東京都都市計画局都市基盤部街路計画課 御中
「区部における都市計画道路の整備方針(中間のまとめ)」に対する意見・提案
T 「第1章 首都東京の新しい道路づくりに向けて」について
○今回の整備方針策定は、1990年代以降の社会経済情勢の変化への対応をその目的
としているが、本章は全体的に道路整備の必要性ばかりを主張する基調となってい
る。しかし、「平成不況」以前、戦災復興時代の都市計画道路が未だ未着手である
ものが多い。計画以来60年近くも建設されないでいるのは、それぞれに理由がある
ためである。今回の方針ではそれらを無理して建設する方向性ではなく、必要性自
体を見直す方向が望まれるのであり、計画の中止を含めた再検討を、今回の方針の
基調とすべきである。
U 「第3章 今後の区部における道路整備の基本的考え方」について
1 首都東京が目指すべき将来都市像
○「東京構想2000」を引用し、首都圏3環状道路を骨格とした都市構造「環状メガ
ロポリス構造」を目指すこととされているが、この都市構造は東京圏の経済効率最
優先の考え方に基づくものであり、東京圏の無秩序な拡大を助長することにつなが
るものとして、私は「東京構想2000(中間のまとめ)」のパブリックコメントにお
いて、「環状メガロポリス構造」を誘導することに強く反対した。区部への一極依
存構造は現状でも是正されつつあり、現在問題になっているのは東京圏への一極集
中である。「環状メガロポリス構造」は東京圏への一極集中を誘導し、問題を拡大
する考え方である。
2 道路整備の基本理念と基本目標
○「環状メガロポリス構造」の実現を基本理念の筆頭に掲げることは、上述の通
り、反対である。
○「経済の先行きは不透明であり、財政状況も大きく好転することは考えにくい」
ことがなぜ「道路整備を重点的かつ効率的に推進する」理由となりうるのか不明で
ある。経済・財政状況に合わせて、道路整備の規模を縮小すること、道路のみでは
なく交通体系全体を見渡した検討を行うことが、理念として必要である。
3 今後の道路整備の方向性
○「都市の骨格をなす道路整備」「広域的な幹線道路ネットワークの整備」を優先
することは、道路拡大容量を上回る新たな自動車交通需要を発生させるため、交通
量が増加するだけであり、道路交通の円滑化に寄与するとは言い難い。自動車交通
量削減、公共交通利用促進、生活道路対策等を優先する方向性が求められる。
○「物流の効率化」は「広域的な幹線道路ネットワークの整備」ではなく、モーダ
ルシフトの推進により実現を図るべきである。区部の交通渋滞・排ガス汚染の大き
な要因は貨物自動車であり、自動車交通量自体を減らしていくことが不可欠であ
る。モーダルシフトの推進は物流施策の中で最も重点的に進めるべきものであり、
貨物操車場の復活利用、旅客・貨物列車の一体運用、水陸連絡貨物駅の復活による
舟運−鉄道のネットワーク化など、他の部局と連携し進めることを求めたい。
○道路をLRTの導入空間と位置づけ、LRT等の公共交通の利便性向上に寄与する整備
を進めるとされたことは、都の道路政策には従来見られなかったものであり、評価
するものである。但し後述するように、公共交通の導入空間として最も有力な都市
計画道路種別である「特殊街路」が、区部にはない。LRTは環境・まちづくり・ユ
ニバーサルデザインの視点から全国的に見直されている公共交通機関であるため、
区部にも「特殊街路」種別を設け、認定を進め、導入空間を確保するよう求めたい。
○「地区内の生活道路への通過交通を排除する都市計画道路の整備を推進する」と
あるが、通過交通を排除するには通過交通を処理する新たな道路整備以前に、生活
道路のコミュニティ道路化など、生活道路に通過交通が入れないようにする道路改
良を優先すべきである。
○道路整備の方向性で最も重要なのは、道路整備が地域コミュニティの形成・維持
に寄与するものであり、既往の地域コミュニティを分断することが決してないよう
にすることである。地域コミュニティは昔からの道路ネットワークに基づいて形成
されていることが多いため、現道の拡幅か全くの新設となるかが重要な要因とな
る。新設の場合は地域コミュニティの分断につながらないよう、特に慎重に対応す
る必要がある。
V <今後の検討の方向性>について
1 整備目標の設定
○「B環境」の整備目標例には「混雑時の自動車の平均速度を向上させることによ
り」とあるが、自動車公害の改善のためには、交通量そのものを指標とし、交通量
の減少を目標とすべきである。
○「(参考)その他の項目案」の「@活力」のにある、「広域物流ネットワークの
整備延長」「環状道路の完成率」の両指標は、アウトプット指標そのものであるた
め、目標として絶対に使うべきではない。
2 将来道路ネットワークの検討
○LRT等の公共交通の導入空間として最も有力な都市計画道路種別は「特殊街路」
である。しかし、区部は国の一般的な都市計画道路とは異なる段階構成を使用して
おり、「特殊街路」という種別自体がないのは、公共交通導入空間確保にとって致
命的である。LRTは環境・まちづくり・ユニバーサルデザインの視点から全国的に
