2006年3月16日
来たる3月18日のダイヤ改定で、寝台特急「出雲」の廃止が予定されている。これは大変に残念なことである。
寝台特急の廃止を残念に思うのは、なにもノスタルジックな想いによるのではない。寝台特急・夜行旅客列車には大いなる潜在能力ならびに利用価値があるとの認識によるものである。
現在、寝台特急は全国的に統合・廃止が加速されつつある。今回の「出雲」廃止も、この一連の流れの中にあり、夜行旅客列車の全廃に至りかねない。これらの列車が衰退した原因として、航空機や高速バスの利用にくらべて運賃・料金が割高であることがあげられる。とりわけ寝台特急が航空機に対する競争力を低下させた原因は、スピードや利便性だけではない。運賃や寝台料金の高さの一方で、航空機の正規運賃より割安の往復航空券&ホテルパックの設定・普及にもある。
しかし、寝台特急・夜行旅客列車は、工夫次第では航空機よりも便利なダイヤを組むことができ、活性化の可能性を秘めている。
今回の「出雲」の場合、例えば東京〜鳥取では、現行ダイヤにおいて上り・下りとも航空機より遅く出発して早く到着することができる。上野〜金沢(「北陸」号)、東京〜高松(「サンライズ瀬戸号」)などの他の列車においても、同様のことが可能である。
さらに長距離の場合、例えば、たとえば東京〜札幌や東京〜福岡などでは、新幹線と寝台特急を組み合わせることにより、航空機よりも遅く出発して早くに到着するダイヤを構成することが可能である。すなわち東京を21時ごろに新幹線で出発して、23時30分頃新大阪で寝台特急に接続して、翌朝7時ごろに博多に到着するというダイヤを構成することも可能である。
ましてや、高速バスと比較した場合、寝台特急・夜行旅客列車には、寝て移動できる、そして車内を自由に動き回りやすいなどの利点がある。
また、仮に航空機にくらべて目的地の到着時刻が遅いなどの利便性上の不利がある場合でも、その不利な分を補い得るような寝台特急の活性化は、決して無意味ではない。それは、鉄道がエネルギー効率に優れており、省エネルギーや二酸化炭素排出削減の観点から、自動車や航空機から鉄道への転換が日本や地球にとって重要な課題であるからである(単位輸送量あたりの二酸化炭素排出量は、鉄道は航空機の20%程度)。
私たちは民間企業の自由な競争を全面的に否定するものではないが、エネルギー消費や二酸化炭素排出の増加を招くような競争には、然るべき行政からの意見や炭素税などの手段により、省エネルギーでありかつ二酸化炭素排出の少ないほうが有利となるようにするのが望ましいと考える。
一方、JR各社に対しても、たとえば「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」の「のびのび座席」の成功などにみられるように、低料金であるにもかかわらず身体を横にして眠れる設備を導入すること、普通のB寝台もカプセルホテル並の料金に引き下げるなどの努力をお願いしたい。
それでも、現在寝台特急を運行しているJR各社が寝台特急を活性化したくないのであれば、いきなり廃止するのではなく、運行を希望する企業が出現した場合、それを拒否なさらないよう、重ねてお願いしたい。
交通手段が多様化し、単に円滑な移動を求めるならばその手段が必ずしも鉄道である必要はないといわれる今日においても、他の交通手段と異なる寝台特急・夜行旅客列車の特性を好む層も、依然として存在することを、JR各社や国土交通省、そして国民の皆様にも改めて認識していただきたい。
願わくは利便性・快適性・環境保全性にすぐれた寝台特急・夜行旅客列車が、末永く活躍することを求めるものである。