全老健「R4システム」は正に『寝耳に水』であった。「包括方式」は3団体の解散で過去のものらしい。
しかし、現場は急に変えろと言われても難しい。当施設は独自のケアプランソフトを進化させスムーズな
導入に成功した
【はじめに】
当施設の利用者に関わる書類の殆どは、表計算ソフト・エクセルを用いた施設独自のシステムで管理している。
過去の全国大会(第13回、14回、15回、17回)では、それらのシステムについて発表・紹介してきた。
ケアプランについても「包括的自立支援プログラム」が出力されるシステムを独自に開発して、現場の意見を取り入れ
ながら少しずつ調整・進化させてきていた。
そのため現場に関わるスタッフや開発者は、この独自システムを将来にわたり持続させていくつもりでいた。
ところが今年度になり、全国老人保健施設協会(以後、全老健)が「R4システム」というケアプラン作成システムを、
機関誌を通じて発表した。
「包括方式」は3団体(全老健、全国社会福祉施設協会、介護力強化病院連絡協議会の3団体ケアプラン策定
研究会)が解散したことで過去のものとなり、新たに全老健が独自に「R4システム」を開発したとのこと。
実はこの情報はうすうす耳に届いていて、全老健にも何時ごろ報じられるかも問い合わせて確認してあったが、
介護老人保健施設の多く(全国で約3/4)が「包括方式」を採用している現状もあり、簡単には変えられないだろうと
楽観視していた。
だが全老健の機関誌4月号では、「今後はR4導入を全面的に推す」旨が紙面をおどっていた。
あまり楽観視していては、当システム導入への取り掛かりが遅くなり、結果として現場の混乱を招くことになってしまう。
そのため、急遽当施設でも「R4システム」を施設独自のシステム内に取り入れていく方針となった。
【方法】
ネット上に公開されていた「R4システム」の実用版テキストをダウンロードして書類にざっと目を通して愕然とした。
「システムが変わるといっても、包括システムを多少改変している程度だろう」という甘い期待が完全に打ち砕かれた。
包括とはまるきり異なり、今あるシステムを手直しすることはできないことに気づかされた。
特に大変なのは「A−3:生活機能(ICF)アセスメント」というもので、これらをシステム化するにはICFレベルを表示させる
独自のロジックを考える(プログラムする)必要があった。
「A−3」はR4アセスメントの一部である。利用者の身体・認知機能の変化を評価するシステムで、現場としては不可欠な情報なのだが手書きでは相当に時間もかかる。実際、実用版テキストにおいても、その半分はICFレベルアセスメントの
解説に割かれているほど重要な位置づけにある。
当施設のシステムデータベースは基本的に介護認定に使われる「認定調査表項目」データを主軸にしている。
それらの情報を使って、約2ヶ月かけてICFレベルを中心に基本的書類が自動出力させるように組み上げた。
また、過去のデータと組み合わせることによって、各ICFレベルが「改善」しているか、「悪化」しているか、「不変」なのかも
各々表示させるようにした。
【結果】
4月に基本シートを組み込み、6月にプログラム化完了。テキストに比較的忠実なシートを用いて現場導入を図るが、
アセスメントへ直接書き込む欄が少ないことが現場に不評であった。そこで、8月には現場主任の意見を取り入れて
「A−3:生活機能(ICF)アセスメント」のスペースを広げて1枚を2枚に増やした。以降、現場にて試行・調整段階を
続けている段階である。
【まとめ】
全老健の機関誌を見ていると、「R4は開発途上」、「現場でよりよく修正してもらいたい」と書かれている。
システムをアレンジして積極的に導入できる余力のある施設は何とかなるかも知れないが、余裕のない施設は唐突に
「R4を強力に推進します」と言われても尻込みしてしまい、どこも様子眺めの状況に陥ると考えている。
長年慣れ親しんできた「包括方式」から「R4方式」に切り替えるには、現場の身体的・精神的・経済的負担というものを
極力軽減する必要がある。
各県において安価で参加しやすい研修会を開いていただくとか、施設独自のITを用いた効率的なシステム化を
開発・導入していく道を示すのも必要なことと考える。
その一例として多少なりとも参考にしていただければと、開発・調整段階ではあるが当大会で報告させていただくことに
した次第である。
『介護型リハビリシステム研究所』 red.zero.jp/ksystem
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