「ブレーキ」整備法・パート8


     
    またまた登場!最悪ブレーキ


ブレーキ整備の中でも、「整備者泣かせ」として当ホームページでも有名なブレーキが
“またまた”登場いたしました。話題が尽きることがないので感謝すべきでしょうか??




↑ある日、ブレーキのない車椅子が届きました。
よく見たら、ブレーキが両方とも外れています。
さらに、そのブレーキをよく見たら両方ともネジが途中で折れています。。。
いったい何が起こったのでしょうか???




↑固定用ネジ(ボルト)が、こんな感じで途中から「ぶちっ!」と切れて(折れて)いました。。
この状態は「捻じ切れ」といって、「ネジがある程度の締め付け力を超えた場合に
その外力に負けて折れてしまった」ことを意味しています。
ただ、ネジを締める力の調整というのは微妙で、「トルクレンチ」などの特殊工具が
ない限り、正確には締め付けできません。
(大体、このネジの頭には強度区分表示(※1)もありませんし、車椅子のブレーキ自体や
説明書に、ネジの締め付けトルクなど詳しく表示されている訳もありません。)
つまり、全くの「カン」で締めるしかない・・・ということになります。

自分自身もたまに、ブレーキネジをネジ切ることがあるので、その締め付けトルクは
微妙なのですが、少なくとも同じ車椅子で両方のネジが同時に折れるということは
よほどその整備をしようとした者が不器用であったか、ネジに問題があったかだと
考えます。・・・まぁ、その両方と考えた方がよいかも知れません。。。

・・・問題は、その後です。


 

↑いざ、ネジを交換しようと見てみると・・・・・・この状態です・・・・・・
「プラスチック部分に埋め込んで締め付けるタイプ」なので、ネジの交換ができません!
両方とも同じ場所で埋まった状態で切れているので外すことができないのです。
特殊工具で無理やりやれば不可能でもないかも知れませんが、そこまで手間ひまかけて
再生する程のブレーキでもありません。
どこまでも「整備性を無視して、生産時コストのみ追求されたブレーキ」なのです。




↑仕方ないので、たまたま部品取りしておいたブレーキを代用品として使うことにします。
画像右のブレーキパット(ゴム)部分のみ、一部交換して取り付けました。




↑以上で交換終了。ブレーキレスの車椅子にようやくブレーキが装着されました。
この車椅子はディスクタイプ(※2)で干渉しないように柄が短くなっています。
・・・でも、あまりに短いですねぇ。この柄も交換しようとしましたが、外れませんでした。
無理やりやろうとすると、中のプラスチックが割れそうで・・・ホント、困ったブレーキです。(=_=)。


※1…強度区分表示:例えば、ボルトの頭に4という数字があれば4Tという強度区分に属す。
(ボルトの径や長さでも異なるが、一般的な4Tボルトの場合、標準締め付けトルクは1.3kg-m、
それでもボルトの材質や、強度、使う場所によってトルクは異なる。つまり、かなり微妙ってこと。)
※2…ディスクタイプ:テーブルなどに干渉しないように肘掛部分が一部下げてあるタイプ。


【まとめ】
ブレーキネジ(特に小さいの)はほどほどに締め付けましょう。
長めのレンチを使っていると、力が入りすぎることもあります。



                                     (介護型リハビリシステム研究所)

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