学習会「鉄道関連法制度について」

2001.6.24 全国鉄道利用者会議事務局会議 清水孝彰

1.鉄道事業法(昭和61年12月制定 平成12年5月最終改正)

 鉄道事業の運営に関する事業者と行政の手続きを定めた法律である。事業の開始
から廃止に至るまで、事業者はこの法律に従い手続を進めることが要求される。
 大きな下位規程として「鉄道事業法施行規則」がある。また、鉄道営業法第1条
に定める規程、いわゆる「普通鉄道構造規則」を至る箇所で許可基準等として引用
しているため、実質的には下位規程と同等の位置づけとなっている。
 鉄道事業に直接関連する部分を簡単に概説する。 (<→………>は筆者コメン
トを示す)

第1章 総則(第1条〜第2条)
○目的 「この法律は、鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとすることによ
り、鉄道等の利用者の利益を保護するとともに、鉄道事業等の健全な発達を図り、
もつて公共の福祉を増進することを目的とする。」
<→目的には利用者保護をうたっているが、内容は事業者と国土交通省の間だけで
進める仕組みになっており、住民・利用者の参加する余地がない。>
○定義 第1種・第2種・第3種鉄道事業、索道事業、専用鉄道の違いについて。

第2章 鉄道事業(第3条〜第31条)
○許可 事業基本計画その他書類を事業者が国土交通省へ提出。
○工事 事業者の工事計画が事業基本計画、普通鉄道構造規則に適合すれば工事認
可。
○施設の検査 工事計画、普通鉄道構造規則に適合するかを国土交通省が検査。
○車両の確認 使う車両が普通鉄道構造規則に適合するかを国土交通省が確認。
○運賃及び料金 事業者の定めた運賃等の上限を国土交通省が認可、上限の範囲内
で運賃等を定め、届出。「特定の旅客又は荷主に対し不当な差別的取扱いをするも
の」「他の事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるもの」の場合、届
出運賃の変更命令が可能。
<→企画切符は認可・届出の対象にならないため、事業者が独自に設定・変更・廃
止可能。>
○運行計画 いわゆるダイヤグラム、国土交通省への届出義務。
○事故等の報告 重大事故の国土交通省への届出義務。
○土地の立入り及び使用 工事等の土地使用に関する権利者への損失補償につい
て。(当事者間協議→知事裁定→訴訟 の順)
○乗継円滑化措置 他の事業者との乗継円滑化措置の努力義務、協議に応じる義
務。
<→適用は鉄道同士の乗継のみで、バス等との乗継は対象外。>
○事業改善命令 利用者の利便を阻害している場合、国土交通省は事業者に対する
以下の命令が可能。
  (1)運賃等の上限変更 (2)運行計画変更
 (3)工事実施方法、鉄道施設、車両、運転に関する改善措置
 (4)安全かつ円滑な輸送を確保するための措置等
<→この条項があるため、国土交通省に事業改善命令を要請することが可能。>
○事業の譲渡及び譲受 事業の譲渡及び譲受に国土交通省の認可が必要。
○事業の廃止 廃止の1年前に届出、地方自治体及び利害関係人の意見を聴取し、
その結果によっては廃止日を繰り上げることも可能。
<→鉄道の廃止が、認可から届出に規制緩和された条項。>

第3章 索道事業(第32条〜第38条)

第4章 専用鉄道(第39条〜第40条)

第5章 指定検査機関(第41条〜第53条)

第6章 雑則(第54条〜第66条)
○報告の徴収 国土交通省は、事業者に対し業務及び経理の状況を報告させること
ができる。
○運輸審議会への諮問 運賃等の上限認可、運賃・料金の変更命令の処分は、運輸
審議会へ諮問が必要。

第7章 罰則(第67条〜第76条)

