通勤事情の早期改善を望む 

鈴木一夫

 

最近、久々に新型電車に関する投稿があった。導入四年目を迎えながら今だ

にこのような投稿があることを、JRはよく考えてほしい。利用者の不満には

根強いものがある。

利用者の苦情は、大別すると混雑とロングシートにある。苦情の高まりから

幾つかの列車では増車が行われた。一関への利用者は朝夕とも最混雑時に二両

ずつ増車されたが、盛岡通勤圏で増車が必要な時間帯には導入以来何の変化も

ない。この地域で混雑が導入時と比べて和らいでいるとすれば、それは利用者

が鉄道から離れたことを意味する。それは駅周辺の人の集積に影響し、各市町

村の駅前再開発や駅周辺商店街の活性化にも影響しかねない。道路事情の悪化

にも拍車をかけることになろう。

以前のボックス型座席のある列車では、車内に勉強や仕事を持ち込むことが

できた。数十分といえども朝夕のこの時間は貴重である。ロングシート電車

は、単に乗っているだけの電車でしかない。これにより失われた車内における

有効時間は、利用者全体で長期的に考えると、県自体の生産性にとっても相当

の損失になるのではないだろうか。

三月には田沢湖線にもこの電車が導入される。東北線での反省に基づくの

か、その電車にはボックスシートも設置される。しかし、肝心の東北線ではロ

ングシートに関して何ら改善の方向が示されていない。JR東海の御殿場線で

は、二両編成のロングシート車を導入したが、座席数減少による利用者のク

レームを受けてもとの車両に戻した例がある。

東北線では、細かな改善はあったが根本的な改善は導入以来何もなされてい

ないといってもよい。そもそも、導入時に車両数を大幅削減しながら、わずか

な増車で「改善した」というのは利用者を欺くものでしかない。

最近、札幌周辺でも通勤・通学事情の改善を銘打って三扉ロングシート電車

(七三一系)が導入された。出入口にはエアカーテンが設置されているが、利

用者からは「寒い」の声が上がっている。盛岡と札幌の気温を比較すると、最

高気温は盛岡の方が高いが、最低気温(今年二月)はほとんど変わらない。盛

岡は、札幌と同等の寒冷地なのである。エアカーテンすらなく、寒波の時は車

内温度が十度にまで低下することもある。冬季の列車の車内温度は二十度以上

に設定されるのが普通であり、車内暖房のあり方にも抜本的な改善が必要であ

る。

昨秋、沿線の市町村議会にはJRに改善を求める請願書が提出され、すでに

五町村で採択された。沿線六市長にも同趣旨の陳情が行われている。東北線の

ほとんどの沿線自治体は現状を不十分と見ており、この電車の改善は急務である。

JRは、その収益の多くを占める首都圏や新幹線・特急利用者ばかりに目を

向けず、どうか地方在来線の利用者の声にも真剣に耳を傾け根本的な改善を

図って欲しいと思う。

[岩手日報論壇]


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