道支部れじゅめ  室工大環境研究会 1998  「今日の鉄道と交通体系」               武田 泉(北海道教育大岩見沢校講師・交通地理学)  1、はじめにー交通・運輸の研究分野 *交通の基本的特色 ・日常必需〜公共性が高い〜日常的に利用する、誰もが評論家になれる ・大規模ーーインフラストラクチャー(大掛かりな土木工事)   車両・機材+発着施設(駅・港・空港)が必要   〜お金(コスト)がかかる、関係機関が広範にまたがる、複雑(わかりにくい)    影響が甚大、技術革新のできる所とできない所がある ・制度が難しい〜官と民の関係、これまでの沿革・経緯・利害関係   誰がやるのか〜所有と経営(運営)〜公共事業と公益事業(公共性と採算性)    〜国営・特殊会社・公社公団営団・地方公営事業・民営会社(大手・中小)   ーー規制・許認可・通達行政・審議会・業界団体、報道機関の役割    〜一般国民・住民が監視する制度に乏しい   ーーウォッチャー・アナリスト(専門家)の存在 ・乗車に運賃が必要ーー排除原則(乗りたくなければ乗らなくてもよい)  ーー決定方法、適正運賃とは何か ー→専門知識(業界常識を含む)による「暗号の解読」が必要 ・交通機関同志での競合〜利用者の選択ーー敏感に反応、乗りやすい方へ   ーーとりわけマイカーの台頭  →交通の発展はあくなき人間による欲望の追求である  〜便利さーー浪費ーー環境問題 ・交通機関の持つ「負の効用」〜事故(大規模)・公害(環境問題)  ーー影響の甚大さ *交通の研究分野(研究者+実務家) ◎交通経済学〜応用経済学・経済政策論ーー経済原則・採算性優先 ・(行政学)〜制度・規制のあり方 ◎土木工学〜交通計画論ーーインフラ建設・整備中心 ・(社会学)〜受益・受苦の分析 ・(交通地理学)〜場所による比較・地元地域への影響 →◎〜人材排出システムとの関係〜官僚養成・公務員試験制度(出題分野)との関係  〜法科万能主義(事務官)+土木工学(技官)の大きな影響力  ー→担当者と面談する時、事務官か技官かで、考え方が大きく異なる *行政システム:縦割り・中央地方関係ーー権限の有無、領域  (中央)政府機関〜本省庁ーー出先機関〜規制・監督・計画・模範的運営   〜特別会計・5か年計画・通達・直轄事業・補助事業  (地方)都道府県レベル、市町村レベル〜〜お願い(陳情)  運営事業者〜国営・特殊会社・公社公団営団・地方公営事業・民営会社(大手・中小) →演者の立場をどうとらえるか(基本的枠組・構図)  工学部教授(土木工学〜計画論)〜土木工事ができるハードを作りたい習性  経済学部教授(経済学)〜経済的得失を考え、費用対効果を追及しようとする  政治家〜選挙民に気に入られたい  行政官〜権限・予算の拡大を狙う  2、クルマ社会とライフスタイル *何事にも自動車利用が前提となっている「クルマ社会」  自動車との付き合いは、まさに「揺篭から墓場まで」〜抵抗感なし  若い世代では、免許取得とマイカー保有が新しい権利のように思われている   〜権利侵害(クルマ利用の規制)には、鋭い抵抗 *北海道では、マイカー保有・利用がしやすい環境  〜アメリカ的〜広々・広大、新天地(開拓過程)、低密度、公共交通未成熟  ーー混雑・公害が顕在化していない  〜「生態実験」中の報告者(東京出身/大手私鉄エリア)にとって、   マイカー(免許)なしでの岩見沢居住は、果たしていつまで続くのか *自動車のメリット〜様々な面に及ぶ、当り前過ぎて自覚できない  ーー生活の近代/現代化(空間・時間利用の効率化)  ーー人間の欲望実現の上で、最も重要なもの *クルマ社会のデメリット  ーー交通事故の発生〜人権侵害;発生可能性〜日常生活での恐怖  