運輸政策審議会鉄道部会 御中
運輸省鉄道局財務課 御中今後の鉄道整備のあり方に関する意見
1.鉄道整備の基本理念
鉄道は他の陸上交通網(特に自動車)に比べ、安全性、定時性、環境・エネル ギー、大量輸送能力等の点で優れている。特に安全性の高さは最大の利点であり、地 域交通・広域交通を問わず、陸上交通の根幹に位置づけるべき交通機関である。
これに加え、地域密着性やバリアフリーにも配慮していく必要がある。これらに逆 行するような鉄道整備は行わないようにしなければならない。具体的には、高速化は 安全性・定時性・環境に影響し、高架化は環境・バリアフリーに影響し、地方でのロ ングシート化は大量輸送能力・バリアフリーに影響する。
これまで鉄道整備は、総合開発や経済発展の起爆剤として位置づけられたり、他 の地域に遅れをとることを嫌う地方行政や、組織票集めの手段として利用する政治家 らの意向によって、地元住民をなおざりにしてかなり政治的に進められてきた。過去 の誤った鉄道整備の進め方は一掃し、今後は地元住民と共に必要性を十分検討した上 で、住民合意を得て、安全で地域に密着したものを整備していく必要がある。2.ハード面の鉄道ネットワーク方策について
2.1 高速交通網整備
整備新幹線は、自然破壊や騒音・エネルギーなどの環境問題の他、建設財源や並 行在来線の経営分離問題も抱えているため、今後の計画はすべて中止すべきである。 特に整備新幹線の場合は沿線の大規模開発プロジェクトと連動して進められることが 問題であり、東北新幹線盛岡−青森間のように核燃サイクル施設建設の取引材料にさ れているような現実もある。また、リニア中央エクスプレス構想も、電磁波問題や膨 大なエネルギー浪費、クエンチ現象など、解決困難なリニアモーターカー特有の問題 があるため、構想は撤回し、山梨での実験は即時中止すべきである。
今後は在来線を可能な限り生かすことを前提とし、以下のような方策を重点的に 進め、ソフト施策と組み合わせて高速交通体系を構築していくべきである。・軌道強化、線形改良、カント引き上げ、架線改良、通過駅ホームへの防護柵設 置、駅と離れた場所での踏切解消など、在来線の高規格化
・フル規格新幹線車両が直接乗り入れられるような在来線の大幅改良
・新幹線への在来線駅併設(新幹線工事が進んでいる区間)
・新幹線と在来線特急の同一ホームでの乗り換えを実現
・在来線特急のターミナルの多元化2.2 大都市圏(東京圏)の鉄道整備
東京都心部の地下鉄の整備は飽和に達している。区部周辺部や区部近郊には鉄道 不便地域が存在するものの、不便だからこそ業務商業機能が立地せず、良好な住宅地 が維持されている場合が多い。そこに放射方向・環状方向の鉄道を整備すれば、業務 商業地の膨張や住宅地の外延化を招き、都市域の膨張、郊外での環境破壊、通勤の遠 距離化に拍車をかける。基本的に地下鉄などの広域鉄道はこれ以上整備すべきではな く、鉄道不便地域はLRTやミニバスなど、住民により身近な交通機関の導入を図っ ていくべきである。また、幾つかの区で実施されている、都市型レンタサイクルのよ うな自転車を準公共交通手段として利用する施策を組み合わせることも有効である。
通勤混雑については、鉄道整備や輸送力増強で対応するのは限界に来ている。業 務核都市や都心開発、郊外でのニュータウン開発など、職住近接に逆行し、都心への 業務機能集中や住宅の外延化を促進してきた、国土計画や都市計画の方を転換せねば ならない。そのためにも、都心に業務ビルを集中させることは避けなければならず、 都心の環境浄化と都心居住の推進の両立を図る施策が必要である。2.3 地方圏の鉄道整備
「地方圏の住民の足」は本来、最も整備の必要性がある所だが、鉄道が民間会社 による独立採算経営をとっている以上、新規整備はおろか、廃線の方向へ向かってい る。地方圏の鉄道やバスが不便で利用しずらいのに対し、採算を度外視して建設され た道路は渋滞することもなく快適に利用できるのだから、住民の足は当然道路(マイ カー)にシフトする。これを解決するには、予算体系や経営形態を根本的に変え、赤 字を前提として鉄道を経営できるようにせねばならない。
当面は、多少とも採算のとれる地方都市を中心に、LRTやガイドウェイバスの 導入を図り、パーク&ライドを進めるなどして、住民に利用してもらう施策が必要で ある。また、地方圏の公共交通機関の情報は地元に行かないと入手が困難で、住民以 外の観光客やビジネス客の利用が困難な状態になっている。鉄道・バスの路線図や乗 り場案内、時刻表を書籍やインターネット等で積極的に公開し、外来客にも利用して もらうことが必要である。2.4 駅や諸施設の整備
