車椅子検証シリーズ「車椅子は語るD」

   
 致命傷車椅子ファイル

 【キャスター・ベアリング破損…その2】
◎このシリーズは、作者の経験と思い込みで構成しています。予め、ご了承下さい。

車椅子の点検・整備を長いこと続けてくると時々、「なんちゅう壊れ方すんじゃ?!」と
驚いてしまうことがあります。

逆にそこを調べると、商品の欠陥や使われ方の特色などが見えてくるのも事実です。
まさに、「壊れた車椅子が語りかけてくる」がごとくです。

前回もキャスター・ベアリング破損について考察を交えながら特集しましたが、
今回は、別な画像を入手しましたので、「その2」として紹介致します。

・・・・・それでは、「前回部分」の復習から入りたいと思います・・・・・


前回までのあらすじ】

悲劇のヒロイン?縁の下の力持ち?キャスター・ベアリング
キャスター・ベアリングの殆どは、床から下縁付近まで5〜9cmとかなり低位置にあります。
基本的にフットレストよりも常に低い位置にある、目立たない部品なのです。




↑キャスターは「床に最も近い」位置にある為、床の髪の毛・ホコリを巻き込みやすく
水場では水のかかりやすい過酷な環境にさらされています。
尚且つ、大車輪に比べて高回転な上、段差のショックもモロに受ける位置にあります。




↑ベアリングのカバー(外周リング)には、わずかな隙間がありますので、
このように、ホコリや髪の毛を巻き込むと、内部にまで入り込んで回転を妨害し、
徐々にストレス(金属疲労)を与えて、歪ましたり割れたりして崩壊していくわけです(※)。



【ここから本題に入ります】

ここで、
まさに破壊直前・・・のベアリングを発見しましたので紹介します!!




↑右が正常な外観のベアリング、左がカバーの外れた状態のベアリングです。
ただし、まだベアリングの「玉」自体はきちんと残っていますし、崩壊もしていません。

では・・・、
なぜカバーが外れたのでしょうか?

外れるには、カバーに何らかの「外力」が加わらないといけないはずです・・・

上記赤字部分(※)でのコメントのように、
髪の毛等の「異物」がベアリングの「玉」周囲に入り込み、動きを制限してストレスを与え、
その結果、「金属疲労」を起こして徐々に壊れていく
・・・という、大方の推察はできます。
・・・が、壊れる直前(正確には破壊初期段階)の証拠画像は今までありませんでした。




↑ベアリングをほぼ真横(?)から撮影したものです。
土から芽が出てくるみたいに、金属が盛り上がってきているのがわかりますか?
なんと!この盛り上がりが、内側からカバーを押して外していたんです。
金属粉も沢山出てきました。ここには相当なストレスがかかっていたようです。


 

↑斜め上から見た画像です。その部分だけ、ベアリングの玉がよく確認できます。
(内部の汚れもすごいですねぇ〜。清掃とグリスアップだけじゃ限界ありそうです・・・。)




↑局部の拡大画像です。
ゴミや汚れに周囲を取り囲まれたベアリングの「玉」は逃げ場を失い、外へと逃げようとします。
・・・すると、
ベアリングの「玉」を覆う「金属製のリング」部分は外に押し拡げられたり、切れたりして変形し、
その隙間からベアリングの「玉」が外に飛び出していきます。
1個外れると、他の部分にも更にストレスが生じて次々と崩壊の連鎖が起こります。




↑結果として、最終的にこのような「バラバラ」状態になるわけです。
(そもそも、この鎖状の「金属製リング」自体の強度が弱すぎるのが大問題だと思います。)

・・・そして、
ガタガタしたベアリング」は、「ガタガタしたキャスター」になり、「ガタガタした車椅子
に変身していく・・・と言う訳です。
⇒そして、その車椅子は「スクラップへ一直線」の運命です。


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   ・・・では、「キャスター・ベアリング整備」について再度まとめさせていただきます。

   @定期的にキャスターを分解し、ベアリングに絡まったホコリ・髪の毛を掃除する。
   A掃除したあとはしっかりと注油して、動きをスムーズにしておく。
   Bメーカーは台車並みの強度を持った、丈夫で安価なスタンダード製品開発を!!


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      ●殆どの車椅子は、「偶然」ではなく、「必然」で故障しています。 (-"-)



                                (介護型リハビリシステム研究所)