●鉄道事業法施行規則(昭和62年2月制定 平成12年3月最終改正)
 第一章 総則(第一条)
 第二章 鉄道事業(第二条―第四十三条)
 第三章 索道事業(第四十四条―第六十二条)
 第四章 削除
 第五章 雑則(第六十八条―第七十九条)
 附則


2.鉄道営業法(明治33年3月制定 平成7年5月最終改正)

 鉄道営業における事業者・利用者双方の基本ルールを定めた法律である。事業者
はこの法律に基づいた独自の規則を作成し、その規則に基づいて営業する。利用者
は規則を守ることが要求され、違反した場合はこの法律に基づき罰せられる。
 大きな下位規程として、ハードの詳細を定める「普通鉄道構造規則」、ソフトの
詳細を定める「鉄道運輸規程」がある。
 大型時刻表の「営業案内」の根拠条項(太字で示した条項;対応関係は別紙参
照)、現在遵守されていない条項、その他注目すべき条項を引用し、簡単に概説す
る。
 (<→………>は筆者コメントを示す)
○時刻表「営業案内」に記入した記号凡例
 法:鉄道営業法 規:鉄道運輸規程 数字:条項番号
(例:「規10−3」は鉄道運輸規程第10条第3項を根拠とした記述)

第一章 鉄道ノ設備及運送
第一条【鉄道建設・車輌機器構造・運転】
  鉄道ノ建設、車輌器具ノ構造及運転ハ命令ヲ以テ定ムル規定ニ依ルヘシ
<→いわゆる「普通鉄道構造規則」。本会でよく問題にする車両や運行計画は、こ
の規定に適合していれば認可されてしまうため、この規定を変えていけるような提
案ができればよい。>
第三条【運賃その他の運送条件】
  1 運賃其ノ他ノ運送条件ハ関係停車場ニ公告シタル後ニ非サレハ之ヲ実施スル
コトヲ得ス
  2 運賃其ノ他ノ運送条件ノ加重ヲ為サムトスル場合ニ於テハ前項ノ公告ハ七日
以上之ヲ為スコトヲ要ス
<→企画切符やオレンジカードの廃止を、公告10日間程度で行っている例がある
が、「運賃その他の運送条件の加重」とはどこまでを示すのかが不明確。>
第十五条【旅客の乗車、乗車券】
  1 旅客ハ営業上別段ノ定アル場合ノ外運賃ヲ支払ヒ乗車券ヲ受クルニ非サレハ
乗車スルコトヲ得ス
  2 乗車券ヲ有スル者ハ列車中座席ノ存在スル場合ニ限リ乗車スルコトヲ得
<→この条項が、全員着席を原則とする根拠である。>
第十六条【運賃の払戻】
  1 旅客カ乗車前旅行ヲ止メタルトキハ鉄道運行規程ノ定ムル所ニ依リ運賃ノ払
戻ヲ請求スルコトヲ得
  2 乗車後旅行ヲ中止シタルトキハ運賃ニ請求スルコトヲ得
第十七条【契約の解除】
   天災事変其ノ他已ムヲ得サル事由ニ因リ運送ニ著手シ又ハ之ヲ継続スルコト能
ハサルニ至リタルトキハ旅客及荷送人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テ
鉄道ハ既ニ為シタル運送ノ割合ニ応シ運賃其ノ他ノ費用ヲ請求スルコトヲ得