現在都市域の各地で、立体交差化が進められている。但し高架方式は、騒音の被 害が広範囲に及ぶことや、地震に対して弱いことなど様々な問題があり、一部の路線 では高架化に対する反対運動が起きている。立体化は地盤条件の許す限り地下を基本 とし、鉄道の地下化だけでなく、道路を地下化することで立体化することも選択肢に 入れるべきである。
駅は、乗り換えの利便を十分考慮することが必要である。現在は一般に、新幹線 と在来線、会社間、鉄道とバスの乗り換えが不便になっている。同一ホームで乗り換 えできる構造にすることや、中間改札の廃止、鉄道駅の標高を地上レベルに近づけて バスターミナルに隣接させるような整備が必要である。案内標識は、他社線について も自社線と同じようにわかりやすく案内することが必要である。3.ソフト面の鉄道ネットワーク方策について
3.1 ダイヤ編成と車両設備
在来線特急については、隣接区間を走る列車のロングラン化や、極端に停車駅を 減らした速達列車の設定がもっと必要である。新幹線・特急では、禁煙車が喫煙車よ り少ない編成となっている列車も多く、禁煙車が混雑しやすい状況である。普通列車 と同様に原則禁煙とし、例外的に喫煙車両を設けるようにすべきである。
JRの都市近郊路線については、特に地方都市近郊において快速列車をもっと設 定することが必要である。また、東京近郊では京阪神近郊・名古屋近郊と同程度の快 速・新快速ネットワークの確立を望む。これらの路線は長時間乗車する利用者が多い ため、座席をロングシート化することは避け、全員着席を原則として着席率の増加に 努めるべきである。とりわけ寒冷地域で仕切なしのロングシート車を導入していると ころはすぐに改め、今後も導入すべきでない。
大都市内の通勤線については、JR以外の鉄道やバスの終電を遅くしたり、大混 雑する金曜深夜に列車を増発するなど、終電に関するダイヤ編成の見直しが必要であ る。また、朝のラッシュ時のノロノロ運転を解消する必要がある。
ローカル線については、会社側が一方的にダイヤを決めるのではなく、住民の要 望を把握し、住民の求める時間に列車を走らせ、少しでも乗客を増やすようなダイヤ 編成とすることが必要である。こちらもロングシート化することは無意味である。
夜行列車については、ターミナルの発着時刻に問題が多い。原則として、出発は 18時〜23時の間、到着は6時〜10時の間ぐらいとし、0時前後の遅い出発や4時台の早 い到着は解消していく必要がある。また、最近は夜行バス網が充実しており、寝台車 しか運行していない区間では安さを求める利用者が夜行バスにシフトしている。しか し睡眠快適性では列車の方が上であり、リクライニングシートやノビノビ座席を併設 すれば、利用者は確実に夜行バスからシフトする。夜行列車は寝台車だけの編成とす るのではなく、座席車を併設して安さを求める利用者に応えることが必要である。3.2 運賃・料金について
近距離の運賃・料金では、会社間にまたがる場合に別々に運賃を計算して合算す るやり方を改め、会社に関係なく利用距離に応じて運賃を計算するような統一化され た体系が必要である。また、バスと鉄道、バス同士を乗り継いだ場合の割引制度も必 要である。
遠距離の運賃・料金では、主に企画切符の見直しが必要である。
・新幹線・特急往復割引切符は、JRの営業戦略上一部の区間にしか設定されてい ないが、かつてのQきっぷのように主要幹線全線に拡大することを望む。
・周遊券を廃止して導入した周遊きっぷは、周遊ゾーンの広さにかかわらず有効期 間が5日しかないことや、複数ゾーンを組み合わせて利用できないなどの問題点があ り、周遊券に対応するゾーンを比較すると周遊券よりも確実に値段が高くなってい る。有効期間の拡大や複数ゾーンの組み合わせを可能とするなどの見直しが必要であ る。
・レール&レンタカーきっぷは、旅先で列車を利用せずにレンタカーを利用するも のであり、ローカル線を外来客に利用させない企画切符である。これがレンタカー料 金・鉄道運賃だけでなく、特急料金まで割引になるのは優遇しすぎではないか。特急 料金を割り引くなら、周遊きっぷでこそ割り引くべきである。
・ナイスミディパス、フルムーン夫婦グリーンパスのような、性で利用を制限する 企画切符は廃止し、男女関係なく利用できるようにすべきである。特にフルムーン夫 婦グリーンパスは、夫婦でないと利用できないところに大きな問題がある。4.鉄道整備の進め方に関する方策
