周遊きっぷの廃止・縮小に対する声明

 

 この度9月末日付けで、多数の周遊きっぷの廃止、また、ゾーンの縮小が行われた。本件について、JRグループ各社のプレスリリースによれば、「需要が少ない」ことが主たる理由とされている。
 だが、「需要が少ない」状況に陥ったのは、1998年3月末日に利用勝手の良い周遊券を全廃し、周遊きっぷに切り替えたことに起因している。
 本会では、周遊券大改訂が行われた翌4月に「周遊券大改訂でどうなる鉄道の旅」シンポジウムを開催し、告知不十分のまま突如として強行された周遊券大改訂に抗議し、鉄道離れの加速につながりかねない問題点に警告を発すると共に、周遊きっぷの利用条件の改善に向けた提案等を討議した。シンポジウムで出された改善に向けての主な意見は、複数ゾーン券を組み合わせた利用を可能にすること、ゾーン券の有効期間を長くすること等であり、本会以外からも、多くの利用者から同様の意見が寄せられていた。にもかかわらず、事業者はこれらの意見を採り入れることなく、周遊きっぷの利用条件は一向に改善されなかった。
 JR東日本の「おとくなきっぷ 使いやすく&わかりやすく計画」に象徴される昨今の企画切符見直しの方向性は、「往復/回数利用型」切符の充実と「ゾーン周遊型」切符の縮小であるように見える。また、レール&レンタカーきっぷやレンタカー利用のパックツアーの充実、航空運賃自由化による価格破壊などは、旅先での移動手段を鉄道(ローカル線)から自動車(レンタカー)にシフトする大きな要因ともなっている。
 今回の周遊きっぷの廃止・縮小により、いわゆるノーマルチケット(普通運賃・料金)での乗車しかできない線区が生じたことは、旅行者が旅先を鉄道で周遊する意欲を削ぎ、上記の鉄道離れの加速にも拍車をかけることになろう。この方向性を放置すれば、いずれは周遊きっぷの大幅廃止、ゆくゆくは、住民の生活路線であるローカル線そのものの廃止にもつながっていくことが危惧される。
 鉄道利用者の利便を保護し、かつ、ローカル線の旅行者利用の促進を図るため、本会は以下の2点を強く求めるものである。

1.ローカル線の利用促進効果のある「ゾーン周遊型」切符を充実化し、適正なゾーン・価格・有効期間で提供されるよう、鉄道事業者は利用者と共に取り組んでいくこと。
2.企画切符の改廃に当たって、事前に利用者の意見を聴取しそれを反映する仕組みの構築と、それに必要な周知期間を確保すること。

 以上、声明する。

2002年10月14日   全国鉄道利用者会議


(注)
1)周遊きっぷ
 全国各地に周遊ゾーンが設定されており、「ゆき券(出発駅→ゾーン入口)」「ゾーン券」「かえり券(ゾーン出口→帰着(出発)駅)」の3部構成。「ゆき券」「かえり券」は普通運賃の2割引となる(特急料金は割引なし)。「ゾーン券」はゾーン毎に価格が定められており、有効期間は一律5日間。

2)周遊券
 あらかじめ計画を立てオーダーメイドで作成する「一般周遊券」と、全国各地の周遊ゾーンと往復がすべてセットされた「均一周遊券」の2種があり、この声明では主に後者を意味している。「均一周遊券」はゾーン毎に出発駅(発売駅)が限定されているが、ゾーンの広さに幅があり、有効期間も最長20日間と幅広い。出発駅−ゾーン間の往復に急行の自由席が急行券なしで利用できる。1998年3月末に全廃。

3)レール&レンタカーきっぷ
 JR子会社の「駅レンタカー」とJR線(通算201km以上)を連続利用し、切符とレンタカー券を同時購入すると、レンタカー同乗者全員のJR線の運賃が2割引、特急料金が1割引になる。有効期間はノーマルチケットに準ずる。

4)企画切符
 いわゆる「おとくなきっぷ」「トクトクきっぷ」等と呼ばれる類で、正式には「特殊企画乗車券」という。

(清水孝彰/全国鉄道利用者会議・政策担当)


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