武田レジュメ(1993年当時の論稿 その後フル規格で環境アセスメントが実施され、優先順位に基づく予算待ちの状況 不要論も少なからず存在している) 札幌における北海道ウォーターフロント研究会報告  北海道新幹線の建設方法を考える                     武田 泉(北海道大・環境科学・院) (要約)  1993年夏に予定されていた北海道新幹線の計画見直しは、政治改革や総選挙の余波で流動化・鎮静化している。こうした中で、実現可能な建設方法を提案する端緒とすることが、本報告の目的である。  北海道新幹線計画に対して次のような提案をしたい。 @建設コスト圧縮のため、スーパー特急規格とする(将来的にフル規格変更可能、東北新幹線延長部分もスーパーに合わせる)、 A北まわり(小樽・倶知安経由)、新函館駅直行案、 Bまずスーパー特急規格で札幌〜新千歳空港間を先行建設、 C在来函館線小樽(余市)〜長万部間廃止、 Dスーパー特急規格(狭軌新幹線)で 200km/h運転をめざし、高規格化を図る、 E一部単線、盛土で施工して建設費を圧縮、 F道路予算・道路用地の活用や建設省関連の公共事業も取り入れ、 G中央に向けて、国土軸論議での理論武装、北海道特例のアピール、 H情報公開、参加・発言の機会提供、反対派との合意形成・対話を進める、 I沿線の土地売買の集中的監視と沿線土地利用計画の策定、 である。  しかしこれまで、北海道新幹線の実現には山積する障害のため、地元での利害対立で道内全体としての意思統一がされていない。ここでスーパー特急を提案することで新たな展望が開けるのではなかろうか。スーパー特急化で工事費を圧縮し、採算性・実現性を増加させ、段階的時間短縮や在来線直通ができ、貨物・寝台など様々な列車の運転が可能である。またスーパー特急案の背景として、改主建従政策や新幹線構想、鉄道の役割の変化に対応した青函トンネル論議の歴史がある。  今後の対応は、単に政治力に頼るのではなく、広範な議論と合意形成、意見陳述の自由の確保、さらには行政制度改革によって新たな展望が開けるようにすることが望まれる。 (レジュメ)  1、はじめにー議論の視座  地方(道民)からの立場〜果たしてスーパーの主張は「裏切り」か  インフラ整備論ーー鉄道建設の意義(交通学的側面)  公共政策のImplementation(執行と実現)ーー政治改革・行政改革論(行政学的側面) 1993年夏に整備新幹線の計画見直しが予定(政府・自民党の判断)   〜総選挙でその取り扱いは流動化・鎮静化  2A、北海道新幹線計画に対する報告者の提案(筆者案) @建設コスト圧縮のため、スーパー特急規格とする(将来的にフル規格変更可能、  東北新幹線延長部分もスーパーに合わせる) A北まわり(小樽・倶知安経由)、新函館駅直行案 B緊急にスーパー特急規格で札幌〜新千歳空港間を先行建設  〜千歳在来線は、北広島分岐で長沼方面へ通勤新線の建設可能に C在来函館線小樽(余市又は・仁木)〜長万部間廃止 D駅は、盛岡、滝沢ジャンクション(乗換・又は異軌間台車変更線ータルゴ方式)、  沼宮内、二戸、*三戸、八戸、新七戸、新青森、*津軽今別  渡島(知内又は新木古内)、新函館(渡島大野又は新上磯)、*大沼ハイランド、  新八雲、長万部、*ニセコ高原、倶知安、*キロロ、新小樽、手稲、札幌  南札幌(広島・大曲)、新恵庭、新千歳空港、(*:地元設置駅(請願駅))  滝沢(又は好摩)ジャンクション、東青森(信)、新上磯、新函館、新函館、札幌、に 連絡線(アクセスポイント)を作り、旅客・貨物列車とも在来線と直通運転する  室蘭線長万部・東室蘭間の電化ーー室蘭・苫小牧(旭川)方面とも直通 Eスーパー特急規格(狭軌新幹線)で 200km/h運転をめざす  条件:線路の立体交差(踏切なし・防護柵設置・侵入者を法律で罰する)     カーブ(最小曲線半径の制限)を緩和、カントを大きく     ポイント(分岐器)・架線・軌道の高規格化 F一部単線で(羽越線方式互い違い複線)、盛土を多く施工 G道路予算・道路用地の活用や建設省関連の公共事業も取り入れ[制度の変更T] H中央に向けて、国土軸論議での理論武装、北海道特例のアピール I情報公開、参加・発言の機会提供、合意形成(今から対話)を進め、  (困難が予想されるアセスメント実施に向け、自然保護団体の反対を回避する) J沿線の土地売買の集中的監視と沿線土地利用計画の策定  (「常磐新線」法を拡大し過剰利得を事前に防止、騒音振動公害の予防)  2B、北海道新幹線実現への現実の障害  @新幹線効果への疑問(利用率・採算性)  A新幹線青森延伸の規格が未決定(フル・ミニ・スーパー特急)  Bルート未決定(長万部〜札幌間)  C新千歳空港アクセスリニアへのこだわり  D空港(高速道路)整備の進捗(他県よりも相対的に) 北海道内では地元で利害対立〜全体的な意思統一ができていない点(ABC)  〜北陸・九州と比べ地元自治体(道)の取組みが弱いと批判される根拠 期成同盟会のテレビコマーシャル放映(東京キー局)  〜イメージのみが先行し、在来線廃止問題の対応など実態が伴っていない   函館・室蘭両線を廃止対象の並行在来線と認定してしまう非常識がまかり通る   (運輸省)  3A、スーパー特急化で期待される効果 工事費圧縮ーー実現性(早期完成への足掛り・東京での世論)ーー採算性 タルゴ方式の車両(異軌間変更台車)の実現ーーフル新幹線(盛岡以南)も直通可能 対東京以外に、対東北、道内都市間(札幌・函館間等)で段階的に時間短縮が可能に  東北線沿線のみならず弘前・秋田・新潟・大阪方面へも直通可能 在来線に直通可能ーー寝台列車(ブルートレイン)・貨物列車も運転可能 札幌・東京間5時間を目指すだけでなく、  「北斗星」で9時間、札幌・函館間2時間半、函館・青森間1時間半を目指すべき  JR東日本松田副社長(北見出身・改革3人組)〜苫小牧・札幌・旭川間の優先整備  3B、列車運行形態の現状(青函トンネル〜千歳〜札幌ルート) 国鉄時代の近代化投資で冷遇(五稜郭・東室蘭間は未電化、単線区間有)〜継ぎはぎ状態 〜運行可能な(高性能)列車の種別(電車・気動車)が限定 津軽海峡線〜課題が多い  昼行列車:乗換回数が減っていない(青森・函館両駅)       青森函館間が2時間以上、通勤通学は不可能で交流促進       本州から札幌への直通運転ができない(高性能の電車列車)       列車運行のバリエーションが少ない(ルートや行先)       (倶知安経由、常磐線経由の列車、弘前・八戸・仙台・新潟・横浜行)  夜行列車:東京直通の寝台特急運行〜寝台車の個室化や食堂車のレベルアップ       当初は飛行機の往復利用より1万円安い往復割引切符が発売〜中止(1991)       〜予想外の北斗星人気、大阪行き寝台特急の開発  〜トンネル輸送の時間短縮効果は、むしろ貨物列車の方が大きい 道内都市間幹線輸送の現状〜輸送シェア確保に全力   競合交通機関(マイカー、高速バス、航空機)が所要時間・価格で有利に展開    鉄道の施設整備たけが抑制、鉄道以外はインフラ整備進捗    30分間隔・ 130km/h運転、Sきっぷ(運賃ディスカウント)、リゾート車両  4、新幹線計画の歴史的背景と青函トンネルの活用方法に関する論議 新幹線構想:  「軽便規格」の日本の鉄道(ゲージの幅)  「改主建従」対「建主改従」(憲政会対政友会)ー政治路線、政治と鉄道建設  「弾丸列車」構想、南満州鉄道「あじあ号」の成果  東海道新幹線の建設(高速道路との関係)  整備新幹線(列島改造論と新幹線整備法)  経済屋の発想(慎重派)対土木屋の発想(積極派) 青函トンネル構想:  洞爺丸台風遭難事故〜天候に左右されない交通体系の確保  鉄道の果たすべき役割の様変り〜対本州輸送〜首都圏からみて遠隔地の北海道                       今日旅客輸送で航空機が圧倒的なシェアトンネルの利用方法:   問題視された経緯極論の建設中止〜国民経済の観点(日本鉄道建設公団、1984)   国土交通軸の観点(今野、1983)   長期的社会資本整備の視点(藤井、1985)   想定される列車の運行形態(野焼、1983;曽根、1983)   カートレインは実施計画が欠落して推移(計画当時にクローズアップ)  5、今後の課題 大物政治家の政治力・神通力に頼る時代は終ったーー21世紀の発想の必要性 広範な議論と合意形成、意見陳述の自由の確保 行政制度の改革・不合理の解消ーー運輸省と建設省の合併(予算・用地) 必要性の再検討ー対サハリン海底トンネル構想 新たな環境問題への対応