見直されている公共交通機関であるため、区部にも「特殊街路」種別を設けるよ
う、段階構成を早急に見直すこと、併せて特殊街路認定を進め、導入空間を確保す
ることを提案したい。
○「快適な居住環境を保全するための沿道環境対策」の重要な柱として、崖線や水
辺等の区部では貴重な自然環境を破壊しないことが必要である。都市計画道路の計
画線がこれら自然地にかかる場合には、計画の変更・中止も含めた再検討を強く求
めるものである。
○上述の通り、道路整備が既往の地域コミュニティを分断することが決してないよ
うにすることが必要である。当該都市計画道路が現道の拡幅か全くの新設となるか
(道路予定地に一定程度の現道があるかどうか)を検証ポイントの最重点項目と
し、新設の場合は地域コミュニティの分断につながらないよう、特に慎重に対応す
ることを強く求めるものである。
3 事業優先度の検討
○事業優先度だけでなく、冒頭に述べた通り、計画の中止を含めた再検討を併せて
検討すべきである。
4 整備に必要な事業費と今後の対応
○「主要な幹線道路を重点的に整備」することは、上述の通り交通量の増加を招く
ものであるため、自動車交通量削減、公共交通利用促進、生活道路対策等を優先す
る対応を求める。
○「道路特定財源の適正な配分見直しを国に働きかける」とあるが、東京への配分
を増大することは疑問である。将来は東京への重点投資ではなく、全国各地の地方
が独自の活力を発揮し、地域の活性化・生活向上を積極的に目指す方向が必要であ
る。また、道路のみではなく交通体系全体に使用可能な財源へと見直しを行うこと
が、国政レベルの課題となっている。
5 都市計画制限の検討
○現在の木造住宅密集地域の分布は、都市計画道路の未着手路線において、私権の
制限が何十年もかかったまま一向に住宅の更新ができず、現在に至ってしまった地
域と一致する。
事業が進まない道路については都市計画決定自体を変更し(つまり道路の建設計画
を撤回し)、私権制限を解除するという選択肢もありうるはずである。計画の中止
を含めた再検討を行うという形で都も責任をとるべきである。
W 北区における中止すべき都市計画道路
1 補助86号線
補助86号線は、赤羽中心部の東西幹線となり交通量が多くなることが予想され、
加えて東の終点は北清掃工場であるためごみ運搬車も多数通過し、全線開通時の沿
線への影響は甚大なものになることが予想される。
当該道路は赤羽自然観察公園の敷地内を通過する。この部分は、造成から免れた
ため、公園の中で最も良好な自然のポテンシャルを残している。もしここに道路が
建設されれば、将来の自然環境復元のための核となる自然を失うばかりでなく、公
園の心臓部ともいえる(たんぼや池に使われている)湧水を枯らす恐れがある。湧
水の枯渇については、北区が旧大蔵省から公園用地を取得する際に、旧大蔵省から
も指摘を受けている事項である。
このような、赤羽自然観察公園の自然環境への配慮の必要性は区も認識されてお
り、陸上自衛隊十条駐屯地赤羽地区(その2)跡地(以下「自衛隊跡地」)の利用
計画を検討した政府機関移転跡地利用計画検討会報告書では「都市計画道路補助86
号線は必要性の有無も含め……検討し……」とされている。また、自衛隊跡地の取
得に当たり、区が東京都に事業用地の取得意向を照会したところ、都は区に対し
「事業化の予定が当分ないので取得意向もない」と回答している。ならば、今回の
整備方針策定を期に、この道路計画は白紙に戻し、都市計画の変更手続を行うべき
である。自衛隊跡地に関わる北区による住民意向調査によっても、補助86号線の肯
定意見は10件、条件付き肯定は14件とされており、合計しても否定意見28件をなお
下回ることが指摘されており、この結果も尊重すべきである。
補助86号線は、赤羽西の地形を無視した直線状のルートで計画されているため、
赤羽自然観察公園の他、稲付城跡の台地の緑の分断ももたらす。家屋立ち退きの犠
牲も大きく、予定沿線住民の多数から反対の声が上がっている。現在、東北本線赤
羽駅付近連続立体交差事業の工事進捗とともに、高架下の約300mの区間で建設が
進んでいるが、このまま東西に予定通り道路を建設することは、以上の通り問題で
ある。当該道路計画は、今のうちに中止すべきである。
2 補助73号線
非常に多くの家屋が立ち退き対象となる、現道のない場所への計画である。十条
銀座や清水小学校にもかかり、街への打撃が大きい。清水坂公園の敷地も一部削る
ことになる。
3 補助91・81号線
立ち退き対象となる家屋が多い、現道のない場所への計画である。梶原商店街、
西ヶ原・駒込の住宅市街地への打撃も大きい。上中里2丁目内は高架構造となり、
日照阻害や騒音などの被害が広範囲に及ぶ上に、上中里町内からこの道路に出入り
することができないため、沿線住民は全く利益を受けない。梶原踏切跨線橋はこの
道路のルート上に造られたため、この道路が建設されれば無駄な設備となってしま
う。
4 補助92号線
田端の住宅地や補助93号沿線の商店街、多数の小学校や保育園への影響が大き
い、現道のない場所への計画である。当該路線に並行して、田端高台通りが現存す
るため、この道路を活用すれば十分である。