車椅子の取扱説明書

   <国内大手メーカーの取扱説明書を見て考えたこと>


        このコラムでは、管理人が勝手気ままに感じたことを書き込んでいます。
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 以前から、取り上げよう、取り上げようと思いつつ、なかなか機会がなかったので、
この際コラムにて「車椅子の取扱説明書」の内容について考えてみたい・・・と思います。

 数年前から、PL法(製造物責任法)が出てきたことで、車椅子の説明書にも「!警告」「!注意」
中心にした説明がしつこいくらいに書かれるようになりました。
 説明そのものは、決して利用者が分かり易いものではなく、「事故への危険性を謳いましたよ」と
言わんばかりの内容が列挙してあるだけです。高齢者のご家族はどれだけ理解できるでしょうか?
 本当に利用者・介護者を守りたいのなら、実際にその箇所に警告やマークを貼り付けて分かり易く
するべきです。


 今手元にある某大手メーカーの取扱説明書の最初には、「ブレーキの使用方法」が出ています。
そして「警告」の一番最初に、
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!警告:タイヤの空気圧が少ない状態で、使用しないでください。
 (ブレーキのロックが出来なくなり、車椅子が動いたりして、事故の原因となります)

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・・・と書いてあります。

後半の「ご使用の前に」のところでも再度同じような警告文が出てきます。
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!警告:タイヤの空気圧が少ない状態で、使用しないでください。
 (ブレーキのロックが出来なくなり、車椅子が動いたりして、事故の原因となります。
また、タイヤのパンクの原因となります。)

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ちなみに、「警告」と「注意」ではどの程度違うかといいますと・・・その説明書によりますと・・・
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!警告」→「この表示を無視して、誤った取り扱いをすると、人が死亡または重傷
負う可能性が想定されることを示します。」
!注意」→「この表示を無視して、誤った取り扱いをすると、人が障害を負う可能性が
あることおよび物的損害の発生する可能性が想定されることを示しています」

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・・・・つまり、「空気圧が少ないことは命の危険がある」という事実はメーカーも認めているわけです。
それを知らずにのんきに構えているのは目の前の障害しか興味の無い、専門家と教官ですね・・・。


最後に、その説明書には「もし、こんなトラブルが発生したときは」と何項目か紹介されています。
いくつか必要な部分を抜き出したいと思います。
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車いすをご使用されていて故障かなと、思うトラブルが発生したら、修理を依頼するまえに
下記項目を確認してください。
   <トラブル>             <確認点>                 <対処>
タイヤのエアーが少ない  →  タイヤのエアーは適正ですか   →  エアーを入れてください

エアーがすぐに抜ける→空気入れ部のネジはしっかり締まってますか→しっかり締め直してください
     〃        →    ムシゴムが劣化していませんか    むしゴムを交換してください
ブレーキが効かない → タイヤの空気圧は適正に入っていますか →  エアーを入れてください
              → タイヤは、磨耗していませんか        → 取扱店にご連絡してください

走行操作が重い    → タイヤの空気圧は適正に入っていますか → エアーを入れてください
     〃  →駆動輪・キャスターに髪の毛、ビニールが巻きついてませんか取り除いてください
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ほぼ、そのままの状態で抜き出しましたが、驚くべき内容には赤で目印がつけてあります。
常に、ここの研究所で言い続けている・紹介し続けている内容(常識)ではありますが・・・・。
いきなり「ムシゴム」という言葉を出して、「劣化していませんか?」「交換してください!」では、
誰も理解できないでしょう。アンケートの結果からも、5人に1人理解できれば良い方ですから。

  この辺りが、業者の「非常に甘い!」ところです。
ムシゴムについて、対処しろというのなら、その場所とやり方は当然紹介すべきです。
どこで部品を手に入れるかの紹介も必要です。格好だけの説明書が見え見えな部分ですね〜。

駆動輪・キャスターの髪の毛・ビニールを取り除きなさい」と対処に書くなら、これも方法を
きちんと紹介すべきでしょう。
これのどこが取扱説明書なのでしょうか???


ムシゴムがわからなきゃ、警告に従って命が惜しけりゃ使うんじゃないぞ!」とも読めますし、
君たちはムシゴムもわからずに車椅子を使っているのかね??」とも読めるんです。

取扱説明書はいったい誰の為に考えてつくられているのでしょうか??
それでいて、表紙にはしっかり「保存用」って書いてあるんですよねぇ〜 ( ̄w ̄;)


製作者の立場で取扱説明書を書いて単に付属するのではなく、
利用者の立場でわかりやすい取扱説明書をつくりましょう。
ね、メーカーさん
(※販売店レベルで説明書の追加をつくり添付する・・・ということも十二分に可能でしょう。)


きちんとした取扱説明書があったら、それを読んで「虫ゴム」交換法を知る専門家も出てくるかも
知れません。(アンケートに取扱説明書を読んで・・・という回答が出てくるかも・・・。)
初めから「スーパー・バルブ(虫ゴムレス)」仕様にして、説明の手間を減らす手もありますよ!



※他にもいっぱい突っ込み所は存在しますので、時間があれば隅々まで読んでみて下さい。


                                   (介護型リハビリシステム研究所)

車椅子気ままコラム・・・第13回