をしている中でたった1度きりしか故障はありません。)
「米式」にムシゴムは使われていないので、交換をする必要はありません。
また、バルブ中央のヘソを押さえることで簡単に空気を抜く(調整する)ことが可能です。
慣れてしまえば、「米式」というのは
かなり頼りになり重宝するバルブなのです。
ですが・・・いかんせん・・・医療や介護の現状というのが困ったものなのです・・・。(ノД`)
先日・・・以下のようなことがありました・・・(実話です)。
たまたま別の施設に行って、話をしていた方の車椅子のブレーキが怪しい・・・。
・・・というか、殆ど効かない状態でした。
良く見ると、その車椅子には細いタイヤに「米式バルブ」が使われていました。
↑キャップがついていて、見た目には通常の「英式」っぽいですが・・・。
↑フタを外すと、厄介者
※扱いされる「米式」バルブが出てきました。
※「厄介者」という表現は、自転車用のポンプしかない施設・病院での現実的扱われ方
を述べています。今現在、丈夫な「米式」タイプを使って、専用空気入れを使用している
方にとっては「ひ弱なムシゴム」を使う「英式」の方が、むしろ「面倒な厄介者」でしょう。
↑
前回も紹介しましたが、プラスチック金具をバルブに「ぐっ!」と、突っ込んで・・・・
↑このように、プラスチックノブ(角みたいなの)を横に「ぐっ!」と、押し倒します。
これで固定できますので、あとは「クイッ、クイッ」と空気を入れるだけです。
※ここの部分が丸い金色の金具でできている空気入れもあります。
その場合はその丸い部分を回して、固定したり緩めたりしてください。
↑空気を入れている様子。「英式」用のアダプターが床に転がっています。
・・・・これだけで空気入れは完了して、ブレーキはしっかり効くようになりました。
利用者さんは大変感謝していました。
(;´д`)ゞ空気入れただけなんですけど・・・
「空気入れてもらってなかったの?」と聞くと、「職員さんが2人がかりで入れてくれた
んだけど、きちんとブレーキが効かずにずっと恐かったんです。」とのこと・・・。
「2人がかり???」と聞いて、「もしや?!」と思ったのは私だけでしょうか?
そうです。自転車用アダプターをつけたままで、1人が口金を無理やり押さえて、もう
1人が空気を入れていた「らしい」のです。
空気を入れた直後に、男性職員が「どうやって入れたんですか?」と聞いてきました。
「こうやるんですよ。ここにも表示されていますよ。」と本体脇に図解で出ている旨を
伝えましたが・・・。 (* ̄O ̄)ノ
図解までされているのに見てないなんて! 図解がない空気入れも多いのに!!
病院・施設の対応なんて、実際このようなものです。
悲しいですが、決して珍しいことではありません。。。 (-_\)
折角、ご家族・ご本人が丈夫で良い「米式」タイヤを使用した車椅子を購入して、
病院・施設で使っていても「米式」であるがゆえに空気をきちんと入れてもらえない
という現実があるのです。自前の車椅子はセルフでやるしかないのでしょうか・・・?
この車椅子は良くできた車椅子でバックシートが調整式になっていました。
(最近の車椅子はシート調整・シーティングができる車椅子が多くなっています。)
タイヤも細く、高圧仕様になっています。タイヤが細くて高圧であるということは、
床との設置面積が少ない為、転がり抵抗を最小にでき楽に移動・操作ができます。
・・・ですが、逆にブレーキとの設置面積も少なく、タイヤの溝が浅いので、空気圧が
低下するとブレーキが効き難くなりやすいという、「両刃の剣」的要素もあります。
(実際は、表面積も少なく空気の密度も多いので、普通の車椅子に比べて空気の
減る割合は少ないようですが・・・)
↑ 左側が殆どの病院・施設にある
車椅子のタイヤ(溝が深く太い)。
右側がスポーツタイプ高性能タイヤ(溝は浅く細いが、高圧に耐える)。
↑この様な溝が薄く当り面の少ない
タイヤに従来のブレーキを使うのも無理があると思いますが・・・
段差の全く無い施設内で使うならば、
ソリッド式などの空気レスタイヤを
選択するのも手だと思います。
↑このタイヤはKg/cm
2表示でなく、PSI、BAR表示になっていました。
110 PSI(7.5BAR)と書いてあります。
「1Kg/cm
2=14.2psi」として計算すると、110PSI=約7.75Kg/cm
2
BARはKg/cm
2と殆ど変わりませんが、BARに約1.02をかけた位だそうです。
ですから「7.5×1.02=7.65」となり、計算上7.7Kg/cm
2位かな?となります。
通常の車椅子は3〜4Kg/cm
2ですから、2倍もの空気圧をかけられるタイヤなのです。
以前、パンテーラの車椅子を
調べたときも同様のコメントを書きましたが、きちんと
本来の空気圧を入れていればかなり軽い力で操作することが可能になります。
これだけの圧力に耐えられるのも
頑丈な構造の「米式」ならではの利点です。
・・・ですが、悲しいことに・・・(;´д⊂)
通常の病院・施設に勤めている職員はそんなことは「
夢にも」思っていません。
車椅子に空気を入れることすら疎かになっている上、米式対応の空気入れがあっても
その使い方すら知らない、仮に(もし)知っていたとしても
自家用車の約3〜4倍の空気圧
である8キロ近く空気を入れることなんて「
絶対」と言い切っていいくらい知りません。
100人中、1人いるでしょうか?(ムシゴムは10人中1人知っているかいないかです)。
この確率は、車椅子についてあれこれ指導しているリハビリ専門家(職種は秘密)
(;^_^A
ですら、同じでしょう。「虫ゴム」のことすら知らないのですから。
8キロきちんと入れて始めて、本来の操作性・制動性が発揮できる車椅子に、
「とりあえず、2人がかりで何とか空気が入ったから、まぁいいか・・・」とか、
「ヘタに入れすぎると、細いタイヤはパンクするだろうからやめておこう・・・」という
感覚でしか空気を入れていない現実があるのです。
これは、施設や職員の意識を変える云々よりも、下手に施設や病院に「米式」バルブの
車椅子を長期に持ち込むことは命の危険すらあると考えたほうが良いかも知れません。
(こんなことを書くと、「米式」バルブのユーザーに叱られそうですが・・・)
某大手スーパーの自転車コーナーで、「英式」と「米式」のチューブが全く同じ価格で
売られていました(750円)。生産コスト的には殆ど変わらないのでしょう。
「米式」でも「英式」用空気入れが使える
アダプターは450円で売っていました。
様々なご意見はあるでしょうが、施設・病院においては「英式」の
スーパーバルブ化が
現時点で最も安価で現実的な対策ではないかと考えています。
ご自身やご家族がきちんと整備できる方は「米式」のメリットの方が大きいと思います。
(専用の空気入れを持っていて、わざわざ「英式」に取り替える必要はありません。)
自動空気入れ装置のついた車椅子が「米式」なのは耐久性に信頼がおけるからでしょう。
※ここでは、わかりやすく空気圧をKg/cm2として表示しています。
以前は教科書でもKg/cm2と書かれていましたが、最近ではkgf/cm2と表記されています。
平成11年10月1日より国際単位(SI)でkPa(キロパスカル)と統一されましたが、
{ }内に今までの単位を付け加えるようになっています。自動車などで確かめてみましょう。
(介護型リハビリシステム研究所)