4.1 予算体系
道路が際限なく整備されていくのは、道路特定財源があることによる。これの一 部を鉄道整備や国鉄の長期債務返済に充当し、道路予算を削るべきである。また、鉄 道整備基金は新線の整備に使われるが、既存路線の改良は各鉄道会社の自己投資で行 われている。今後は鉄道整備基金を既存路線の改良やローカル線の経営資金に振り向 けるべきである。国家予算は整備新幹線に投資するのではなく、既存路線の改良や ローカル線の経営にこそ投資すべきである。4.2 住民・利用者の計画策定への参加
鉄道整備の基本計画、実施計画はこれまで、大部分は政府主導で政治的に策定さ れ、予算が配分されてきた。委員会や審議会で見直しを行うも、ヒアリングの対象は 地方自治体やJRの経営陣、経済団体といったところのみであった。今後は、運輸省 ・地方自治体・住民・利用者・鉄道会社経営者・労働者が同じテーブルについて議論 を進め、住民・利用者主導で計画を策定していくことが必要である。河川法改正によ り、河川整備計画に住民意見を反映させる議論の場が建設省によって試みられている が、それらを参考にすることも考えられる。======================================
清水孝彰
(東京都北区・全国鉄道利用者会議会員)======================================
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運輸政策審議会地域交通部会 御中
運輸省運輸政策局地域計画課 御中東京圏の鉄道網整備計画に関する意見
1.東京圏の鉄道網整備に関する基本的考え方
東京都心部の地下鉄の整備は飽和に達している。区部周辺部や区部近郊には鉄道 不便地域が存在するものの、不便だからこそ業務商業機能が立地せず、良好な住宅地 が維持されている場合が多い。そこに放射方向・環状方向の鉄道を整備すれば、業務 商業地の膨張や住宅地の外延化を招き、都市域の膨張、郊外での環境破壊、通勤の遠 距離化に拍車をかける。
東京都の広域鉄道施策は、これらの鉄道不便地域を解消することで、業務商業地 を拡大し、副都心や業務核都市を育成する方向で進んでおり、その結果が住民不在の まま先の問題を引き起こしつつある。昨年6月に都の「広域交通ネットワーク検討委 員会」が報告書を出したが、この中で、「交通サービス改善および都市政策両面の視 点を有する路線」は“必要性大”としている。しかし、この都市政策とは大体次の2 点のどちらかで、問題がある。@路線敷設により、沿線地域の開発ポテンシャルを高め、再開発等の事業費を得や すくすると同時に、容積率緩和・建物の高層化などを一気に進める。
A鉄道の立体化により、交差する幹線道路(都市計画道路)の新規整備を進める。
基本的に区部とその近郊には地下鉄などの広域鉄道はこれ以上整備すべきではな く、鉄道不便地域はLRTやミニバスなど、住民により身近な交通機関の導入を図っ ていくべきである。また、幾つかの区で実施されている、都市型レンタサイクルのよ うな自転車を準公共交通手段として利用する施策を組み合わせることも有効である。
通勤混雑については、鉄道整備や輸送力増強で対応するのは限界に来ている。業 務核都市や都心開発、郊外でのニュータウン開発など、職住近接に逆行し、都心への 業務機能集中や住宅の外延化を促進してきた、国土計画や都市計画の方を転換せねば ならない。そのためにも、都心に業務ビルを集中させることは避けなければならず、 都心の環境浄化と都心居住の推進の両立を図る施策が必要である。2.複々線化や駅整備、連続立体交差事業について
小田急線・中央線・西武池袋線などの複々線化事業は、高架による連続立体交差 事業となっている。これらは複々線化による輸送力アップよりも、立体化によって鉄 道のスピードアップと道路交通の円滑化を図る目的の方が重視されている。
この他にも、複々線化や駅整備のための連続立体交差事業が各地で進められてい るが、高架方式には下表のような問題がある。特に小田急線東北沢−梅ヶ丘間の高架 化は、地元に強い反対運動(地下化を求める運動)があり、工事も難工事となること から、進捗していない。立体化は地盤条件の許す限り地下を基本とし、鉄道の地下化 だけでなく、道路を地下化することで立体化することも選択肢に入れるべきである。