ーー環境問題(公害発生)、資源の浪費(化石燃料・エネルギー効率)  ーー空間の占拠/浪費(渋滞/混雑の発生・駐車場問題)  ーー都市構造変革を強制(都心部の衰退と無秩序な郊外化・スプロール、都市計画)  ーー公共交通機関の衰退(事業者の経営困難、交通弱者の発生、費用計算のトリック)  ーー人間性の阻害(生活空間・ゆとりの、阻害・破壊)  ーー偏屈な/屈曲した「愛車」意識の高揚(マイカー/クルマに人格付与、雑誌)  〜クルマが飽和状態となり、個個人に身の危険が迫る(死亡する)まで、増え続ける ★環境問題と交通形態 ・「エコツーリズム」〜本来「環境に優しい交通形態」(定義が不明確)  〜「エコツアー」〜自然を理解するための自然地域内での活動形態   (ガラパコス諸島など)   ーー日本自然保護協会など自然保護関係者〜自然地域までは、鉄道などの公共交通の    利用をしないで、自然地域のスレスレまでRV車に乗ってくる〜〜矛盾    RV車は自然と「触れ合い」ながら、排気ガスを放出  〜自然地域までの交通形態(エコ・トランスポート・マネイジメント)を考慮しない  スイス・ツェルマット市街地へのマイカー乗り入れ規制  (対自動車サンクチャリーでの、鉄道利用の促進)  〜日本では、適正化要項(自然地域;お願い)と「歩行者天国」(都市部)  ーー自然への関心のあまり、自然への個個人の接し方・ライフスタイルを不問に  ーーなぜRV車主体(非必需的)の「オートリゾート構想」に批判がされないのか ・モータースポーツ〜スポーツというより商業主義的ショーである  エネルギー多消費型の形態〜人間の欲望そのもの〜スピード狂・信仰  〜若者に浸透〜レーサーレプリカ・ゼロヨン族・自爆型事故  〜モータージャーナリスト、モーターマガジン(自動車雑誌)の隆盛  ーードライバーとしての立場からの車の一方的な擁護 *クルマ社会を支え、支援しようとする行政分野  ・自動車メーカー〜輸出目的重要産業(通産省)〜雇用問題(労働省)  ・道路建設〜建設省〜道路特定財源(ガソリン税他)〜田中角栄の交通観?  ・交通事故対策〜警察庁 *現代の日本人の自動車へ抱くイメージ  〜〜自動車メーカーのコマーシャル分析 ・夜間帯民放番組での提供では独断場  ーーニュースステーション、ニュース23など枚挙に暇がない  〜きわめて日常化している   あたりまえで、自覚症状も薄れてきている ・対外販売車に比べ国内販売車の機能は絶えず遅れてきた  (自動車メーカーに軽く見られてきた日本人の歴史)  〜外見・ルックス/デザインの良さ  〜機能性、経済性、(乗車者の)安全性  〜環境問題への対応〜〜きわめて表面的 *某大学のクルマ社会への対応  駐車場のスペースが広い〜マイカー通学即許可  〜学生にマイカー通学があたりまえ〜無意識のうちに奨励?  交通死亡事故発生時の教授会の対応〜「安っぽい人権意識」の教官(あきれる対応)  3、鉄道で今何が起っているのかー分割民営化10周年 ★マイカーからの転換を図るには、あまりにお粗末な公共交通機関の現状  ・税金を投入せず自立採算が原則、反面がんじがらめの規制〜日本の公共交通事業  ・鉄道への投資が軽視〜不便なまま放置(道路建設投資と比較して)  ・政策が全国一律、地域の特色が十分反映されない〜東京の混雑を地方まで広める  ・JR普通列車の座席が大幅に減らされている(効率重視〜車両も減)   〜向かい合わせ型「クロスシート」からベンチ型「ロングシート」(通勤型)へ   〜詰め込み思想、日本独特な「立席定員」、立たせても運賃は同じ(経営優先)   〜JR東日本による東北地方への強引な導入〜反対運動〜反論の機会に乏しい   〜「車いすスペース」が座席撤去の口実として使われている現実、デッキも撤去   