社会資本整備重点計画の素案に対する意見の募集について(国土交通省サイト)

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2003年8月15日

国土交通省総合政策局政策課 パブリックコメント担当 御中

 

社会資本整備重点計画の素案に対する意見

 

全国鉄道利用者会議
代表 武田 泉

 

第1章 社会資本整備の重点的、効果的かつ効率的な実施
(1)事業評価の厳格な実施
【意見】
 評価は国土交通省による自己評価のみならず、住民を含めた第三者機関により実 施すべきである。「住民」には社会資本を完成後に利用する利用者や、社会資本に 関わる専門性を有するNPOを含めて頂きたい。
【理由】
 既往の事業評価の大部分は自己評価であるが、第三者機関による評価の方が内容 の公平性を保持できる。納税者としての住民、実際の利用者等は社会資本整備の 「顧客」であるため、評価は顧客の視点からも行われることが必要である。

(2)技術開発等を通じたコストの縮減・事業の迅速化
【意見】
 住民参加・合意形成や、初期段階での環境影響評価には十分なコスト(時間)を かけるべきである。コスト縮減・事業の迅速化を、住民参加手続きや環境影響評価 の迅速化によって実現しようとするならば、地域コミュニティの破壊や環境破壊な どの悪影響を残しかねない。素案に記述のある「土地収用法の積極的な活用」によ り、住民が合意しないまま土地を強制収用するべきでない。
【理由】
 土地収用法や東京都環境影響評価条例など、「迅速化」を理由に住民参加の簡略 化を図る法令の改正は、住民の権利を不当に制限するものと言わざるを得ない。計 画の早期段階から住民参加を図ることが、結果的には事業をスムーズに進めること につながり、本来の「迅速化」と円満解決を両立する条件である。

(4)事業相互間の連携の確保
【意見】
 土地改良長期計画をはじめ、農村基本計画、森林計画、自然公園計画など様々な 他省庁の公共事業計画とは、事業実施段階ではなく、構想段階から連携の可能性を 検討して頂きたい。
【理由】
 例えば交通関係事業の場合、他省庁の公共事業がどのように計画されているかを 事前に把握し、連携を図れるように計画することが不可欠である。事業実施段階に おける連携では段階が遅すぎるため、今回の「社会資本整備重点計画」策定の今か ら連携を図ることが必要である。

(5)既存の社会資本の有効活用、ソフト施策との組合せ
【意見】
 素案に「既存の社会資本の有効活用を推進するとともに、ハード施策とソフト施 策を組み合わせることによって、効果的かつ効率的な施策を展開」と記述されたこ とは大いに評価するものであり、積極的推進を図られたい。
【理由】
 従来は既存の社会資本の有効利活用よりも、新たな社会資本の整備が優先される 仕組みとなっていた。また、ハードが存在しても、ハードを有効活用するソフト施 策が軽視される傾向にあった。これらを転換する姿勢は大いに評価するものであ る。例えば冬期交通など各種気象災害対策は、ソフトの活用によってハード整備の 縮減を図ることができる。

(8)社会資本整備における新たな国と地方の関係の構築
【意見】
 地方ブロック(地方支分部局)別の整備の視点を重要視し、全国一律というより は地方ブロックごとに計画を策定し、地方側の意見が重視される計画として頂きた い。指標や事業内容については、本素案をたたき台として、地方支分部局毎に住民 ・専門家等と議論して決定しするプロセスを踏むよう提案する。また、財源につい て「地方が主体性をもって地域づくりができるよう、国庫補助負担金について地方 の裁量性を高める方向で改革を推進」との記述があるが、国土交通省所管の公共事 業のみならず、鉄道等のいわゆる「公益事業」への投入も可能とするところまで裁 量性を高めることが必要である。
【理由】
 具体的な社会資本の整備は、地域住民に利用されるものを整備する必要があり、 逆に地域が必要としない社会資本を整備することはあってはならない。国が全国一 律で指標や事業内容を定めるのではなく、地域特性に合致した指標や事業内容を地 域自らが決定し、推進する仕組みこそ必要であり、本素案は詳細を地域で決めるた めの素案(たたき台)程度とするのがよい。但し財源については、使途は地域に任 せ、負担は国が行う仕組みが必要であり、国庫補助負担金について地方の裁量性を 高める方向で改革を推進することは不可欠である。なお鉄道の場合は、道路や航空 等と同じ「交通インフラ」であるため、社会資本の一部とみなして投入を可能とす ることが必要である。

