環境省中央環境審議会地球環境部会公聴会
パブリックコメント発表
(2002年1月16日 星陵会館ホール)

全国鉄道利用者会議代表(北海道教育大学助教授)武田 泉

 

 国の温暖化削減の答申案について、特に鉄道等の公共交通を機軸とした交通環境対策に ついて意見を述べてみたい。
 温室効果ガスの延びは運輸旅客部門、とりわけマイカーの伸びに起因するところが著しく、 このマイカーについて何らかの対策を講じることがきわめて重要であるという認識は広く 共有されていると、答申案では述べられている。
 答申案ではその後に国内制度の整備やグリーン購入、ライフスタイルの形成について書 かれており、さらに「交通対策のグリーン化」として具体策が挙げられている。マイカーの 削減にはその代替となる公共交通機関の充実、とりわけ鉄道(軌道)の充実が不可欠なはず である。しかしながら、項目として取り上げられているものには、自転車対策とエコドライブ、 道路の管理、とりわけ海外から輸入した手法であるTDM やIT の活用等の文言ばかりが 目立っている。その一方、公共交通機関、特に鉄道を具体的にどうするのかの記載が無き に等しい。中央環境審議会におけるこのような姿勢は、地方自治体の環境セクションの対応 をきわめて曖昧なものに終始させている。その結果、廃止寸前の地方鉄道への具体的な対 策も施せないまま、自動車が増加していく状況を傍観するのみで、実効性のなく掛け声倒れ のノーマイカーキャンペーンだけに終始しているように思われる。
 政府を含め環境部局が、具体的に公共交通対策に取り組めなかったのは、こうした分野が 国土交通省鉄道局や道路局都市局の所管であり、所管を飛び越えてまで勧告するような 政策対応がなされてこなかったという背景が存在する。もし本気で対策を講じるというなら、 地球環境対策予算で鉄道等の公共交通改善対策に補助金を支出したり、役所の都合で形 成されている鉄道関連法体系(鉄道事業法、軌道法、都市モノレール促進法、道路整備特 別措置法、連続立体事業についての建設省運輸省協定)に踏み込んで、抜本的に再編、改 変を行うことが必須であると考える。
 わが国の鉄道は世界的に稀な大手私鉄による採算理の経営が存在し、これがJR を成立 させてきた。しかし鉄道事業者は自前で線路施設を管理せざるを得ない等、道路や港湾、 空港と比べ著しく不利な状況にあり、合理化が進行や、地方では鉄道網の衰退に拍車がか かっている。コストの安い路面電車(LRT)の導入は制度がないため見送られ、逆に補助制 度が充実している事業費の高いモノレール等が各地で建設されてきたことは再考を要する であろう。また、事業者は合理化のための省エネや一部のリサイクルにしか環境対策の目 が向いておらず、北欧でみられるような「風力(発電)電車」の導入という発想は皆無である。 省エネ電車も、乗客にとって着席率が低くサービスの低下した低コストな安物車両が増備さ れていたり、運賃割引制度を一方的に廃止されることもあり、こうした鉄道事業者による消 極的施策も鉄道離れを引き起こしているケースもある。このため、地方の乗客の少ない赤字 ローカル線は環境対策というより非効率ととらえられ、マイカー利用が温存される結果とな っている。
 以上述べたようにマイカーの削減を行うためには、公共交通、特に鉄道に対してどのように 考え、どのように対策を講じていくかを具体的に進め、場合によっては他省庁所管の政策 にも強力に関与していくことが求められているのではないだろうか。