国土交通省所管の公共事業の構想段階における住民参加手続きガイドライン(案)に関するパブリックコメントの募集結果について
国土交通省総合政策局政策課 パブリックコメント担当 御中
「国土交通省所管の公共事業の構想段階における住民参加手続きガイドライン(案)」に関する意見
【はじめに】
本会は、広く一般市民を対象として、鉄道等の交通体系に於ける諸問題を利用者
の立場から検証し、その解決・改善に向けての調査、研究、提言に関する活動を行
う「鉄道利用者による組織」です。
鉄道の中で本パブリックコメントの対象となる「公共事業としての鉄道事業」に
は、新幹線、日本鉄道建設公団の建設する鉄道、都市計画鉄道がこれに該当します
が、今日我が国では鉄道の大半は民間事業者による公益事業となっており、純粋な
公共事業とはなっておりません。しかしながら、鉄道は今日においても公共交通の
基幹をなす交通手段であることは、国民の誰もが認める疑いようのない事実であ
り、事業主体の如何を問わず、構想段階からの住民・利用者による参画を図り、利
用者に愛される鉄道を整備していくことが、これからの交通運輸行政の使命である
と考えます。
以上の立場に立ち、「ガイドライン(案)」について、主に鉄道を中心とし道路
等と比較しつつ、交通インフラ整備事業に注目しつつ、意見を述べさせて頂きま
す。
第1 対象の考え方
【意見】
対象を、国土交通省所管の直轄事業及び公団等事業に限定せず、「国民生活・社
会経済又は環境への影響が大きい公共事業」はすべて、対象としたらどうであろうか。
また、民間の事業であっても、行政の補助等を受けて行うような、一般に「公益
事業」と分類されているものは、公共事業と同等もしくは同列に扱い、住民参加手
続きを踏む必要がある。併せて、住民意見の積極的な採用を可能にするための、行
政による財政的な裏付けも担保していく必要があると考える。
【理由】
公共事業をどの省庁が所管し実施するかについては、国民生活とは無関係の問題
であり、国土交通省が直接所管するか否かによって住民参加の態様が変わるので
は、縦割り行政の弊害がそのまま現れてしまいかねない。「国民生活や社会経済も
しくは環境への影響が大きい公共事業」は国土交通省以外にも多数存在するため、
なるべく早い時期に他の省庁、地方自治体にも住民参加手続きの制度を作るよう、
積極的な呼びかけをお願いしたい。
また、鉄道は公共交通の基幹な手段であることは周知のことである。しかしなが
ら、今日我が国では大半の鉄道は民間事業であり、また「鉄道事業法」という独立
採算を前提とした法制度の下で整備が進められているため、住民参画の視点は希薄
なのではないだろうか。鉄道関連の住民や利用者の参画を既に法的に保障している
数少ない枠組みとしては、「交通バリアフリー法」が挙げられ、鉄道駅とその周辺
のバリアフリー基本構想策定過程への住民・利用者(高齢者・障害者等)の参画が
規定されている。このような制度の下であっても、道路や街路(駅前広場等)に関
する意見は比較的採用されやすいにもかかわらず、鉄道駅構内に関する意見はなか
なか取り入れられないのが現状ではなかろうかと考えられる。これは、鉄道が独立
採算を原則とする民間の事業として考えられているため、こうした枠組みでの意見
聴取にはなじまないとの認識が根強く持たれる状況になっているのが現状であり、
縦割りを超えた折角の枠組みが十分機能しているとは言い難いのではないだろう
か。鉄道施設においても公共事業に準じるような住民や利用者参画手続きを取り入
れ、財政的にも公共事業と遜色ない仕組みを構築していくことが、今後の利用者に
愛される鉄道には必要ではないかと考えたい。
【意見】
個々の事業のみならず、むしろ各事業の根拠となる上位計画・政策(いわば「国
家としての交通政策や各種五ヶ年計画等」)の策定やその策定過程について、住民
や利用者の参画を制度的に整備したらどうであろうか。
【理由】
とりわけ鉄道の場合は、国鉄改革後、法定の上位計画が存在しなくなり、いわば
「民間任せ」の状況となっている。また、大都市圏では交通政策審議会の答申、整
