「キャスター」整備法・パート7

    キャスターが方向転換しない

今回は、「うまくこげずに、疲れます。」と利用者の直訴であずかってきた車椅子です。
キャスターやタイヤは問題なく回転するようなので、よくよく調べてみると方向転換時に
キャスターが向きをうまく変えてくれないようです。

キャスターが向きを変えないだけで疲れることがあるのでしょうか?

例えば、お店でショッピングカートを押している時に、キャスターの向きが変わらず妙に力を
入れなければなかったりして疲れた経験はありませんか?
そのようなことが、四六時中起こっていると想像してみてください。

日常生活で使う車椅子は常に方向転換させて使っているので、楽にできるかできないかは
体の負担が全然ちがってきます。体力のない障害者・高齢者なら尚更です。

今回の整備は普段やることは「まず」ないと考えますが、
車椅子構造の知識を得るには参考になるのではないでしょうか?



↑問題はこの車椅子。腕力のない方が使っていました。


↑このキャスター(左右)の方向転換にやや抵抗がありました。


↑それぞれ逆向きに回してネジを緩めたら・・・・・。


↑車椅子を普通の姿勢に戻し、そ〜っとネジとフタを外します。
そうすると、小さな玉が並んで出てきます。これが「ベアリング」の構造です。


↑ついていた順番に並べると、こんな感じです。これで終わりかと思ったら・・・


↑まだ、ありました!上下2箇所にそれぞれついているようです。

 
↑こ〜んな感じで全部に汚れが詰まっていました。玉まで真っ黒!
潤滑の役割をするグリースが汚れを「つかんで離さない」状態です。


↑もう片方のベアリング、玉は比較的きれいですが汚れはたっぷり抱えています。


↑一端、玉を別な容器に移して汚れを拭きあげます。


↑ピカピカにすると、端が欠けてギザギザになっているのを発見しました。
相当、無理な力が加わっていたようです。


↑悲しいことに、グリースが手元に無かったので散々迷ったあげく「ワセリン」で代用する
ことにしました。まぁ、高速回転する場所でもなし、何もしないよりはマシでしょう(?)。(^^;
ベアリング部位に「ワセリン」を塗って、分解とは逆の順番に組み上げます。


↑ベアリング部分のネジは締めすぎると回転しなくなるので、最後まで締めたら
一端軽く緩めて、最後の仕上げネジで固定します(ダブルネジ)。

最後に、キャスター部の分解整備、大車輪の整備(空気圧調整・分解清掃)、そして
ブレーキを調整して、約30分後には現在のオーナーのもとへ返しました。。

※タイプによっては、素直に分解できないのもあります。
※玉をバラバラにして大騒ぎにならないよう注意して下さい。無くすと強度が落ちます。
※グリースはベアリング用を使って下さい。(今回は耐用年数を越えた車椅子のため
 非常手段を使いましたが・・・。ホームセンター等で安くで売っていますので。)

                                        (介護型リハビリ研究所)

↑     ↓
↓ ↓