第2章 社会資本整備事業の実施に関する重点目標及びその達成のため効果的かつ 効率的に実施すべき社会資本整備事業の概要

〜暮らし〜
(1)少子・高齢社会に対応したバリアフリー社会の形成等
【意見】
 本事業の目的は単なる段差解消や点字ブロック整備ではないため、素案の指標は 全く不適切である。交通バリアフリー法に基づく基本構想の策定率、基本構想に定 められた計画の進捗率等を指標とするよう提案する。国としての事業は基本構想の 策定推進と、計画された事業への支援とし、具体的な事業は地域に任せて頂きた い。
【理由】
 1日平均利用者数が5000人以上の旅客施設及び周辺地区では交通バリアフリー法 に基づく基本構想を策定し、事業を実施することとされている。基本構想に基づき 事業を実施することで、すべての利用者が円滑に移動できるようにすることが事業 の目的である。また、この枠組みを利用することにより、利用者を含む関係者の参 画を図ることができる利点がある。

〜安全〜
(1)水害等の災害に強い国土づくり
【意見】
 雪寒対策は道路だけでなく、鉄道や航空においても必要である。また、常時確保 される必要のない交通については、観測・予測情報を用いた交通規制などソフト対 策で進めるよう提案する。
【理由】
 雪寒対策についても、ハードとソフトの組み合わせが必要であり、最近は以前よ りも観測・予測情報が充実してきたため、ソフト施策を重点化していくことが望ま れる。

(2)大規模な地震、火災に強い国土づくり等
【意見】
@指標のうち「多数の者が利用する一定の建築物及び住宅の耐震化率」には、公共 交通インフラを含めることが必要である。また「港湾による緊急物資供給可能人 口」は港湾だけでなく、河川・水路の防災船着場を含めるよう提案する。
A被災地の迂回ルートの確保に関する指標や事業が全く計画されていないが、鉄道 で現在はローカル線であっても災害時に迂回ルートを構成可能な路線の場合は、国 が一定の関与をして迂回ルートを確保できるように計画立案すべきである。
【理由】
@公共交通インフラ、特に鉄道の耐震性向上は、被災時の救援ルートになるばかり でなく、延焼遮断帯としても機能する。また、緊急物資の供給を防災船着場で行う との理由で、河川・水路に次々と防災船着場が建設されているので、これは指標に 入れるべきであろう。
A被災地の迂回ルートの確保については、阪神大震災の時にJR播但線−山陰本線 経由による迂回ルートが機能した経験がある。マイカーであれば自力で迂回可能で あるが、公共交通の迂回ルートについては国の関与が必要であり、そのための事業 が不可欠である。

(3)総合的な交通安全対策及び危機管理の強化
【意見】
 後出「地球温暖化の防止」と同様、公共交通機関の利用促進、モーダルシフトに よって、危険性の高い自動車から安全性の高い鉄道や舟運への輸送に切り替える事 業が必要である。
【理由】
 安全性向上には通過交通排除が必要であるとして、バイパス・環状道路の整備の 口実に使われる例が多いが、新たな道路を建設して新たな自動車需要を引き起こし てしまっては、問題解決にならない。自動車交通量そのものを削減すべき指標とし てしまうことが最も良い。

〜環境〜
(1)地球温暖化の防止
(2)都市の大気汚染及び騒音等に係る生活環境の改善
【意見】
 自動車交通量そのものの削減量を指標とするよう提案する。事業の1つにある公 共交通機関の利用促進、モーダルシフトを具体的かつ積極的に進め、自動車交通量 そのものの削減を進めるようにして頂きたい。モーダルシフトは鉄道と海運の他、 河川舟運も対象に含めることを提案する。
【理由】
 CO2排出削減には自動車の渋滞解消が必要であるとして、バイパス・環状道路の 整備の口実に使われる例が多いが、新たな道路を建設して新たな自動車需要を引き 起こしてしまっては、問題解決にならない。自動車交通量そのものを削減すべき指 標としてしまうことが最も良い。

