■美観地区ガイドプラン案の縦覧について

		                    2002年3月2日
千代田区長 殿

	「美観地区ガイドプラン案」についての意見

								清水孝彰


1.美観地区ガイドプランの基本的考え方について
○上位計画となる「千代田区景観形成マスタープラン」では、美観地区ガイドプラ
ン策定について、「首都としての景観のあり方が問われることから、当該地域の地
権者だけでなく、多くの人々が参加できることが必要」とされている。しかし景観
まちづくり条例では、本案に意見が提出できるのは区民と権利者に限定されてお
り、ホームページの告知でも「区民、企業および事業者」とされている。本来、首
都としての景観のあり方というならば、全国民に意見提出の門戸を広げるべきであ
る。私も区内在勤者の立場で(企業・事業者に含まれるかどうかわからないが)意
見を提出させていただく。
○千代田区景観形成マスタープランでは、「現状の美観維持型からルールに基づく
景観形成へ」「建築物の単体規制から都市環境の総合的誘導策へ」等の記述があ
り、本案も、規制がほとんど何もない「誘導指針」となっている。しかし美観地区
は本来、既に形成されている美観の維持を目的とし、建築物に一定の規制をかける
地区である。美観地区が戦前の一時期を除き実質運用がされないまま今日に至って
しまい、その間に美観地区の景観が大きく破壊されたことをまず問題にし、過去を
検証する必要がある。
○本ガイドプランを単なる誘導指針とし、事前協議等で運用していくだけでは“絵
に描いた餅”に終わる可能性がある。東京駅周辺など特定の地区だけでも、高さ規
制や外壁の材料・色等の規制を設けるべきである。戦前に運用していた様々な規制
こそを案として公表し、意見を聴取する必要がある。
○千代田区が都市計画マスタープラン、景観形成マスタープランを策定したのは
1998年であり、それ以来4年も経過してしまったが、できるだけ早期の策定を要望
するものである。

2.大手町・丸の内とその周辺地区の方針・基準について
○「風格ある都心」の解説として「都心のビジネスセンターにふさわしい機能の向
上を図る」とあるが、景観には関係ない。建設・不動産業者に悪用されぬよう、こ
の文言は削除すべきである。
○「秩序ある街並み」の中で、低層部は軒線31mの規制があるのに対して、高層部
はセットバックが定められているだけで規制がないのは問題である。高層部も現状
の建築物高を限度として、高さ規制すべきである。
○「中心となる象徴空間」の中で「東京駅八重洲口周辺の建物は高さや配置、形態
などに配慮する」とあるが、当該区域は中央区であり美観地区には含まれていない
ので、実効性が疑問である。中央区とJR東日本は、八重洲口側に高層建築物を開
発する計画を持っており、これが実行されると行幸通りからのビスタ景は大きく破
壊される恐れが大きい。これを防止するために、中央区と協議して東京駅八重洲口
周辺の一部区域(行幸通りからのビスタ景に影響を与える区域)を美観地区に含
め、東京駅の背後に高層建築物が見えないように、高さを規制すべきである。手法
例にあるような、駅舎と調和する材料・色彩を用いるだけでは不十分である。
 また、行幸通り沿線に高層建築物が林立すれば、高層建築物に東京駅が埋もれる
形になり、見るに耐えない。行幸通り沿線は、現状の建築物高を限度として、高さ
規制すべきである。
○「パノラマ的な景観」の手法例にある図は、建物をすべて高層化してスカイライ
ンを統一しようとする考え方が見受けられるが、容認できない。低い高さで統一を
図るべきである。
○現在、本地区のまちづくりは「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくりガイドラ
イン」に沿って進められているが、法的根拠がなく、住民参加も不十分なまま、都
・千代田区・大丸有地区再開発計画推進協議会・JR東日本の4者だけで策定して
おり、景観上は問題のある指針である。本ガイドプラン策定を機に、まちづくりガ
イドラインも景観の視点から評価・見直しをかける必要がある。

以上


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