備新幹線に至っては政府・与党申し合わせが事実上の上位計画となっている。これ
らは地方自治体や業界団体・議員連盟等の陳情に基づき、財務省と政治家との間で
政治決着が図られるという構造で事業が進められており、そこには住民や利用者の
参画の余地はほとんどないような印象を強く持つ。
一方、「都市高速鉄道」として位置づけられると、都市計画法上の住民参加手続
きが適用されることになる。しかしあくまで都市計画事業としての住民参加となる
ため、いわゆる「都市側」の意見の方が「鉄道(利用者)側の意見」より優先され
る傾向にあり、鉄道施設の積極的な整備・改良に活かす制度としては決して十分と
は言えない状況にある。なお後述するように、都市計画法において参画が保障され
ている住民としては、市区町村民と利害関係人のみとなっており、こうした点から
も十分とはいえない状況にあると考える。
最近は地方自治体レベルで総合交通計画を策定するところが増え、その策定の過
程への住民参加が進められている。その中で住民の意見が反映できるのは自治体の
裁量で進められうる歩行者・自転車・バス等が中心で、鉄道については国の方針を
呑まざるを得ない状況になっているように感じる。最低限、国としての上位計画策
定と、策定過程への住民や利用者の参画の仕組みを作り、健全な交通の議論を住民
・利用者と共に行うことが必要であると考えるが如何であろうか。
第2 定義
【意見】
今回、住民参加手続きにおいて対象となる住民を「当該事業の影響が及ぶ地域住
民その他の関係者」とし、市区町村の区域や権利者等に限定しなかったことは大い
に評価するものである。既往の法令等の手続きに固執することなく、これを是非と
も積極的に拡充して頂きたい。また、対象住民にとどまらず「利用者」を含めるこ
とも必要と考える。
【理由】
鉄道は線区全体を整備しなければ意味がないからこそ、事業の影響が及ぶ広域的
な利用者全体を対象にした住民参画が重要と言える。また、利用者の参画を進める
ことが、利用者重視の鉄道を整備するために不可欠である。従来のような、権利者
や沿線住民の合意がとれた箇所から順次いわば「なし崩し的」に着工し、既成事実
を積み上げるような手法は、かえって住民や利用者の反感を買ってしまうようなも
のである。このため、特に大型の事業についてはもっと沿線住民や利用者全体の合
意形成を得られるように改善し、そのような段階を踏んで事業に着手するようにし
たらどうであろうか。
また、前出の「都市高速鉄道」は都市計画法上の手続きが適用されるため、意見
書の提出など一定の参画が保障されるのは、市区町村民と利害関係人に局限されて
いるように伺えるものである。そもそも鉄道や交通関連事業は広域的に影響を及ぼ
す事業と言え、影響の及ぶ広範な沿線住民や利用者の参画が是非とも求められるは
ずである。にもかかわらず、現行制度ではその対象とする範囲が十分とは言い難い
状況であり、後々までしこりを残すことになりかねない点は誠に残念なことであ
る。沿線住民や利用者を幅広く対象とした参画を可能とするように制度を改変し、
住民や利用者も交えて代替案を探ることができるようにしたらどうだろうか。
第3 構想段階における住民参加手続き
[事業者による複数案の作成、公表]
【意見】
複数案の中には、当該事業を行わないこととする案や、既存の施設・インフラを
最大限有効活用するようなプランを必ず含め、十分に検討できるようにしたら如何
であろうか。また、住民が最適と考えるようなな案を選択できるよう、複数案作成
の段階で費用対効果分析や計画段階環境影響評価を行い、その結果を広く公表して
はどうだろうか。
【理由】
公共事業は本来実施が前提ではなく、事業の必要性があるからこそ実施するので
ある。しかしながら、当該事業を実施することによって既存の施設・インフラの利
用状況に影響を及ぼす場合(例えば既存の鉄道に並行して高規格な道路を新規建設
し、既存の鉄道が経営危機に陥る場合等)の事例も存在する。こうしたことから、
既存の施設・インフラの有効活用の可能性の検討を積極的に行い、代替案として十
