「全国鉄道利用者会議」御中

  日本共産党・質問回答係

2000年6月15日

 質問に以下回答します。

1 国の交通施策にどのような役割を期待しますか。

 わが国の道路、港湾、空港、鉄道などの交通関係社会資本は、社会資本投資の中で も中心的に整備が図られてきました。しかし、モータリゼーションへの過度な偏重を きたし、その一方で公共交通機関の衰退を招くことになっています。
 交通インフラ整備は、大きな骨組がほぼ充足段階にきており、いま求められている のは、道路偏重の政策を改めることや「国際交通機能強化」の名のもとの無駄な港 湾、空港づくり、また東京横断道路、本四架橋など「高速交通体系」整備を最優先す る政策を思い切って転換し、大量輸送に適した公共交通手段である鉄道を中心に、バ ス、路面電車などバランスのとれた生活重視の総合的な交通体系を計画的に確立する ことです。
 総合的な交通体系の整備をすすめるにあたって、道路等の特定財源制度は廃止し、 道路、港湾、空港、鉄道などの「総合交通特別会計」を創設し、総合的、一元的にコ ントロールしていく必要があります。

2 整備新幹線の並行在来線の廃止について。

 新幹線そのものは、鉄道の近代化による技術革新の成果であり、国民生活向上と利 便の増大から賛成できます。しかし、危機的な財政状況のうえに、自治体に過剰な負 担を押しつけるなど無計画、無責任な財源対策となっています。また、整備新幹線建 設の前提となっている並行在来線の廃止など、こうしたやり方には反対をしていま す。
 特に、並行在来線の廃止は、幾重にも不当と言わなければなりません。先ず、地域 に止まらず全国の交通ネットワークが分断されること、この在来線を使用しているJ R貨物輸送に直接重大な影響を与えること、仮に、第三セクターで経営する場合で も、経営が成り立つのか、その負担を自治体にかぶせ、運賃も大幅に上がるなど、す べてのツケを地域住民、自治体に押しつけるものです。当然、地元経済にも多大な影 響をあたえることにもなります。絶対容認できません。

3 鉄道路線の廃止。

 ご指摘の鉄道事業法の改正は、路線廃止を促進する「赤字路線廃止自由化法」とも いうべき大改悪であり、日本共産党は反対しました。
 この改悪によって、路線廃止する場合、許可制から届け制に変更されたことや今ま で廃止の前提条件として地方自治体の同意が必要であったものが不要となるなど、事 業者の一方的判断だけで自由に廃止できることなりました。
 特に重大なのは、運輸政策審議会の答申で「収支採算の確保が困難な路線」につい て、バス等の自動車輸送への転換を図るべきとしています。つまり、輸送需要が少な い、不採算・赤字路線廃止の方向を示していることです。
 同時に、路線ごとの廃止に止まらず、路線の一部である「特定区間」を取り出して の廃止も可能としていることは、大変重大問題であり、「ローカル線」ばかりでなく 「幹線」の不採算・赤字区間も廃止されることになりかねません。現に、JR西日本 の可部線は特定区間だけを取り出し廃止しようとしています。全国の先例となるだけ に、どうしても廃止を食い止めなければなりません。引き続き奮闘していきたいと考 えています。

4 着席率。

 首都圏をはじめ、大都市圏の鉄道輸送の混雑の中を利用している通勤、通学者は、 およそ人間扱いとは無縁のもので、極めて異常と言わなければなりません。
 これは、鉄道ばかりではありません。道路の渋滞も深刻であり、バス、路面電車な ど公共交通機関への信頼性を損なわせ、鉄道の混雑度を高める要因にもなっていま す。このことからも、公共交通機関を優先させる施策が求められています。
 こうした大都市圏の輸送の混雑は、長年の自民党政治による大都市圏への一極集中 など歪んだ都市開発に起因するものであり、この点に根本的メスを入れなければなり ません。
 ご指摘のように、電車の定員は、座席数と吊り革に捕まれる人員となっています。 その定員の約二倍も乗せているわけですから、吊り革も捕まれない人が半分もいる状 態で、良好なサービスや安全性が確保される状態ではありません。座席率も含め混雑 緩和の改善の諸施策が求められています。

5 道路特定財源の使途。

 日本共産党は、揮発油などを道路特定財源として、道路整備特別会計に直入する制 度に反対しています。なぜなら、国や地方自治体の大切な税源を、個々の道路事業の あり方や必要性とは関係なく、一定枠を特定の事業のための財源とすることは、財政 民主主義のうえからも許されるべきではありません。
 また、自動車重量税のように、法律の規定もないまま運用として道路特定財源にま わされているものもあります。
 しかも、道路整備事業は、港湾、空港整備などとともに、ゼネコン型公共事業によ る浪費の温床にもなってきました。これらの浪費をあらため、限られた財源を道路、 鉄道、港湾、空港にバランスよく配分することは、避けて通ることのできない課題と なっています。そのためには、道路特定財源を一般財源化するとともに、港湾整備・ 空港整備特別会計、鉄道予算などを一本化した総合交通特別会計を創設することが不 可欠です。

6 鉄道分野の情報公開と市民参加。

 交通事業の最大の使命は、安全確保と利便性の提供にあります。特に、鉄道は大量 輸送機関として公共交通の基幹的役割を担っています。
 それだけに、利用者の安全対策も含めたすべての苦情処理に対して、機敏な対応が 求められていると同時に、それがどの様に教訓化され、対策がとられていくのかを含 めたシステムの確立や情報公開は重要な課題です。
 特に、運転事故に関する、運輸省への事故報告の基準を大幅に後退させ、事故件数 を少なくみせるやり方などは、本末転倒です。こうした事故等安全に関わる情報は、 利用者に対しても正確な情報公開が必要となっています。また、運賃、料金などの決 定に際しても利用者の参画の保障は重要課題です。このように、安全、運賃、ダイ ヤ、バリアフリーなどに対する情報公開や利用者の参加を活発にすすめていくことは 当然のことです。

