2002年3月25日

岩手県知事 増田 寛也様                                    

                  全国鉄道利用者会議 

  代表 武田泉

東北支部長 鈴木一夫

                

      巣子地区新駅設置等に関する質問状    

前略
先日、IGRで検討している巣子地区新駅設置に関する地元説明会の資料や新駅設置検 討資料(平成11年3月)を拝見いたしました。また、村内の新駅設置に関する活動をさ れている関係諸氏からも現状の進め方を伺ったところ不明点や疑問点が多数 明らかになってきました。
新駅設置については、当然地元の意向というものが重視されなければならないもので あるのは前提としても、現在日本各地で交わされている交通論議等を踏まえ、総合 交通体系の確立という視点からより建設的な意見を申し上げますのでよろしく御願い 申し上げます。草々

盛岡〜厨川、厨川〜滝沢間新駅は2ヶ所以上設置のこと

<7つの理由>
1.利用者の便の向上
2.地域間の抗争を回避
3.新駅を2箇所以上設置しても工期や経費は変わらない
4.IGR経営力向上への寄与
5.将来の盛岡都市圏交通の先駆事例として
6.県庁所在地から切り離される並行在来線として先駆事例となる
7.他の都市では前例がある

1. 利用者の便の向上
鉄道かバスか、といった視点ではなく滝沢地区から盛岡地区(あるいはその逆)への流 動人口という視点で捉えるべきです。
各種アンケートを見ても最寄の駅(停留所)から500メートルを超えると別の交通機 関にシフトする(ここでは車)可能性がありますので駅(停留所)数の多いことに越し たことはありません。
また、公共交通の発達してこなかった地区でありますので、鉄道輸送の登場によって 利用者の利便性が向上しますし、冬期の安定した輸送機関とし期待されます。
駅間が短いことでお客を奪い合うといった視点ではなく寧ろ潜在需要の発掘といった 視点を持つことが大切であります。

2. 地域間の抗争を回避
駅を一地区のみに設置とは誰が決めたのかは存じませんが、設置(誘致)できなかった 地区との100年戦争が勃発します。昔の水を争った歴史を駅で繰り返すわけです。大 船渡線の千厩町の小梨駅と、室根村の矢越駅のように駅設置で両者とも一歩も引かず 結果として両駅設置となった前例もあります(昭和初期)。

3. 新駅設置を2箇所以上設置しても工期や経費は変わらない
県やIGRはおそらく紫波中央駅に触発されたものと思いますが、あのような豪華な駅 周辺事業を含め高負担の駅より、機能重視の駅設置を検討されてみてはいかが でしょうか。
つまり、プラットホームと簡易待合室の駅を複数つくることです。

4. IGR経営力向上への寄与
盛岡近郊区間で駅が複数できることは、利用者を増やし経営安定化につながるいいこ とです。実際、巣子地区では滝沢駅に利用したくともできない距離的状況があったわ けですから、IGRへの経営貢献度はこの巣子地区での成功にかかっていると思いま す。そのためにはより多くの利用者を開拓することにかかっていますので駅の複数設 置はIGR経営安定の立場からも必須です。事例として第3セクターで成功例として挙げ られる長崎県の松浦鉄道の場合、国鉄からの移管後3〜500メートルおきに新駅設置をし ました。駅を増やすのは経営安定化に繋がることなのです。
駅が少ないことは潜在需要を逃すことになります。

5. 将来の盛岡都市圏交通の先進事例として貢献
盛岡市および近郊地域ではJRに対し新駅設置の声が多数あります。
実際、複数駅ができることで各地の新駅設置機運を高め東北線盛岡以南や山田線田沢 湖線への新駅設置の機運の先進事例となります。

6. 県庁所在地から切り離される並行在来線として先駆事例となる
北陸新幹線や九州新幹線でも同様に並行在来線ができますが、県庁所在地から直に切 り離される地区としてはこの東北線の並行在来線が初めてです。ですから、この巣子 地区の扱いは全国の自治体関係者が注目する事例となりますので、IGRの方式が 反面教師とならないように、駅を複数設置することです。

7. 他の東北地方の都市では前例がある
弘前市の弘南電鉄や福島交通飯坂線では盛岡と同程度の都市規模でありがなら駅数が 明らかに違います。詳しくは福島市、弘前市の地図をご参照ください。
また、東北線青森市内の東北線では駅間が長いという理由で駅間に一気に2つ駅がで きた事例があります(矢田前、小柳でいずれもJR盛岡支社管轄内)。
それとIGRの大きな見通しの甘さは並行在来線という位置付けです。
私ども昨年、岩手県にも質問状を出しましたがその回答にも、IGRの機能は 地域間輸送に徹し、並行する新幹線との客の取り合いはしないと回答が寄せられまし た(詳しくは当会のホームページ参照のこと)。
首都圏にも複々線を用い急行線と緩行線を使い分ける事例は多数あります(例上野か ら大宮間の在来線)。
現在の東北線沿線の駅間は首都圏の急行線並の間隔であります。
IGRは県民には地域間輸送に徹するといっておきながら、地元には駅は一箇所と いうのは、自己矛盾していると思います。
地域間輸送とは駅をたくさん増やし、乗客を増やすことであることであると思いま す。
98年7月に当会と稲葉一戸町長との会見でも町長は全集落に駅が欲しいといっていま した。滝沢村で数駅設置の方向性を出すことは他の、市町村にもきっと光明を差し出 すことに繋がります。駅設置とはそんなにハードルの高いものではありません。プ ラットホームだけの駅(簡易待合室付き)は全国いたるところにあります。