分に検討することが必要と言えないであろうか。
また、複数案の費用対効果分析や計画段階環境影響評価等を行うことによって、
既存の施設・インフラへの影響もより正当に評価できるようになる。とりわけ交通
に関係した事業においては、並行する交通機関への影響(とりわけ鉄道と道路)が
顕著に現れるため、既存の交通機関の有効活用を有力な代替案として十分に検討す
る必要がある。
[手続きの円滑化のための組織の設置]
【意見】
住民代表を含めた協議会の設置、学識経験者等からなる「第三者機関」の設置
は、「事業者(=国土交通省)が必要と判断する場合」に設置するというのではな
く、常に積極的に設置されるように改めたらどうであろうか。また、設置された協
議会・第三者機関がより公平で民主的に運営され、有効に機能するよう、以下のよ
うな最低限のルールは取り決める必要性を感じる。
(1)第三者機関における学識経験者やNPO法人・団体の人選は、事業者側の都合
でいわば「一本釣り」と言われるような手法で行うのではなく、むしろ原則公募と
し、住民や利用者からの推薦を積極的に受け付けるように改めたらどうであろう
か。また人選に当たっては、応募動機や応募者自身の実績を応募者から書面で提出
を求め、それを公表した上で、住民の意見を取り入れて決定していくことも考えら
れる。
(2)協議会へは、住民の公募を積極的に推進し、応募した住民の「想い」を尊重す
べく、原則として応募者全員を委員に採用して頂きたい。
(3)会議の公開に当たっては、希望者全員が傍聴できるようにし、会議資料と議事
録はできるだけ速やかに公開して頂きたい。公開方法としては、インターネットや
関係地域の公共施設(公共図書館や公民館等)での閲覧の他、希望者に対する配布
の積極的実施をお願いしたい。
【理由】
協議会・第三者機関をいかに民主的に設置し運営するかが、住民参加の成否を握
る重要なポイントであり、中でも委員の人選をどう行うかが、本パブリックコメン
トの最大の焦点であると考える。協議会・第三者機関を、「事業者が委員を決め」
「事業者が措置を必要とする時にのみ」設置するのでは、現在の審議会等と何ら変
わりなく、事業者に都合の良い意見を持つ学識経験者やNPO法人により審議が恣
意的に進むことへの懸念がぬぐえないのである。
鉄道関連事業では、構想段階で「研究会」という名の第三者機関(例えば連続立
体化事業や橋上駅、駅前広場計画の策定等の際の自治体や鉄道事業者で構成される
もの他)が設置されることが見受けられる。しかし、鉄道に関する専門的知識を委
員が有していないために、鉄道事業者の発する情報の妥当性を十分に検証できない
というケースが存在し、鉄道整備が利用者の利便性よりも、採算性等事業者の都合
が優先したままに進行していく結果をも招くことになる。また、住民参加の協議会
においても、既存の町会や商店会等が「住民代表」として恣意的に選任され、鉄道
よりも自動車を優遇する意見を主張するという事例もまま散見される。このような
場には、鉄道・交通に関する高い見識や関心を持ち、住民・利用者の立場から課題
を検証できる、鉄道・交通に関連した交通まちづくりや利用者団体の参加を求める
ことが不可欠ではないだろうか。また、住民委員の一般公募制は、より関心の高い
住民を集める有効な手段であるため、積極的に導入したらどうであろうか。この公
募枠については、地域や利害関係性等の応募条件を必要以上に厳しくしないことも
重要である。
前出の交通バリアフリー基本構想への住民参加においても、交通に関する意識の
高い住民・利用者団体や一般公募住民を参加させた自治体と、既存の町会等の参加
のみで策定した自治体とでは、基本構想のできばえが大きく異なっている点が顕在
化している。
[住民等の意思形成に際しての配慮]
【意見】
「事業に対する住民等の意思形成に十分な期間を確保するよう配慮するものとす
る」「特に、説明会又は公聴会に関しては、十分に住民等への周知を図るよう時間
的余裕をもってその開催の予定を公表するものとする」とあるが、標準的な期間を
