2002年5月30日 川崎商工会議所

 

トラム導入に向けた法整備及び国会LRT研究会の動き

 

鈴木一夫(全国鉄道利用者会議)
             

一. トラム導入における各層の動き

市民団体/国会LRT研究会/行政・国交省/産業界

●市民団体(全国に約60団体。大きく4系統に分類:事業者と表裏一体/まちおこし団体/趣味系/理念学術系)
地域問題や特定分野に精通しているが、どの団体も全体像が見出せていない。
欧米の例を紹介した著作やビデオ等の力作は目にするが、一面を捉えたものがほとんどで、しかも、論調も欧米との比較論がほとんど。
政策立案という意味で、日本における導入 に向けた政策パッケージの動きや各市民団体の連携はない(例 トラム?路面電車?LRT?軽快電車?と呼称もバラバラ)
地方自治体のテキスト(マニュアル)にはならない。

→政策パッケージの作成(完成)が急がれる状況であり、市民団体のソフトを活用した まとめ役が必要。 

● 国会LRT研究会(戦略不足と熱意不足)

01年5月15日、8月、10月、12月、02年4月の五回開催。

座長は逢沢一郎(自民)、金田誠一(民主)、参加議員の選定は選挙区に路面電車の走行しているところ。参加議員は約40名(議員の関心を引き寄せることには成功したが、国会議員が小選挙区の枠を考えるからトラムができないのでは??)。しかも、次第に参加人数が減少し直近の第5回研究会は参加議員はわずか2名(代理出席の秘書は別)。
またトラム推進市民団体が毎回オブザーバーとして参加しておりこちらの方は熱心に参加している。
1〜5回まで市民団体との意見交換や鉄道文化人のスライド上映、環境面から分析できる効果、交通関係の学者の意見等を提起しているが多忙な議員を自発的に動かすまでには至らず。
運営側の戦略不足の指摘あり。
また、97年の京都議定書でCO2削減を国際公約にしたが、運輸部門は排出を増加させておりその具体策が見出せていないという追い風を生かしきれず。環境省、国交省との協議で環境側からの運輸行政への具体的な注文をさせない動きもある。環境市民団体への啓蒙活動も必要になる。

→議員秘書や発言力の有る議員をターゲットに根回しとリーダーシップを取るようにする活動と、政策パッケージの完成と事務局体制の強化が急務。

● 行政の動き・国土交通省の支援策(地域による温度差)
地下鉄の建設に関しては地下高速鉄道整備事業費補助が国35%地方35%で70%!
幹線鉄道等活性化事業費補助(高速化)は国20%、地方20%

一方 軌道(路面電車はまだまだ手薄)の補助は始まったばかり。しかも、予算は道路予算(旧建設省関連)。
1路面電車走行空間改築事業(道路整備特別会計1/2)
(路面電車の走行路面、路盤、停留所)
2年再生交通拠点整備事業(一般会計1/3)
(路面電車の停留所、シェルター、架線柱の整備)

沖縄県では中期県土整備計画で沖縄モノレール以外の軌道系のりものは作らないとの計画を作成し県議会に図った(琉球新報等は反発)。2020年までは軌道系は作らないと事実上宣言。国鉄導入(沖縄復帰後)を逃して以来沖縄県は鉄道政策に無策。

一方宇都宮市ではこれまで整備した環状道路に加え路面電車を敷設する宇都宮市「新交通システム導入基本方針」を策定。      
中身はLRTで、検討書のような位置づけであり、来年さらに採算性やルートの絞り込みを行い、市民啓発、合意形成をする都市も。地域や担当者による温度差が開く。地域の均衡ある発展にとってマイナス???

また現行法が法制度が車両や技術革新についていかず、トラム(路面電車)の普及阻害要因ともなる。
カタカナ法律の軌道法 例)最高速度40キロ制限、車両の30メートル規制等)の現存

→軌道の敷設されてある都市(岡山や広島)と同規模の軌道の無い都市での温度差は益々広がる傾向がある。岡山市では02年6月より新型低床車のMOMOを導入している一方で、主に東日本地区では首長や導入に前向きな担当者、団体頼みでというお粗末な現状で地域間格差は広まる傾向。