(4)良好な自然環境の保全・再生・創出
【意見】
@失われた水辺・湿地・干潟の再生に関する指標、事業だけでは全く不十分であ る。再生・創出の前に保全・回避こそ必要である。特に、国土交通省所管の公共事 業のうち、良好な自然環境下で行われることの多い、山岳道路、山岳・海底トンネ ル、海洋空港(埋立)、港湾、ダム、堰、低水護岸、砂防堰堤、防潮堤、人工海浜 については、回避(実施しないで済むか)を第一に検討し、実施が必要な場合でも 実効性のある環境影響評価を行い、自然環境への影響を最小限にくい止める方策 (地点の変更や規模縮小等)を検討することが必要である。また道路等の施設の工 事の際の地形改変を面積的にも極力軽減するように、交通モードの選択(道路か鉄 道か、及びその断面の検討)を検討できるように改めるべきである。
A自然公園事業(環境省)や林野事業(農林水産省)との計画段階からの連携が必 要である。指標はむしろこれらの計画の中で定めることが有効である。さらには自 然地域内外での自然保護目的のTDMも、従来型の単なる適正化要綱によるマイカー 規制にとどまることのないよう、総合的対策を樹立すべきである。
【理由】
@国土交通省の公共事業がこれまで、良好な自然環境を次々と破壊してきたこと、 その原因の1つに整備量を目標とした従来の5ヶ年計画が存在していたことをわき まえるべきである。公共事業の必要性を住民と共に評価し、無駄な事業を中止・縮 小することが「良好な自然環境の保全・再生・創出」の基本事項である。
A本素案は「社会資本整備」のための指標を定めるが、「良好な自然環境の保全・ 再生・創出」のためには無駄な社会資本を整備しないことが基本である以上、従来 にも増して整備のみならず規制的な指標が主とならざるを得ない。例えば自然環境 保全地域や国立(国定)公園特別保護地区の面積拡大などが指標として考えられ、 これらは環境省の計画の中に定めるべき指標である。

〜活力〜
(1)国際的な水準の交通サービスの確保等及び国際競争力と魅力の向上
【意見】
@新東京国際空港、関西国際空港、中部国際空港の整備は行政主導で一方的に推進 すべきではない。新東京国際空港、関西国際空港の拡張計画は今からでも中止すべ きである。国際空港の整備、とりわけ国内にハブ空港を整備するかどうかについ て、地元自治体の推進意見だけを汲み取るのではなく、広範に国民から意見を聴取 してから計画を再検討することを求めたい。
A成田高速鉄道は、途中の印旛沼付近の環境影響が問題となるため、ルートを変更 して頂きたい。交通政策審議会で方向付けされた在来線であっても、大規模な新線 鉄道である場合、ルートや駅の配置について様々な代替案を検討すべきである。
B三大都市圏環状道路の整備は中止すべきである。
【理由】
@新東京国際空港の整備は周辺農地・集落への影響、関西国際空港・中部国際空港 の整備は海洋埋め立てによる環境破壊が問題となっており、国民の反対の声も大き い。アジア地域へ国際航空路発着を地方空港に振り分けることで、新東京国際空 港、関西国際空港の容量を確保することができるので、拡張は必要ない。
A印旛沼付近は、鳥類への影響が環境アセスメントで問題となっている。印旛沼を 避ければ問題はないため、対策としてはルート変更が妥当である。
B前出の通り、新たな道路を建設して新たな自動車需要を引き起こしては、問題解 決にならない。自動車交通量そのものを削減することが必要である。また、環状道 路の整備により大都市圏の環状都市構造を誘導し、産業・経済の膨張を促すという バブル時代型の政策は、もはや改める必要がある。

