その他の環境整備【38】
支柱付プラスチック装具調整法
麻痺した足のつま先を持ち上げるために、下肢装具を使用することがあります。
下肢装具には主にプラスチックと靴型(支柱とセットになっているもの)がありますが、
中には支柱付きのプラスチック装具というものもあります。
今回は、この装具を取り上げます。
装具は、利用者の自立度を上げ、生活範囲を広げるのに便利な道具ですが、その時その時で
見直したり、細かにセッティング(調整)していく必要があります。
今回は、通所利用者の歩行状態が最近どうもおかしい・・・転倒しやすいので、一度みてもらえ
ませんか?・・・との依頼を受けて、早速評価に取り掛かることにしました。
評価場所まで歩いてくる歩容を見て、装具が妙に不安定であることに気がついたので、
評価途中で装具を取り外し、装具のチェックをしました。
結果として、「つま先をバネで持ち上げる仕組み(クレンザック)が左右共に全く作用していない」
ガタガタ状態であることが判明しました。
(
前回特集したクレンザックはロッド棒による角度調整ができるタイプです。今回は別のタイプ。)
つまり、気がつかずにややつま先が下がった状況で歩いていた・・・というわけです。
つま先が下がっていると歩き辛くなると同時に、色んなものにつまづき、転びやすくなります。
↑このように逆さにしてクレンザック部分を中心に油を注入して、
ガチャガチャと関節動作を繰り返すと、黒い汚れが出てきて次第に動きが良くなってきます。
この隙間に丸いボール状のものが、きちんと見えていれば良いのですが、隠れている場合は
中で引っかかっている可能性が大なのです。
そうなると本来の機能が果たせていないことになります。
(個人的にはバネ式のクレンザックは調整にも限界があり、潰しが利かないので嫌いなパーツです。
ロッド式やダブルクレンザックの方がずぅ〜っとマシだと思っています。)
↑このようにジョイント部分から黒い汚れがどんどん染み出てきます。
それに比例して動きは良くなってくるというわけです。歩行時に異音がする場合にも有効です。
↑ここのネジ部分を右に回せば、中にあるバネが締まって、つま先の上がりをより助ける仕組みに
なっています。
今回は片側のクレンザックそのものが壊れているようなので、このネジを左に回して分解します・・・。
↑そうすると、このように「ボール」「バネ」「ネジ」という3点にバラすことができます。
細かい部品なので無くさないようにしましょう。個人の装具だと無くしたら目も当てられません。
このパーツ・・・バネが妙に歪んでいるのが気になりましたので・・・
(基本的にこのバネは消耗品です。バネの強度も様々で色で判別させるタイプもあります。)
↑ペンチである程度歪みを修正しました。このあと、筒の内部も油をさして清掃し、
バネの歪みの少ない方から差し込むと、何とか上手く動くようになりました。
↑最後に、この装具は既に限界に近づいていることが判明しました・・・
矢印の「金属のめくれ」は同じストレスが長期間加わってできた金属疲労で、新品時に比べ
つま先が下がり気味の傾向になります。もう片方にはこの「めくれ」はありませんでした。
最初から干渉していないようで、片側だけ無理なストレスが加わるようできていたようです。
微妙な所なので左右ピッタリあわせるのも困難かも知れませんが、そこはプロの領域なので
できるだけしっかりした装具をつくって欲しいと願わずにおれません。
一度ここの部分歪みが生じてしまうと、調整は困難です。
過去、何度もトライ(針金を挟むなど)しましたが決定的な裏ワザ解決はできませんでした。
修理を頼むか、作り直すしか完全な修理方法はありません。専門家にご相談下さい。
ちなみに、この装具はつくって3年経つそうです。なるべく早めの新調をお奨めしました。
・・・・・何度も申し上げますが、
ここで紹介した内容は、私個人が経験上やっている自己流の調整方法です。
ホームページ全般に言えることですが、くれぐれも「自己責任」でご判断下さい。
利用者の障害状況、体力、歩行の癖、姿勢、変形具合により微妙な調整が必要になるケースも
かなりあります。
理学療法士・義肢装具士などと相談して、装具の新調も視野に入れての検討をお奨めします。
(通常2〜3年で、保険や手帳を使って新調できるはずです。無理に使い続けても調整には
限界がありますので注意しましょう。突然壊れると、次のができるまで歩行できなくなります。)
ある程度経験のある理学療法士なら、その場で何とかしてくれるはずですし、その後の対処に
ついても詳しく説明してくれる・・・・と、思います。。。 (;^_^A 大丈夫!専門家は口だけじゃないんです・・・!!?
(介護型リハビリシステム研究所)