第二章 鉄道係員

第三章 旅客及公衆

●普通鉄道構造規則(昭和62年3月制定 平成11年9月最終改正)
  第一章 総則(第一条―第七条)
  第二章 線路及び建造物
    第一節 削除
    第二節 軌間(第九条)
    第三節 曲線(第十条―第十六条)
    第四節 こう配(第十七条―第十九条)
    第五節 建築限界(第二十条・第二十一条)
    第六節 施工基面の幅及び軌道中心間隔(第二十二条・第二十三条)
    第七節 線路構造(第二十四条―第三十条)
    第八節 停車場(第三十一条―第三十四条)
    第九節 車庫及び車両検査修繕施設(第三十五条・第三十六条)
    第十節 建築物等(第三十七条―第四十条)
    第十一節 分岐及び平面交差(第四十一条―第四十四条)
    第十二節 安全設備(第四十五条―第五十一条)
    第十三節 線路標(第五十二条)
  第三章 電気施設
    第一節 電車線路及びき電線路(第五十三条―第七十八条)
    第二節 送電線路及び配電線路(第七十九条―第百二条)
    第三節 通信施設(第百三条―第百五条)
    第四節 照明設備(第百六条・第百七条)
    第五節 変電所等設備(第百八条―第百十五条の二)
    第六節 雑則(第百十六条―第百二十九条)
  第四章 運転保安設備
    第一節 閉そく装置(第百三十条―第百三十五条)
    第二節 常置信号機(第百三十六条―第百五十二条)
    第三節 車内信号機(第百五十三条―第百五十五条)
    第四節 連動装置等(第百五十六条―第百五十八条)
    第五節 自動列車停止装置等(第百五十九条―第百六十一条)
    第六節 軌道回路(第百六十二条・第百六十三条)
    第七節 保安通信設備(第百六十四条)
    第八節 雑則(第百六十五条・第百六十六条)
  第五章 車両
    第一節 車両限界(第百六十七条・第百六十八条)
    第二節 車両の重量等(第百六十九条・第百七十条)
    第三節 車両の走行装置等(第百七十一条―第百七十六条)
    第四節 車両の動力発生装置等(第百七十七条―第百八十条)
    第五節 車両のブレーキ装置等(第百八十一条―第百八十七条)
    第六節 車両の車体及び車室(第百八十八条―第百九十八条)
    第七節 車両の装置(第百九十九条―第二百九条)
    第八節 車両の表記(第二百十条・第二百十一条)
    第九節 特殊貨物を運送する車両(第二百十二条・第二百十三条)
    第十節 列車防護係員が乗務しない列車の車両(第二百十四条―第二百十七
条)
  附則

●鉄道運輸規程(昭和17年2月制定 昭和62年3月最終改正)

第一章 総則
第一条  鉄道ハ運輸ノ安全便益ヲ旨トシ係員ヲシテ懇切ニ其ノ職務ヲ行ハシムベ
シ
第三条  旅客、手荷物又ハ貨物ノ取扱ニ関スル鉄道ノ処置ヲ不当ナリトシテ申告
ヲ為シタル者ニ対シテハ鉄道ハ遅滞ナク之ガ弁明ヲ為スベシ但シ氏名及住所ヲ明示
セザル者ニ対シテハ此ノ限ニ在ラズ
<→氏名・住所を明記して文書で苦情を申し入れた場合、事業者は回答の義務があ
る。しかし周知の通り、これは必ずしも行われていない。>

