両踵の床ずれだけで、立位⇒歩行はあきらめない!

            〜 踵免荷シューズと作成方法の紹介 〜


 「Aさんは4年かけて自立歩行に至り在宅復帰を控えていたが、脳梗塞で2週間入院し両踵に床ずれができた。
  立位・歩行はムリという看護サイドを説得し、踵を免荷した靴で訓練を開始。一石二鳥の効果を得るに至る。」



【はじめに】
 当施設に入所したAさんは、病院で長期の寝たきり状態であったため、両膝は強度の屈曲位拘縮、
筋力も半減〜著しい低下を呈していた。そのため、立位・歩行はおろかADLも食事以外は全介助に近く、
要介護度は3であった。
 しかし、このAさんは意識がしっかりしていた為、努力しながら個別リハビリを少しずつこなして4年間の
歳月をかけて1本杖による自立歩行が可能となり、退所に向けて外泊訓練を行うまでになった。
ADLは入浴以外ほぼ自立し、要介護度も1へと改善した。
 ところが昨年夏、急に身体動作と認知面が低下し、脳梗塞の診断で2週間の入院となった。
退院後に再入所となったが、体力低下と共に軽度の認知症症状も出てきて、要介護度は3に戻っていた。
そこから少しずつ体を慣らして体調を整え、そろそろ立位・歩行訓練を開始したいと計画を申し出ると、
看護師から「入院中にできた両踵の褥瘡の具合が悪いから、完全治癒するまで立位・歩行はできない。」
と宣告された。
 両踵の褥瘡治癒をのんびり待っていたのでは、体力・知能は徐々に低下してしまい、コツコツ行ってきた
4年間のリハビリが大きく後退してしまう。
「はい、そうですか。それじゃ、立位・歩行訓練はあきらめます。」と大人しく引き下がることは簡単だが、
Aさんの気持ちと残された時間・総合的な経費を考えると「ここで何か打つ手はないか?」と考えた。

【方法】
 踵に褥瘡ができて、なぜ立位や歩行ができないかというと、そこにズレや圧力がかかってしまうからである。
既に、Aさんはポータブルトイレ等への移乗は行っていたため、訓練をしなくても踵に何かしらのズレや圧力が
かかっていると予想された。
 そこでまず考えたのは、踵に圧力のかからない履物を用意すればよいということだった。
最初は健康サンダルを用意してもらい、しばらく使ってもらったが、移乗で足を動かす時に不安定で使い辛い
という訴えがあった。
 本人の足にフィットして、尚且つ踵への加重を免荷するには単純に考えて「装具」だが、コストも時間もない為
「自作」することを考えた。
 御家族にAさんが自宅で履き慣れた靴を何足か持ってきてもらい、その靴の踵を大胆に切除して「完全免荷」
の状態をつくり、それで看護サイドを説得して移乗や訓練に使うことにした。

【結果】
 かくしてAさんの立位・歩行訓練は再開され、徐々に脚力も改善し歩行能力やADLも改善してきた。
踵免荷シューズを製作して半年後、踵の褥瘡も無事に治癒して、現在に至っている。

【まとめ】
 「両踵に床ずれがあったとしても、立位・歩行は十分可能である」という症例を紹介した。
この方法は、医師や現場のスタッフと十分討議の上で、経過観察しながら慎重に行う必要がある。
安易に導入することは危険なので避けていただきたい。




               『介護型リハビリシステム研究所』  red.zero.jp/ksystem



          ●当日は画像を中心に、なるべくわかりやすく紹介したいと思います。
                  ※ネット上では時期をみて公開したいと思います。




特に科学的な中身でもないので、あくまで現場での「参考事例」として、興味のある方にご覧いただけたらと思います。
本当はコツコツとリハビリを行い、4年半かけて退所にこぎつけたという事例発表的なものを検討していたのですが・・・












      ---------------------------------------------------------------------------
         
      ●「ハード」と「ソフト」がバランスよく機能していないと全ての流れは滞ります●
        【研究所独自の「リハビリシステム」+「ケアプランシステム」の紹介】

                  −皆様からのご意見・反響を受けての企画−
          【特別企画:システム操作・参照・試行セット

      ---------------------------------------------------------------------------
【第20回全国老人保健施設大会新潟・抄録】