車椅子検証シリーズ「車椅子は語る@」

   
 致命傷車椅子ファイル

     【何故壊れてしまったのか?】
◎このシリーズは、作者の経験と思い込みで構成しています。予め、ご了承下さい。

車椅子の点検・整備を長いこと続けてくると時々、「なんちゅう壊れ方すんじゃ?!」と
驚いてしまうことがあります。

逆にそこを調べると、商品の欠陥や使われ方の特色などが見えてくるのも事実です。
まさに、「壊れた車椅子が語りかけてくる」がごとくです。

今回、運ばれてきたのは基本的に蘇生不可能と判断し、部品用ドナーとなった車椅子
ですが、あまりに珍しい壊れ方をしていたため紹介したいと思います。


↑裂けるように、パッカリと開いたスチールフレーム。すごいでしょ??
初めは何故、このような壊れ方をしたのかサッパリわかりませんでした。
でも、じっくり観察していくことで幾つかの原因が重なって生じた結果だとわかってきました。

これは、「物理的に弱い部分に大きな力が加わった」ことが原因と考えられます。



  

フットレスト(足乗せ)に体重がかかるだけでも作用点には引っ張りの力がかかることは
当然ですが、それに加えてこのタイプはエレベーティングといって、これ自体上げ下げ
できるんです。上から下に「ガン!」と落とすとそれだけで瞬間的にかなりの引っ張り力が
生じることは容易に想像がつきます。


また、このタイプは肘掛が取り外しできるように、フレームに切り込みがあり、そこに
固定用の穴まであいているのです。外力が加わり金属疲労を起こしやすいわけです。
★部分から亀裂を生じて全体に波及していく・・・ということになります。

また、ここには隙間があるため水も進入しやすく、サビが進行して金属を腐食させ強度
を低下させているのも要因にあります。

肘掛を出し入れするたびに凸部分が★の内側を傷つけていくのも多少なりとも影響する
はずです。そしてサビはそこから更に深く入りこんでいくのです。。。

つまり、原因をつきつめた結果、最終的に以下の四点が浮上してきました。

@肘掛が取り外し式でもともと強度がない部分であるということ。
Aそこは手洗いや食事動作などで最も水が進入しやすいということ。
Bそこはテコの原理で引っ張りのストレスが常に加わる場所であること。
Cそれらの場所に、サビ止め加工や補強が一切施されていないということ。


これ以外の要因として、「無理な使い方をした。」ということも考えられますが、
少なくとも、メーカーはある程度の使われ方を配慮した上で、製品を販売する責任があると
考えますし、この製品の、この部分には少なくとも何らかの「補強」が必要と思われます。

このタイプでこの部分に何も補強がなく、穴が開いている製品は要注意です。
少なくともこの場所に「穴」が空いているのは、切り取り線があるようなものと考えてください。


                                     (介護型リハビリシステム研究所)
力点
 ↓
←支点
作用点→
 ←切り込み

 ←固定用穴
←凸部分