97.5/22 環境自治体会議(野辺地) 第4分科会「脱クルマへの提案」
 「現代日本社会での鉄道の復権は本物か」
   武田 泉(全国鉄道利用者会議代表/北海道教育大岩見沢校講師・交通地理学)
   鈴木一夫

 1、はじめにー論点の整理ー■なぜ鉄道利用者会議を旗揚げしたのか
〜巷では、鉄道に対する誤解・無理解が多すぎる
ーーそれは、鉄道専門知識(技術体系・規制制度)が一部の人達による独占の結果
〜マイカーや航空機の拡大の中、「鉄道の復権」は掛け声倒れ〜地方では安楽死
〜マスコミや鉄道愛好家は、意見発表しない
*国鉄(分割民営化)10周年ー規制緩和(需給調整)と中央集権ー
*道路と鉄道の関係〜〜運輸省と建設省の「100年戦争」を止めさせる必要
ーー国鉄分割民営化10周年のダイヤ改定のトピック
・秋田ミニ新幹線/ほくほく線(北陸スーパー特急)/世界最速山陽新幹線新型車両
〜マスコミ報道に地域差、扱いの大小ーー表面的イメージの先行
〜〜「整備新幹線悪者論」の中で、当該法律によらない鉄道整備が実現
ーー言論人や知識人を含む日本国内の世論に誤解や偏見が目立つため、
 鉄道を中心とした総合交通体系論議が、「翻弄されている」現実

 2、現在のライフスタイルをクルマ依存形態から脱却できるか
■社会生活上マイカーを利用しないと損をする社会システムは異常(おかしい)
〜全て自動車利用が前提、揺篭から墓場まで免許取得とマイカー保有が権利と認識
・メリット〜当り前過ぎて無自覚〜人間の欲望実現〜コマーシャル(イメージ)
→社会システムが「クルマ社会を支える」〜メーカー、道路建設、警察(事故)
*デメリット〜交通事故、環境問題、空間の浪費、都市構造を変える、人間性の阻害
 公共交通機関の衰退、偏屈な「愛車」意識の高揚(マイカーに人格付与)
★脱クルマ型交通形態の提案(←環境問題)
・都市部〜市街地区画の工夫、トランジットモール・「歩行者天国」、
鎌倉市報告(江ノ電の活用)
●自然地域〜「エコツーリズム」(環境に優しい交通形態)
例)スイス・ツェルマット市街地へのマイカー乗り入れ規制
・国内では、来訪者の多い一部国立公園における「自動車利用適正化要項」(お願い)
〜スカイライン・観光道路の相次ぐ建設ーー自然破壊、
近年のRV車ブーム〜自然への優しさ
ー→上高地・乗鞍・尾瀬・日光(中禅寺湖畔)・富士山・十和田(奥入瀬)
 もともと鉄軌道が道路に並行していたが廃止された
 もともとマイカーが入れず、鉄道・索道がある
ー→黒部渓谷・立山アルペンルート・(大井川)・(箱根登山)
◎大雪山国立公園での調査の目的
〜混雑ピーク時の交通(マイカー)対策→入り込みのコントロール
 ヒグマ出没、駐車場からのはみ出し路上駐車〜地元自治体パトロール 
〜費用負担・制度不備→モードへの転換(シャトルバス・鉄軌道)・入り込み客への啓蒙
〜士幌高原道路建設問題〜安易な観光道路利用(通過型)〜単純入込増と地域振興

 3、現代の鉄道〜「分割民営化10周年」〜お粗末な公共交通機関の実態
★旅客サービスの悪化(見えにくいところから実施)
・自立採算原則、鉄道投資の軽視、厳しい規制、全国一律の政策(東京の混雑を地方)
反面がんじがらめの規制〜日本の公共交通事業
ーーJR普通列車の座席が大幅減(効率・経営優先〜車両も減)
〜不便なまま放置(道路建設投資と比較して)
向かい合わせ型「クロスシート」からベンチ型「ロングシート」(通勤型)へ
〜詰め込み思想、日本独特な「立席定員」、立たせても運賃は同じ(経営優先)
 東北地方への強引な導入、「車いすスペース」が座席撤去の口実
 デッキも撤去(JR北海道でも通勤型車両の導入)〜記者発表鵜呑みのマスコミ報道
 岩手県で唯一の組織的反対運動
 トイレなし車両も(JR西日本他)〜国鉄時代の不可欠なアイテムのカット
・求められる鉄道車両に逆行〜増結、荷物室スペース(車いす・ベビーカー自転車)
・駅も変化(無料で座れる)公共空間よりも営利空間を指向〜待合室の撤去
★鉄道事業者にはもっとマイカーに対抗できる魅力を備えた交通機関へ脱皮すべき
*分割民営化後のJR(特殊会社)の行動と現状ーー行政監察の対象
 駅も実態が複雑で分かりにくい
 鉄道事故調査〜専門機関なし

