その他の環境整備【43】
靴型装具のベルト固定法
以前、靴型装具でシングルクレンザック(足継手)の調整法を紹介しましたが、
今回の装具はダブルクレンザックといって片方に2箇所調整ネジがついている
タイプを紹介したいと思います。
今回は「あるある」とか、「ガッテン」的な引っ張りをしますがお付き合い下さい。
←ダブル ←シングル
↑この左側装具の継手部分をご覧下さい。片側支柱にネジの頭が2個見えますね。
そのネジ(確かロッドと言ったと思います)の先は細い円筒状の金属棒になっていて、
足関節の角度を調整しています。
→「ダブルクレンザック」と呼ばれるものです。右側は「シングルクレンザック」と言います。
このジョイント部分は経年でネジが緩んだり、ガタが生じたりするので定期的に
検査点検して、本来の歩行ができるように歩行環境を整える必要があります。
よく歩く方なら尚更注意しましょう。→できれば経験豊富なプロに調整をお願いしましょう。
角度調整を自分でやるには
以前書いた通りで、それを応用してもらえば良いのですが、
この装具には他にも気がつきにくい、間違えやすい「
落とし穴」があるのです。。
・・・さて、それはどこでしょう???? ┐(´ー`)┌
↑・・・(◎_◎;)じぃ〜・・・・よく見てください・・・・わかります???
↑答えはコレ!画面中央の黒っぽいYの字(Tバック?)型をしたベルトがそうです。
このベルトの名前は、「Yストラップ」とか「Y字ストラップ」といいます。
・・・・では、なぜこのベルトが問題になるのでしょう???
私の臨床経験上、このベルトをあまりに勘違いして使っている方が多いんです。
特に、介護に関わる職員に多く見受けられます。
中には、ご本人、ご家族も間違って使っている方もいるかも知れません。。
このベルト1本をきちんと装着するだけで、歩き方が劇的に改善することがあります。
是非、この機会にベルト装着方法を覚えて下さい!!
それでは・・・本題に入ります。
最近、リハビリのインタ−ン(実習)学生(来年からプロ・・・の予定)がいるのですが、
その学生に「このベルトをきちんと装着してみて。」と話しました。
学生はそのY字ベルト(ストラップ)の装着方法がよくわからず、四苦八苦して30分程
格闘していました。挙句の果てには教科書を覗き込んでいましたができませんでした。
その
格闘の様子を一部撮影してありますので、よくご覧下さい。
笑い事ではなく、実際に医療や介護の現場でよく見かけるのであえて取り上げます。
↑学生の足をモデルにしていますが、麻痺足が内側に強く反った状態(内反:ないはん)を
矯正する目的で使うベルトなのです。
↑はい!よくぞやってくれました・・・という位、典型的な間違いの例です。
この固定法では、全く意味がなく、内反を矯正するどころか逆に助長しかねません。
(このような間違いは、病院や施設職員もよくやってしまいます。要注意です。)
↑今度は何を血迷ったのかベルトを装具の下から回そうとしています。
当然、これではベルトの長さ自体が足りません。学生は知恵の輪なみに頭を捻ります。
↑「内側が持ち上がって隙間ができるんだから、ここを押さえなくちゃ意味がないんだよ。」
・・・と、要点を説明して(助け舟を出して)様子をみます。すると・・・!!!
↑ なんだこりゃ?? ( ̄□ ̄;)!!散々悩んだあげくに、このような固定法を編み出しました。
冗談ではなく、真剣にやっているんです。決して「やらせ」ではありません。
次に、じっくり教科書をみてよいということにしました。
( ̄▽ ̄)ノ もうそろそろ分かってもいいでしょう。幾らなんでもね。うん。
ジャーン!!!
↑ついに出ました!間違いの決定版!!!
(≧∇≦)/
ひぇ〜、やめて〜
これは絶対にやってはいけない間違いです。矯正どころか変形を助長してしまいます。
支柱に外くるぶし(外踝)があたってケガをする可能性すらあります。
ただ、学生が教科書を見てもこのような間違いをしたように、結構間違えやすいんです。
これからきちんと説明します。
(この間違いは職員だけでなく、本人・家族にもよくみられます。気をつけましょう。)
↑基本はここです。内反変形になりやすい、または既に変形している足部は、
ここの押さえている部分が凸になるので、ここを直接きちんと押さえる必要があります。
ですから、
ここにYストラップの中心を収めないといけません。
↑ベルトはこのように
内側の支柱を回します。
↑踵をしっかり装具に収めるように、外くるぶしと足首を押さえてベルトをきちんと締めます。
足首部分のベルトはきちんと締めることが重要です。
ここが緩いと踵が浮いてきちんとした歩行ができなくなります。
←内側支柱にベルトで「ぐっ」と引きつけます。
↑このようになるわけです。
これが正解!!d(*⌒▽⌒*)b
足首は外に逃げようとしているので、内側支柱と干渉する心配はありません。
↑あとは周囲のベルトを程々に締めてください。
足首さえきちんと収まっていれば、他のベルトはそれ程、きつくしなくて大丈夫です。
・・・以上が、足装具のベルト固定法でした。
どうでしたか?今までやっていた方法は正解でしたか??
もし担当の先生から別の指導があった場合はそれに従いましょう。
目的や種類、使い方によってやり方が多少異なるケースがあるかも知れません。。
学生もこのままプロとして臨床に出なくて良かったです。
でも・・・ひょっとして・・・まさか・・・とは思いますが・・・
未だに知らない専門家もいるかも・・・・  ̄∇ ̄;)
常識の範疇のはずですが・・・
装具処方の仕方すら知らない専門家がいるのも事実です・・・
ベルトが劣化して傷んできた場合は、近くの装具屋さんが出入りしている病院に持参して
交換してもらってください(脳外科や整形外科だと大方出入りしているはずです)。
ベルトの長さなど予め伝えておけば、材料を手配してくれて直ぐ修理してくれることもあります。
その場で修理してもらえるかどうかは、事前に装具屋さんと相談してください。
ベルトを紙になぞりFAXで送って手配してもらう・・・というのも裏ワザとしてあります。
その場合、マジックテープのオス・メスの位置と、ベルトの厚さ、材質(ビニールか皮)、色なども
明記しておくと、より伝わりやすく「日帰り修理」の成功率が高まります。
ベルト交換(カシメ等)は多少のコツが要るのでここでは書きません。機会があったら書きます。
⇒今回の学生がプロになって再度やらかした特集はこちら
(介護型リハビリシステム研究所)
〜システムでよりよい未来へ〜
介護型リハビリシステム研究所