駅は、乗り換えの利便を十分考慮することが必要である。現在は一般に、新幹線 と在来線、会社間、鉄道とバスの乗り換えが不便になっている。同一ホームで乗り換 えできる構造にすることや、中間改札の廃止、鉄道駅の標高を地上レベルに近づけて バスターミナルに隣接させるような整備が必要である。案内標識は、他社線について も自社線と同じようにわかりやすく案内することが必要である。
立体化の手法とメリット・デメリット メリット デメリット 高架 高架下空間の利用(自由度低い) 高架下利用は自由でなく、地域分断の根本的解消にならない。 地震に弱く、復旧が困難。騒音・振動が大きく、広範囲に影響。 施設利用が不便(バリアフリーに逆行)。 コンクリート調達(採石)の問題。日照・通風の変化。 地平 施設利用が容易(バリアフリー)。震災時の延焼遮断帯や避難経路になる。復旧が容易。 地域分断、交通渋滞の発生源。沿線隣接部の騒音・振動が大きい。交通事故が発生し易い。 地下 一般的に地震・気象災害に強い。騒音・振動がほとんどどない。地下空間の利用(自由度が高い)。 災害により万一被害が生じると、復旧が極めて困難。施設利用が不便(バリアフリーに逆行)。 残土処理の問題。地盤強固剤の問題。 3.具体的な整備計画について
@区部周辺部環状交通(メトロセブン・エイトライナー)
この路線は都市政策上、放射方向路線との交通結節点を「地域拠点」として位置 付け、拠点整備を進めるものと位置づけられている。とりわけ赤羽については、都の 「業務商業施設マスタープラン」では、副都心の機能を分担し、副都心並の業務機能 を立地させる方向を打ち出している。赤羽が副都心に近づくということは、その周辺 や、より都心に近い十条・王子等も含め、浮間方面を除く北区全体が“人の住めない 街”と化すことを意味する。
放射方向の混雑緩和効果はほとんどない。放射方向との結節点付近では、現在よ りも放射方向の混雑は激しくなり、逆効果である。北区の場合は、京浜東北線川口− 赤羽間などは今よりも混雑が激しくなる。
環七・環八の自動車交通量を減らし、この鉄道にシフトするという発想ならば賛 成できるのだが、都は環状方向の幹線道路整備も積極的に行うことを表明している。
このような路線ならば、整備の必要はない。A埼京線大崎延伸
埼京線を臨海副都心線に乗り入れ、臨海副都心の整備を促進するために計画され ているが、臨海副都心開発計画はバブル時代に作られたもので、現在はそれが失敗し 空き地・空き間が広がっている。臨海副都心開発は早期に断念し、この路線の他、臨 海副都心に関わる鉄道整備計画は中止すべきである。4.ダイヤ編成について
京阪神近郊・名古屋近郊のJR各線では、競合路線の影響を受け、快速・新快速 のアーバンネットワークが充実している。それに対し東京近郊のJR線は、快速が1 時間に1便あるかないかで、近郊路線が貧弱な状態であるため、京阪神や名古屋と同 程度の快速・新快速ネットワークの確立を望む。
大都市内の通勤線については、JR以外の鉄道やバスの終電を遅くしたり、大混 雑する金曜深夜に列車を増発するなど、終電に関するダイヤ編成の見直しが必要であ る。また、朝のラッシュ時のノロノロ運転を解消する必要がある。5.運賃体系について
鉄道運賃は、会社間にまたがる場合に別々に運賃を計算して合算するやり方を改 め、会社に関係なく利用距離に応じて運賃を計算するような統一化された体系が必要 である。また、バスと鉄道、バス同士を乗り継いだ場合の割引制度も必要である。
6.住民・利用者の計画策定への参加
鉄道整備の基本計画、実施計画はこれまで、大部分は政府主導で政治的に策定さ れ、予算が配分されてきた。委員会や審議会で検討を行うも、ヒアリングの対象は都 やJRの経営陣、経済団体といったところのみであった。今後は、運輸省・東京都・ 住民・利用者・鉄道会社経営者・労働者が同じテーブルについて議論を進め、住民・ 利用者主導で計画を策定していくことが必要である。河川法改正により、河川整備計 画に住民意見を反映させる議論の場が建設省によって試みられているが、それらを参 考にすることも考えられる。
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清水孝彰
(全国鉄道利用者会議会員)======================================
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