●交通・運輸の研究分野の特色
・日常(誰もが評論家になれる)でありながら、とても難しく・複雑
ー特に制度(官と民の関係、規制・許認可・通達・沿革・経緯・利害関係など)
〜誰がやるのか〜所有と経営(運営)〜公共事業と公益事業(公共性と採算性)
 乗車に運賃が必要(算定方法・適正運賃とは)
・大規模なインフラ(大土木工事)、車両・機材+発着施設(駅・港・空港)が必要
ーー専門知識が必要〜一般国民・住民が監視する制度に乏しい
・交通機関同志での競合〜利用者の選択〜マイカーの台頭
・交通機関の持つ「負の効用」〜事故(大規模)・公害(環境問題)ーー影響の甚大さ
*交通・運輸を支える専門家集団の研究分野(研究者+実務家)
◎交通経済学〜応用経済学・経済政策論ーー経済原則・採算性優先
・(行政学)〜制度・規制のあり方
◎土木工学〜交通計画論ーーインフラ建設・整備中心
・(社会学)〜受益・受苦の分析
・(交通地理学)〜場所による比較・地元地域への影響
→◎〜人材排出システムとの関係〜官僚養成・公務員試験制度(出題分野)との関係
 〜法科万能主義(事務官)+土木工学(技官)の大きな影響力
 ー→担当者と面談する時、事務官か技官かで、考え方が大きく異なる
*行政システム:縦割り・中央地方関係ーー権限の有無、領域
 (中央)政府機関〜本省庁ーー出先機関〜規制・監督・計画・模範的運営
  〜特別会計・5か年計画・通達・直轄事業・補助事業
 (地方)都道府県レベル、市町村レベル〜〜お願い(陳情)
 運営事業者〜国営・特殊会社・公社公団営団・地方公営事業・民営会社(大手・中小)
→演者の立場をどうとらえるか(基本的枠組・構図)
 工学部教授(土木工学〜計画論)〜土木工事ができるハードを作りたい習性
 経済学部教授(経済学)〜経済的得失を考え、費用対効果を追及しようとする
 政治家〜選挙民に気に入られたい
 行政官〜権限・予算の拡大を狙う

**補足資料**
*今、日本の鉄道の将来が危ない!
 分割民営化による見かけの「鉄道復権」よりも、クルマ社会等競合手段の無制限な発達
ーー短期的経済性しか考えない行動原理(掛け声倒れ)
・最も怖いのはーー地方自治体・一般国民によるの鉄道への無関心
 〜知らない間の鉄道のサービス悪化ーー衰退ーー廃止ーー安楽死
*行政改革・制度改革との関連
 「整備新幹線悪者論」〜〜「格安航空会社万々歳」
 「公共事業(一律)悪者論」
 「特殊法人悪者論」ーー鉄建公団・鉄道整備基金など
理由ーー歴史的に鉄道は「政治的に泥まみれ」だったというイメージが強いから
 〜環境問題・交通事故問題は、(利便性とも関係して)吹っ飛んでしまっている
・年末の予算編成で、「整備新幹線」は悪者であっても、
「高速(高規格)道路計画」へは、大して新聞は矛先を向けない、という報道姿勢
*最大の問題は、「建設・運輸両省の百年戦争」
〜鉄道事業法と軌道法は統合できなかった
*目指すべき方向性:真の「総合交通体系」樹立のため、必要な改革
・(仮称)「総合交通基本法」の制定(効率的運営も射程に入れる)
・(仮称)「鉄軌道活性化法」〜踏切除去(立体交差・曲線改良〜用地・予算措置等)
ーこれに伴い(政治的に泥まみれの)「全国新幹線鉄道整備法」を廃止する
ーこれに伴い、特殊法人の鉄建公団・鉄道整備基金・道路公団等は統廃合して、
 (仮称)「鉄軌道・道路管理運営公団」に改組する(運営は民営化)
ー地方ブロック別に、権限を持った(仮称)「地域交通監督事務所(庁)」を設置し、
 (仮称)「地域交通監督官」登用制度を導入する、など
〜〜むろん「情報公開」は前提、「審議会」の改革の必要
*我々の主張〜情報公開や監視機関(制度・NGO)により合意形成を図る
 総合交通省への統合と、総合交通特別会計、地域総合交通監督庁の創設