7 三大都市圏の都市交通対策。

 必ずしも優先順位をつけることにはなりません。先にも指摘しましたが、交通政策 だけをいくら手をつけても、根本解決にはならないほど深刻な状況にあると思いま す。自民党政治の大都市圏への極端な集中による歪みを全体的に正していくことと合 わせて都市交通対策をすすめる必要があります。
 東京にみられるように、大企業の無秩序な管理機能の集中化は、交通需要を格段に 増加させており、この集中を抑制しなければ、都市交通手段をいくら整備しても交通 緩和はされないでしょう。また、モータリゼーションの弊害の是正を図るうえで、鉄 道、地下鉄、路面電車、バスなどの公共交通機関の活用と整備・充実することも重視 すべきです。  

8 地球温暖化対策と交通部門。

 今日、地球温暖化対策は、全地球的規模の課題であり、交通部門でも考慮すべき重 大課題です。CO2排出抑制のためには、自動車の走行距離や車両数そのものの抑制 が求められています。その他、停車中のアイドリング停止などもその態様に応じて考 慮すべきです。
 ヂィーゼルエンジン車の多い大型トラックの抑制は一定の効果があり、鉄道貨物輸 送を中心としたモーダルシフトを進めていくことが重要です。しかし、政府は、あい も変わらない道路偏重政策をすすめ、モーダルシフトは掛け声だけで終わっていま す。自動車による環境破壊は一時の猶予もできない状況であり、思い切ったモーダル シフト対策が必要となっています。

9 共通運賃について。

 共通運賃通算制により、鉄道の密集した大都市では旅客の利便が高まる制度である と思います。その実施のためには技術的問題、事業者の経営問題などを含めた検討が 必要です。しかし、すでに首都圏や大阪圏では乗り継ぎ割引制度が実施されており、 少なくとも、この制度を拡充することなどは実現できることです。
 いずれにしろ、個々の事業者の経営状況、経営規模、乗り継ぎ利用の場合の運賃通 算方式など、バス、地下鉄など含めさまざまな角度から検討すべき課題もあり、直ち に時期を示すのは困難です。

10 鉄道新駅設置への自治省の対応について。

 駅は鉄道にとって不可欠の施設そのものであり、新駅も含め鉄道事業者の責任で設 置すべきものです。ましてや、JRへの自治体の寄付は禁じられています。これは、 国鉄の分割民営化にあたって、約三十兆円もの巨額な借金を国民負担にまわし、不採 算路線も大幅に切り捨て、赤字がでない仕組みをつくってできたのがJRだからで す。こうした経緯からも自らの施設は自ら整備するのは当然のことです。
 国が、新駅設置の支援策を講じることは適切ではありません。駅を設置すること は、一定の旅客利用者がいるからで、しかも事業者にとって開発利益等も受けるメ リットもあり、事業者負担が原則です。

11 鉄道事故調査。

 鉄道事故が発生すると多くの死傷者がでて、惨事となります。安全を確保するため に、発生した事故の原因の徹底究明と再発防止対策が極めて重要となります。
 ところが、日本には鉄道事故調査制度がまったく確立されていません。事故が発生 すると、警察、検察による刑事捜査が最優先され、事故の再発防止を目的とする調査 システムがなく、原因究明も事故の当事者や利害関係者が調査するなど事業者任せで す。だから、いつも「人為ミス」で処理し、事故の背景にまでメスが入れられず、真 の再発防止策になってきませんでした。
 この解決のためには、事故原因と再発防止のための、利害関係者や運輸省などから 独立した科学的かつ公平・中立な事故調査機関を創設することが求められています。 同時に、これらの調査結果等も国民、利用者に公開するシステムも確立すべきです。

12 車社会の抑制策。

 何度も指摘しているように、日本共産党は早くからモータリゼーション偏重政策を 批判してきました。公共交通機関を根幹にすえ、自動車の抑制を進めていかなければ なりません。
 ガソリンの販売価格を引き上げることで車の抑制を図ろうとすることは、障害者な ど車が生活の一部となっている人もおり、物流その他のコストに転化されるなど、国 民の負担増大につながることになります。
 道路プライシングは、条件がある箇所では採用する価値があると考えます。環境税 については、第一義的には発生の原因者が、公害を発生させない対策を講じるべきで あり、一方的な消費者・利用者の負担となる環境税は車社会の抑制策としては不適切 です。

13 JR割引きっぷ、窓口でのクレジットカードの利用条件について。

 JRの割引きっぷは、JR発足以降、国民、利用者から人気のあった割引きっぷが どんどん廃止されてきました。こうしたことは利用者サービスの後退であり遺憾なこ とです。JR各社のもうけに直結する割引きっぷは新たに登場してはいるものの、各 社のエリアの範囲内で完結するタイプのものが多く、利便性の低いものもあり、改善 すべきです。
 クレジットカードの利用については、JR西日本では、ほとんどの緑の窓口で各種 クレジットカードの利用が可能となっていますが、JR東日本、東海などでは自社 カード及びJR各社共通のJRカード以外は使用できない駅が数多くあるのが実態で す。また、一部取り扱い除外になるものがあります。
 駅で各種クレジットカードが使えたり、取り扱い除外品がなくなればクレジット カード利用者にとって利便性が高まることは事実です。ただ一方、こうしたことは鉄 道に限らず商品の販売、サービス、その他広く存在することも事実です。
 いずれにしろ、監督官庁も含め今後の検討課題といえます。

以上


www.riyosha.org