東京都知事殿

環境影響評価書案−小田急電鉄小田原線(代々木上原〜梅ヶ丘駅間)の
連続立体交差及び複々線化事業−に対する意見書

1.対象事業の目的及び内容について
○鉄道事業計画への市民参加は大きく遅れており、法的に保証された市民参加機会 は都市計画手続・環境影響評価手続の時ぐらいしかない。昨年10月には、小田急線 成城学園前−梅ヶ丘の高架化の都市計画事業認可を取り消す判決が下されており、 そこでは鉄道計画に関する情報公開や市民参加のあり方が大いに問われた。今回は 数少ない市民参加機会の1つであるため、意見書の中では、鉄道計画自体への意見 も含め述べさせていただく。

○高架化の事業認可取消の判決が下されたのは昨年10月であり、本事業の環境影響 評価調査計画書が公告・縦覧された昨年5月以降のことであった。本来は、この判 決が下された時点で、梅ヶ丘に高架で接続することを前提とする本事業は見直すべ きであった。にもかかわらず、当初計画通りの事業計画で環境影響評価手続を淡々 と進めることは認められない。手続は保留とし、判決の内容を踏まえ、連続立体交 差事業を全線地下で進めるよう、事業計画を見直すべきである。

○環境影響評価は事業を細分化することにより、環境影響が小さく評価される。成 城学園前−梅ヶ丘と、梅ヶ丘−代々木上原を分割することにより、一事業当たりの 環境負荷は少なくなり、比較対象となる「現況」の環境状況も異なってくる。具体 的には、列車本数は現況で770本、成城学園前−梅ヶ丘開業後には800本、本事業完 了後には900本と予定されており、成城学園前−梅ヶ丘の事業は30本増加を前提と した環境影響評価が行われた。しかし実際には、現況と全線開通後では130本の増 加となり、この影響が全区間に渡り及ぶことになる。全区間を1つの事業とみなし て、成城学園前−梅ヶ丘の環境影響も合わせて予測評価すべきである。

○トンネル形状は、高架−地下−高架と急勾配が続き、2線2層と4線1層が入り 乱れる大変複雑な構造で、難工事が予想され、相当多くの重機の投入が必要と考え られる。また、急勾配を上り下りする列車は、エネルギー効率的にも良くない。 もっと単純な工法をとった場合や、梅ヶ丘以西も地下化した場合等との比較評価が 必要である。

 本事業計画の策定に至った経過において、いくつかの代替案を比較検討してきた ことも踏まえ、これらの代替案を環境影響評価手続においてすべて詳しく公開し、 環境面からも比較検討することが必要である。

2.騒音について
○本事業の場合は、事業計画区間(梅ヶ丘−代々木上原)ではなく、列車本数の増 加により成城学園前−梅ヶ丘の高架区間で最も大きな影響が出る。ここを予測評価 すべきである。

3.廃棄物(建設発生土)について
○2線2層の下部(急行線)を除き、開削工法での工事とされており、約61万m3 の建設発生土が発生するとされている。世田谷代田付近は土被りが大きいため、こ こを開削で行うと掘削土量が非常に多くなる上に、付近住宅地への影響が大きい。 シールド工法で行うことも選択肢に入れ、発生土量の比較評価を行い、より発生土 量の少ない方法を採用すべきである。

○建設発生土の場内での再利用、場外での再利用、処分のそれぞれがどの程度の量 になるのか、見込みを示す必要がある。また、処分する発生土の処分先を明確に示 し、処分先の環境に影響を与えないことを証明すべきである。この予測抜きにし て、評価の指標に適合すると言うことはできない。

2002年3月28日
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清水孝彰
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