以上複数駅設置について7点ほど理由を申し上げましたが、駅は一箇所でなければな らないとしたら理由はなぜかを岩手県にお伺いします。

回答は2週間以内に電子メールで御願いします。


岩手県からの回答

第 88 号

                         平成14年4月17日

 鈴木 一夫 様

        岩手県総合政策室広聴広報課長

   御質問への回答について
 このたびは、メールお寄せいただき、ありがとうございます。
 ご質問いただきましたことについて、関係部局で検討しましたので、下記の とおりお送りします。
 なお、回答が遅れましたことを、お詫び申し上げます。

 

 昨年3月に県と沿線市町村等で構成する「岩手県並行在来線経営準備協 議会」が策定した「並行在来線経営計画概要」では、並行在来線の新駅の設 置基準として次の2点を掲げています。
@ 事業採算性が確保されること。(新駅設置に伴う運営経費を上回る収入が 確実に見込まれること。)
A 地元市町村の全面的な協力が得られること。(用地の取得、駅建設に対す る負担、駐車場・駐輪場の確保が可能であること。)
 県では、この基準が妥当であると考えており、従ってこの基準が満たされるの であれば、新駅はそれぞれ1ヶ所に限るということでは、ありません。
 なお、質問の「7つの理由」の中で、「3 新駅設置を2箇所以上設置しても工 期や経費は変わらない」とありますが、東北本線は複線電化であり、新駅を設 置する場合は最大6両編成対応のホーム2面、跨線橋又は地下通路の整備、 電路改修、信号・通信設備及びCTCプログラム改修等に多額の経費が必要に なります。
 単にホームのみを整備すればすむものではありませんので、念のためお知ら せします。

担当部局(課)名:地域振興部並行在来線対策室
電話:019-629-5260(並行在来線対策主査)

 〜担当〜 
 広聴係 後藤


滝沢村からの回答

                            平成14年4月4日

  全国鉄道利用者会議

   事務局長 鈴木 一夫 殿

                        滝沢村長 柳村 純一

巣子地区新駅設置に関する質問に対する回答について

早春の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。3月25日付けでいただき ました質問に対する回答を送付いたします。

1 現状、経緯等について

  巣子地区の駅設置対象は、市村境からトンネル手前までの間約1.8kmの区間 です。ご承知のとおりこの区間の並行在来線は、上下線の段差が最大8mとなってお り、更には市村境から約1.3kmまでの間は新幹線が掘割で市街地側を更に低く並 走しているという特殊な条件にあることから、村では平成9、10年に調査を実施 し、駅設置の可能性を検討してきた経緯があります。

  村では、昨年12月議会において新駅建設の意向と住民の意向を尊重することを 表明し、現在は、住民の方々で構成する委員会において、場所等の検討を行なってお ります。

2 質問に対する回答

 (1)見積仕様書及び図面について

    村では、駅建設費用を説明会等で提示いたしましたが、これは前段の調査に より算出した構想段階のものです。

図面は、全体説明会で提示したものが全てですが、これは軌道の現状などからこ線橋 やホームの形状、規模を一般的に想定したものです。工事費については、この図面を 基に近隣の類似工事(本件の場合は、紫波中央)から簡便的に比例計算したもので、 精度は高くありません。(精度の高い算定を行うためには、デザインを確定した上で 構造計算や地質調査などを踏まえた実施設計が必要ですが、現在の構想段階では実施 しておりません。)

このため、説明会では「1つの目安」として皆様に説明しております。

一式については別に事務局長様宛送付いたしますが、その点をご承知いただきますよ うお願いいたします。

(2)「新駅は2箇所以上設置のこと」について

   7つの理由を掲げられておりますが、原則として私どももこれを否定するもの ではございません。特に、利便性向上の問題や地区間の問題回避については、村とし ても最大限の努力をしているところでございます。

   しかしながら、複数駅のご提案については、現在のところは非常にむずかしい ものと考えております。

新駅は、特に県やIGRが1つと決めたものではありませんが、前段でご説明したと おり、軌道が特殊な条件にある地域であることから、どこの地点であっても相当の設 備投資は不可避と考えられます。特に新幹線並走区間にあっては安全対策費を含める と10億円規模との見込みもあり、仮に1駅が4億円以下であったとしても、村財政 上の観点からは、2駅以上の建設はできないものと考えます。

   またこの地区は、鉄道が市街化区域と調整区域の境界となっており、駅までの アクセスはどうしても車両交通に頼らざるを得ないという実情もあります。利用予定 者のアンケートでは50%以上が自家用車でのアクセスを望んでいることからも、駅 には駐車場などの附帯地と関連道路の整備が必要と考えられ、これに要する費用につ いても別途考慮する必要があると考えます。

(3)「滝沢折り返しの列車を多数運行するよう要望のこと」について

   IGRに対しては、特に通勤通学時間帯における発着便を増やすことについて 要望を行っています。

   利用者の利便性とIGRの経営の向上に結びつくものであれば、県やIGRと 協議しながら要望してまいりたいと考えます。

(4)駅名の改名と新駅の名称について

   滝沢駅の改名については現在のところは予定はありませんが、住民の方々から の要望があれば、住民参加型などで決定してまいりたいと考えています。

   新駅の名称についても、住民の方々の意向を踏まえて決定してまいりたいと考 えます。

滝沢村役場 企画課 広報政策室 
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岩手県岩手郡滝沢村鵜飼字中鵜飼55


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