第二章 旅客運送
第九条  鉄道ハ旅客列車ガ著シク遅延シテ発著シ又ハ其ノ運転ヲ中断シ若ハ休止
シタルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ関係停車場ニ掲示スベシ
<→「関係停車場」の範囲が不明確であるが、列車の遅延や不通区間発生が必ずし
も掲示されていない場合がある。>
第十条  鉄道ハ旅客ノ同伴スル六年未満ノ小児ヲ旅客一人ニ付少クトモ一人迄無
賃ヲ以テ運送スベシ
 ○2 割引乗車券ヲ以テ乗車スル旅客又ハ乗車位置ノ指定ヲ為ス列車若ハ客車ニ
乗車シ特ニ小児ノ為其ノ座席ヲ請求スル旅客ニ付テハ鉄道ハ前項ノ規定ニ依ラザル
コトヲ得
 ○3 鉄道ハ十二年未満ノ小児ヲ第一項ノ規定ニ依リ無賃ヲ以テ運送スルモノヲ
除キ大人ノ運賃ノ半額ヲ以テ運送スベシ
 ○4 前項ノ規定ニ依ル運賃ニ十円未満ノ端数アルトキハ鉄道ノ定ムル所ニ依リ
切上ゲ計算ヲ為スコトヲ得
第十一条  鉄道ハ旅客ニ対シ運賃及料金ノ正算払ヲ請求スルコトヲ得
第十三条  乗車券ハ其ノ通用区間中何レノ部分ニ付テモ其ノ効力ヲ有ス但シ特種
ノ乗車券又ハ列車ニ付鉄道ガ別段ノ定ヲ為シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十四条  旅客ハ改札前旅行ヲ止メタルトキハ乗車券ノ発行当日ニ限リ当該乗車
券ヲ返還シテ運賃ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ鉄道ハ相当ノ手数料
ヲ請求スルコトヲ得
 ○2 旅客ハ改札後乗車券相当ノ座席ナキ為旅行ヲ止メタルトキハ遅滞ナク鉄道
係員ノ認諾ヲ受ケ当該乗車券ヲ返還シテ運賃ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得
第十五条  旅客ハ乗車券相当ノ座席ナキトキハ予メ鉄道係員ノ認諾ヲ受ケ下級車
ニ乗車シテ運賃ノ差額ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得
<→法第15条の2を具体化した条項である。現在はこの条項が遵守されていな
い。>
 ○3 旅客ハ予メ鉄道係員ノ認諾ヲ受ケ鉄道ノ定ムル運賃ヲ支払ヒ上級車ニ乗車
スルコトヲ得
第十六条  旅客ハ列車ニ乗後レタル為発行当日限リ通用ノ乗車券ガ其ノ効力ヲ失
フベキ場合ニ於テハ遅滞ナク当該乗車券ヲ鉄道係員ニ提出シ其ノ翌日迄通用期間ノ
延長ヲ請求スルコトヲ得但シ特ニ列車ヲ指定シタル乗車券ヲ所持スル旅客ニ在リテ
ハ此ノ限ニ在ラズ
<→現在はこの条項が遵守されていない。>
第十七条  天災事変其ノ他已ムコトヲ得ザル事由ニ因リ列車ノ運転ヲ中断シタル
トキハ鉄道ハ旅客ニ対シ相当ノ便宜ヲ与ヘ之ガ保護ヲ為スベシ
<→運転の中断を判断しかねている間は、乗客が何時間も缶詰めにされるなど、乗
客が保護されない。>
 ○2 前項ノ場合ニ於テ旅客ノ請求アルトキハ出発停車場迄無賃ヲ以テ送還スベ
シ
 ○3 前項ノ規定ニ依リ旅客ヲ送還スル場合ニ於テハ鉄道ハ既ニ運送シタル区間
ニ対スル運賃ヲ控除シ残額ノ払戻ヲ為スベシ
第十八条  列車ガ遅延シテ到著シタル為旅客ガ相当ノ時間中ニ接続スル列車ニ乗
継グコト能ハザルトキハ鉄道ハ旅客ノ請求ニ因リ出発停車場(途中下車シタルトキ
ハ其ノ最近下車停車場)迄無賃ヲ以テ送還スベシ但シ旅客ガ出発停車場ニ向ヒ運転
スル最初ノ列車ヲ以テ中断ナク復帰スル場合ニ限ル
 ○2 前項ノ規定ニ依リ旅客ヲ送還スル場合ニ於テハ鉄道ハ既ニ支払ヲ受ケタル
運賃(途中下車シタルトキハ其ノ最近下車停車場ト出発停車場トノ区間ニ対スル運
賃ヲ控除シタル残額)ノ払戻ヲ為スベシ

●出典
 法林ホームページ http://list.room.ne.jp/~lawtext/forest/
 電子政府の総合窓口 http://www.e-gov.go.jp/
 国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/
 都市計画のあらまし 2000、東京都
 環境影響評価法について 1997、環境庁
 JTB時刻表2001.7 2001、JTB