〜JR北海道でも今秋から通勤型車両の導入〜記者発表鵜呑みのマスコミ報道  ・むしろ鉄道車両に求められるのは、ベルリンの国電のように  増結し荷物室スペースとし、車いす・ベビーカーの他、自転車も折畳まずに乗せるべき  ・鉄道事業者にはもっとマイカーに対抗できる魅力を備えた交通機関へ脱皮すべき  4、大学改革への所見 *現代的テーマを直接追及する複合領域・分野の研究がしにくい風土  ーー狭く・細分化された学問・専門分野〜抽象化・ピュアな議論を追及 *「環境・国際・情報」などの新分野〜往々にして「魂入らず」  ーー現有勢力の温存、「看板だけの取り替え」が多い *「地理学」のだらしなさ  ーー地政学〜戦後の反省が不十分  ーー学会活動の矮小化、教育学部や学校教育への依存 *教育大学(学部)〜師範学校の生き返り  一人前の「大学」ではないのでは?  ーー先生にはなりたいが(幼稚な学生・低い社会への問題意識)  〜リサイクル・ボランティアなど論外   クルマだけは一丁前   オールマイティの反面、ほどほどの取組み  〜専門の軽視、単位〜教員免許が取れればよい   教員採用試験(暗記物の「お」勉強が得意)、卒論(研究)は苦手  地元や社会から注目されることもなく、取り残されている  〜少ない教官の新陳代謝、研究面での低迷・堕落 岩見沢校の実態  〜戦前の青年師範が、どさくさにまぎれて単独で残る  時代錯誤の「分校」制度〜小規模すぎて大学の呈をなさない  〜学生みな顔見知り、ゼミ室が控室(遊び場)に  雑用ばかりが多い〜入試などでの過度の教官の動員   〜事務が異様に権力を持っている  国立大学初の「オンブズマン」制度の導入  ーー異様な教官の存在、教官相互の不信感(迎合する勢力)  〜〜某「人権」教官が学生にけしかけて、若手教官をいじめ・介入する  →札幌校との統合・全学統合キャンパスしかない  〜将来の日本の教育が不安?  ■札幌駅周辺開発ワークショップ第3回レジュメ                武田 泉(北海道教育大学岩見沢校・講師) ★「駅そのもの」の議論が少ない〜将来の鉄道の利用促進に寄与するように計画すべき *「駅」〜制度・実態が意外にわかりにくく、誰も十分に考えてこなかった分野  〜鉄道用地内(都市計画法適用除外)〜「1/6 線」(鉄建協定)   鉄道事業者の専有物との意識〜〜地方自治体の政策の対象   ーー地元はひたすら鉄道会社にお願いすべきものとの意識   日常的すぎて、誰もが関心を持たない存在だった *鉄道の変革で、制度・システムが変化〜地方自治体の関与の可能性が出てくる  〜鉄道の採算性の悪化(厳しい事業規制)   大手私鉄の経営多角化戦略(生活総合産業化)〜本業以外で付加価値を追及  鉄道以外の財源の活用による鉄道の支援  〜鉄道高架(連続立体化)事業ーー建設省都市局予算(ガソリン税/運建協定)   請願駅による新駅設置  地元民間資金の導入〜民衆駅(駅ビル開発) *国鉄分割民営化後のJR事業(特殊会社)の行動と現状  〜用地問題ーー清算事業団・JR・市が入り乱れる  ーー将来を見据えた利用を考慮しない体質(交通機能軽視、更地としてしか見ない)  〜新幹線問題ーー「島式ホーム」2本分を残せ  〜公共性より効率・採算性の優先ーー(無料で座れる)公共空間より営利空間を指向  ーー待合室の撤去、ロングシート(詰め込み型)車両の導入〜わざと混雑拡大   〜博多駅では行政監察の対象になる    肝心の本業(鉄道)を差置いてまで、無秩序に店舗を拡大   〜〜札幌駅西通りの「ロッテリア」をどかして、鉄道案内・サービスコーナーを     北口に簡易改札口の設置を *「動線」が合っていない〜利用しづらく利用が遠のく  ーー鉄道事業者と地元自治体の協調が不可欠