(2)国内幹線交通モビリティの向上
【意見】
@指標として、航空サービスと貨物船舶輸送コストだけでは不十分である。旅客・ 貨物(対象2種類)、鉄道・航空・船舶(モード3種類)、定時性・コスト・利便 性(サービス3種類;安全と環境は前出のため除く)を合わせて、18種類の指標 をつくることが可能である。
A大都市圏拠点空港の容量拡大整備は不要である。前出の国際空港の他、羽田空港 (東京国際空港)拡張や福岡空港移転拡張整備計画は中止すべきである。
B船舶は海運と河川舟運の一体化による内陸運搬と、港湾・船着場と鉄道貨物駅の 一体整備による鉄道とのネットワーク化を図ることを提案する。
C四全総で策定された高規格道路(高規格幹線道路・地域高規格道路)網計画はそ れ自体が道路を著しく偏重した構想と言わざるを得ず、全てを建設することはもは や不要である。高規格道路の整備で生活環境の改善は図れない。自動車交通量その ものを減らすことが必要であり、計画の中止も含めその必要性を抜本的に再検討す べきである。
D鉄道については新幹線一辺倒ではなく、既存のネットワークを極力維持・活用・ 連携・再構成するように最大限努力するように強く提案する。とりわけ在来線の長 距離ネットワークを維持し、長距離列車・夜行列車・貨物列車へのシフトを促進す ること、特に旅客についてはJR通算運賃制度の積極的活用や各種料金体系の改善、 特別企画乗車券(企画きっぷ)の充実化など、価格破壊しつつある航空運賃や、賃 率ベースの安い高速バスに対する運賃面での競争力確保(ソフト対策)を進めるよ う提案する。
【理由】
@旅客・貨物の利用者の立場で、各交通モードを比較しながら適切に評価できるよ う、わかりやすい指標を設定する必要がある。
A前出の通り、周辺農地・集落への影響、海洋埋め立てによる環境破壊が問題であ る。以下の2つのソフト対策で、容量の確保は可能である。
1.近〜中距離路線(東京−東北・北陸、大阪−九州等の地方路線及び東京−大阪 便、500〜800km圏内)の需要を鉄道にシフトする。
2.アジア地域への国際航空路の発着を地方空港に振り分け地方空港振興に寄与させ る。
B船舶を港湾で道路とのみと連携させるのではなく、道路以外の内陸運搬手段と連 携させることがより完全なモーダルシフトへとつながる。現在河川法の制約など で、河川舟運が十分に使われていないため、まず河川舟運との一本化を図ることを 提案する。河川を横断する鉄道は全国に数多く存在するため、河川舟運の充実化に よって鉄道との連携も一層進めやすくなることが期待される。
C前出の通り、新たな道路を建設して新たな自動車需要を引き起こしては、抜本的 な問題解決にならない。高速道路の安全性については、事故発生率は小さいものの ひとたび発生する事故は大規模であり、特に雪寒地域の冬季の高速道路は極めて危 険である。
D航空旅客輸送や自動車貨物輸送を、より安全で環境負荷の少ない鉄道へと代替す る可能性を積極的に検討することが必要であり、その可能性を持つのは新幹線より も夜行列車・貨物列車の方である。特に旅客については、価格により航空機や高速 バスに利用者がシフトする傾向があるため、各種割引制度(企画きっぷ等)による 鉄道側の価格競争力の確保が不可欠である。

(3)都市交通の快適性、利便性の向上
【意見】
@道路の渋滞解消は自動車の円滑な走行を主目的とするバイパス・環状道路・都市 計画道路の整備ではなく、TDM施策やモーダルシフトにより自動車交通量そのもの の削減を行うべきである。
A公共交通の利便性向上の事業は「都市鉄道・新交通・モノレールの整備」「自由 通路・駅前広場の整備」「バスロケーションシステムの整備」といった従来型の都 市計画事業の枠組みのみならず、以下の事業を含めることを提案する。
1.既設都市鉄道の接続路線整備による直通化、事業者間の対面乗り換えの促進、共 通運賃化
2.LRT(路面電車)の整備促進、軌道敷の街路事業(特殊街路認定)による確保、 郊外鉄道から路面電車への直通乗り入れ
3.乗換駅における異なる事業者間、同一事業者間の抜本的シームレス化、バリアフ リー化
4.駅を拠点とした徒歩・自転車道のネットワーク、駐輪場整備やレンタサイクルシ ステム導入
5.郊外駅での公共交通への乗換えダイヤの確保、パーク&ライド、サイクル&ライ ドの推進など
【理由】
@前出の通り、新たな道路を建設して新たな自動車需要を引き起こしては、問題解 決にならない。
A本素案に記述されている事業は従前通りのものでしかない。都市の公共交通は、 徒歩・自転車・バスはもちろんのこと、LRT(路面電車)を見直すことが各地で求 められている。現在の政策や補助制度が原因で、地下鉄や都市高速鉄道が過剰に整 備される傾向をLRTにシフトするには、LRTの導入をしやすくする制度・財源が必要 である。