● 産業界(採算性の問題から参入に躊躇する状態)
市民層の期待とは裏腹に事業撤退の動きもでてきた。
2001年でアルナ工機工場閉鎖(トラム部門はかろうじて残る)。
鉄道車両メーカーでトラムの開発の動き見えず、また燃料電池車を開発した自動車メーカー各社もトラムへの技術転用の様子は見えない。
商社系も仏製タイヤトラムの輸入販売開始するが実績が無い状況であり、海外の営業活動とは裏腹に会合への参加や政策担当避暑や商工会議所等との勉強会にとどまっている。採算性の見極め段階。また、鉄道会社を設立しようという気運も皆無であり、環境の追い風や市民層の熱い議論と産業界では格差がある。
仮に全国の30万人都市の中核市でトラム導入すれば、1000億円以上の建設コストおよび渋滞緩和で2000億円以上の効果があり、単純計算では10兆円を超す経済効果を生み出すがこの「利権」がまだ注目されていない。

→道路特定財源確保と合わせてトラム促進に向けた予算の配分および建設促進を進める法制度を整備し、産業界の新規参入を促進する

二. 5年以内にトラム導入するに当たって整備すべき諸制度

1. 政策パッケージ
トラム事業の新規参入・促進そして自治体の導入意欲を汲み取る政策パッケージの作成は急務。特に、軌道事業を始めるに当たってのフローチャート図や補助金・助成金の拡充や手続きの簡略化また、地元警察らの交通関係行政の調整についての意見調整等の明確な指南書を作成する。そしてトラム建設のネックは低いものであるとの認識をこのパッケージが示す必要がある。
その際に解決すべき点として@市民合意(今回のトラムフォーラムで取り上げられた)、AJR線等近郊電車との相互乗り入れの制度化、B運賃収受方式と罰金、C他分野との意見調整(都市再生、環境、福祉、渋滞)、D自動車交通行政優先政策からの転換(道路利用)、E補助制度の更なる拡充 等がある。

2. 軽快鉄道法(LRT新法)
交通市民団体から提案されている新たな枠組み(法制度)

●交通基本法(民主党が既に骨子作成)
住民・利用者の意見に基づく、一貫した公共交通計画(ハード面、ソフト面)を策定し、実行に移し、実態を評価し、計画の見直しに反映できる仕組みを規定。公共交通による移動の権利(交通権)を明記。プログラム規定が中心。具体的な下部法律はなし。

● 軽快鉄道法(地方都市鉄道法)
独立採算を前提とする鉄道事業法を三大都市圏と地方の鉄道とに切り離し、軌道法や都市モノレール法を合体、これらの鉄軌道系の運営について、地方自治体(一応県レベルを想定)に認可権を与える。上下分離(あるいは上中下分離)を促進し、下(線路・駅設備)は自治体が保有、上(車両運行)を民間事業者に開放。上については、住民の合意の元に税金による運営や、ボランティア・NPOによる運行も認可できるようにする。普通鉄道構造規則や鉄道運転規則を代替する、地方に見合った検査基準も必要となる。
このメリットはJRに内部補填と言う形で担わせている地方ローカル線の経営に公的な助成を与えることでJRの投資を三大都市圏に集中させ合わせて都心部の混雑緩和と着席率向上を促す役目もあり都市圏住民にも説得しやすい。
また、軌道とJR線の連結と相互直通運転を促進させることで地方中核都市の都市内・都市間輸送にも鉄軌道で結び利用者の便を向上させる利点がある。

この他に「公共交通支援法」「地域交通監督官制度」も必要。

3. 鉄道ベンチャー企業設立促進
実際の運営に当たって、地元の交通事業者がその許認可の縄張りの関係から地元金融団や主たる企業のてこ入れを受けてトラム事業に参画することになることが考えられるが、運営専門の事業体を作ってしまうのも手である。
実際、公営の事業体の経営状況はどれも芳しいものではなく、また一番必要とされる事業意欲も見えてこないし、長年の許認可暮らしから補助金を当てにする仕組みに浸りきっている状況も散見される。ここはPFI(プライベートファイナンシャルイニチアチブ)方式を取り入れ資金調達を民間で行い合わせて事業主体として具体的に参画する方向が望ましい。
また経営体にとって1両2億程度する車両の購入の費用は重荷である以上、鉄道車両(トラム)のリース専門の会社を設立し、初期投資を抑える仕掛けも必要である。
とにかく日本に一箇所運行させ現物を走らせることが普及の鍵である。
実際に東京都江東区亀戸〜新木場間の越中島貨物線用地を活用したトラム化ではこのPFI方式により、運営されるかどうかがこの6月の江東区議会で審議されている。
また、一部市民団体では上記事項をもとにした鉄道ベンチャ企業の研究、事業計画案を策定する作業を行っている。

                   以上


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