より具体的に設定することをお願いしたい。具体的には、説明会又は公聴会の周知
は最低3週間前、可能ならば1ヶ月以上前、パブリックコメントの意見募集は最低
1ヶ月、可能ならば1ヶ月半〜2ヶ月以上は必要と考える。
【理由】
一般に市民であれば様々な活動予定は、1ヶ月ぐらい前から入り出すことが多
く、突発的なもの以外は2週間ぐらい前までにはほぼ確定する。このため、説明会
又は公聴会の周知は最低3週間前、可能ならば1ヶ月以上前に告知が必要と考え
る。
パブリックコメントを組織や団体としてまとめて提出する場合、会員の意見共有
と骨子固めに1週間、意見書原案づくりに1週間、原案に対する会員の修正意見集
めに1週間、会員意見に基づく修正と最終調整に1週間かかり、情報を得てから意
見書の最終形にする作業だけで最低4週間(=1ヶ月)かかること、会員が対面し
て議論する定例会等が月1回ペースで行われているケースが多いことから、1ヶ月
が最低限の必要期間と考えたい(市民活動にインターネットが導入された今日にお
いても対面しての議論はなお重要なことである)。なお、事業者の発表から情報入
手までにタイムラグが生じることを考えると1ヶ月半は欲しいところであり、提出
前に定例会等で承認を得ることを考慮すると、2ヶ月の期間があることが理想であ
る。
なお、12月(年末)や3月(年度末)の繁忙期、年末年始や黄金週間を挟む場合
等は、住民側の対応がとりにくいため、それを考慮した期間の延長を是非ともお願
いしたい。
[国民への広範な情報提供等]
【意見】
「事業者は、当該事業の特性に応じ、広く国民に情報を提供し、意見の把握に努
めるものとする」の一文のみでは従来と何も変わらないのではないだろうか。提供
すべき情報の内容としては、以下のようなものが必要であり、具体的に例示してい
ただければ有難い。
(1)事業者の情報……事業のスケジュール、設計図、価格、費用対効果分析結果、
事業対象地の現況の情報
(2)自治体又は国の情報……各種予算に関わる計画(基本計画・実施計画・五ヶ年
計画等、とりわけ五ヶ年計画や中長期交通/道路網計画等の上位計画、分野別公共
投資額実績の内訳(シーリングの際提出の具体的数値に関連する資料等))、都市
計画・環境影響評価情報、住民説明会・アンケート・意見募集・ワークショップ等
の実施情報
(3)住民から収集した情報……住民アンケート・意見募集の結果、説明会での意見
(議事録や配布資料を含む)、質問・意見への回答
(4)議会・審議会等の情報……議会資料・議事録、陳情、議員からの要望、審議会
等の資料・議事録、審議会等の設置・人選に関わる情報、とりわけ上位計画とその
策定過程に関する資料や委員の設置選任・各種検討資料(コンサルタント会社策定
で現在は部外秘のものを含む)
【理由】
住民や利用者が公共事業に参画するためには、行政とのパートナーシップのもと
判断に必要な情報の共有化が大前提であり、住民参加の成否を決めるきわめて大切
な部分である。上記の情報は、住民が自分の考えで判断を下すのに必要な情報と言
える。
特に費用対効果分析結果や、環境影響評価情報は、代替案との比較結果が重要で
あり、住民が代替案を公平な基準で選択する際に必要不可欠と考える。
【意見】
情報公開制度(法・条例等)により市民から要求された情報が、「文書不存在」
により不開示となる例が多いが、国土交通省等の文書管理規則の見直しも含め、住
民ニーズに応じた開示ができるように是非ともお願いしたい。
【理由】
公共事業について詳しく知るためには、事業に関する関係者との打合せ簿、協議
記録簿、市民や議員からの要望の記録等、もしくは上位計画との関連、構想・計画
に至った過程の文書を見ることが必要になる場合がある。これらは、情報公開制度
に基づいて行政文書として開示することが必要不可欠である。にもかかわらず、国
の情報公開法の場合、現状では、文書ファイルに登録された(又は登録予定の)行
政文書しか開示対象にならず、肝腎な文書が「私文書」として処理されても住民に
は知るすべがないという課題をはらんでおり、是非とも改善が必要と考えられる。
以上