(4)地域間交流、観光交流等を通じた地域や経済の活性化
【意見】
@指標が(1)〜(3)で出てきたものの再掲であるが、実際の効果を測定するに は入込客数や観光支出額などを指標とすることが必要である。
A「隣接する地域の中心の都市間が改良済みの国道で連絡されている割合」はアウ トプット指標であり、指標としては不適切であるため、削除を求める。また、鉄道 に関する指標が必要であり、鉄道廃止路線延長の低減を指標にすることを提案す る。
B地方は交通需要がもとより少ないため、交通モード間相互の連携を図ることが必 要であり、特に地方鉄道路線がある場合には、その最大限の活用を考えるべきであ る。上下分離等により鉄道インフラを社会資本に組み入れ、地方のまちづくりを道 路整備一辺倒から転換していくことを提案する。
C新幹線整備に伴う並行在来線については、経営分離により運賃の大幅値上げなど 生活への影響が出ないよう、JRとの通算運賃制の導入・維持や路線毎の一体運営が 必要である。
D離島航空は、本土から遠く離れた離島のみを対象とすべきであり、本土に近い離 島は高速船など内航海運の充実を図ることを提案する。また、建設する場合でも、 地元自治体の推進意見だけを汲み取るのではなく、住民・利用者から意見を聴取 し、計画を再検討することを求めたい。
E既存の交通路の交差部分や接近部分(空港や高速バスストップと鉄道の連絡部 等)へ新たな結節施設を建設し、既存の交通路をより一層活用できるような工夫を 求める。
【理由】
@地方交通は国際交通、幹線交通、都市交通とは違った側面を持っているため、同 じ指標はそのまま適用はできない。また、アウトカム指標とすることが必要であ る。
A隣接する地域の中心の都市間が、改良済み(2次改築等)の国道で連絡されてい ることは必ずしも必要なく、むしろ公共交通により便利に移動できる方がよい。ま た、鉄道に関する指標がないのは同じ交通手段でありながら不適当である。鉄道事 業法廃止後に、地方鉄道の廃止が相次いでいるが、鉄道の廃止は当該地域の衰退を も意味するものであり、環境面からも自動車へのシフトは望ましくない。鉄道を制 度的不備から活性化せずに放置して廃止に追い込む一方で並行する道路を整備した り、鉄道への悪影響を考慮しないままの道路整備は建設優先の発想であり、今後は 不適当である。鉄道廃止路線を少しでも減らし、むしろ積極的に活用すべく改良し ていくことが必要である。
B鉄道に並行して道路を整備することで、鉄道が衰退している地域が多いが、この ような共倒れを引き起こすような事業にするべきでない。道路と同様、鉄道もまち づくりのインフラの1つとして組み入れる仕組みが必要であり、都市・市街地の整 備施策の中で鉄道の活用やその際の優遇策を具体的に位置付けることが不可欠であ る。
C例えば今回整備新幹線が延長開業した盛岡〜八戸の事例の場合、県境の目時駅を 堺にIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道に分割され、さらにJRを乗り継ぐ場合初 乗り運賃が三重に取られ、その割り増し分の犠牲を利用者が受けている。希望する 高校へ通学できなくなったり、通学費を助成する条例制定にまで踏み切った地元自 治体もあり、日常生活に深刻な影響が及んでいる。むしろこうした際は、擬制キロ を用いた割増運賃制や、新千歳空港・成田空港・瀬戸大橋等で導入している運賃加 算等による、JR通算運賃制度を活用した対応であれば、現状の鉄道関連法制度にお いても可能である。なおこのような利用者の利用条件に直結するような鉄道運輸 (運賃や利用条件)制度の詳細については、従来のように事業者任せにするのでは なく、今回のような国家的な社会資本整備の基本計画の策定においては十分に検討 すべき対象として含めるべきことを強く指摘したい。
D高速船でも比較的早く移動できるので、離島にすべて空港を造る必要はなく、既 存空港に高速船で乗り入れるなど、内航海運の充実で対応が可能な離島は多い。
E例えば高速道路のバスストップは既存の用地買収費の軽減目的に他の交通路との 結節を想定せずに設置していた嫌いがあるが、今後は鉄道や他の道路との交差地 点、鉄道駅の至近の地点に出来るだけ設置すべきである。また地方空港も、近くに 鉄道が存在する場合は引込み線の建設も含め、アクセスに活用が出来るようにする など、異なるモードが少ない費用でで乗換えが出来るようにすべきである。

第3章 事業分野別の取組み
【意見】
 交通系については「道路」「交通安全施設」「空港」「港湾」に分割するのでは なく、総合的な「交通基盤(インフラ)」分野としてくくり、モード相互の競争や 連携を考慮した指標・事業を設定する必要がある。また、「鉄道」のインフラ部分 の整備事業(支援事業含む)についても含めることが不可欠である。
 その他、指標及び事業についての意見は、「第2章」に対する意見の中で述べた 通りである。
【理由】
 第1章においては「事業の連携を強力に推進」とあるので、「道路」「交通安全 施設」「空港」「港湾」をすべて推進するという目標ではなく、「交通基盤(イン フラ)」として必要なものを地域が主体的に構想し、住民の合意を得て整備してい くという新たな枠組みへと転換する必要がある。これには、分野の分け方から変え ていく必要がある。また、「鉄道」は今日主として民間の行う「公益事業」となっ ているが、陸上交通を担う基幹的交通インフラであるため、統一的に含めて検討す ることが不可欠である。

以上


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