平成
9年6月13日
運輸政務次官
衛
藤 晟 一 殿
陳 情 書
---利用者の声を十分に反映させた鉄道の復権について---
全国鉄道利用者会議
代表:武
田 泉住所:岩見沢市緑が丘
2--34--1
利用者の声を十分に反映させた鉄道の復権について
<陳情主旨>
時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、今年度は国鉄分割民営化
10周年にあたります。民営化後の特殊会社JRは(三島を除いて)運賃を値上げすることなく今日に至り、
JR東日本やJR西日本においては株式上揚まで達成して民間会社としての基盤を確固たるものにしようとし
ています。この改革は今日最大の政治課題である「行政改革」や「規制緩和」を先
導した側面もあって、総論的には国内のみならず海外でも高く評価され、このよう
な英断を下した運輸省には衷心より敬意を表するものです。
JR
各社は、分割後は本当に血のにじむような合理化努力により今日に到ったものと推察されます。しかし、民営化されたとはいえ地域独占を許容された公共鉄道であ
ることに変わりはなく、不採算部門といえども安易に切り捨てることはできないは
ずです。民間会社としての経営が軌道に乗ったとしても、その合理化・効率化が逆
に利用者サービスの低下を伴う事例があることに我々は強く留意します。そして、
そのサービス低下に対して改善を求める声が上がりながら、本質的な改善が全く行
われていない事実があることは誠に遺憾なことであります。
今後の
21世紀は、環境重視社会であるともいわれます。人や物資の移動をクルマに過度に依存した現代のエネルギー多消費型社会は、環境保全の面では大きな問題が
あるといえるでしょう。我々は、環境にやさしい大量輸送機関である鉄道に大きな
期待を持つものです。その意味でも、
JRの合理化・効率化により生じたサービス低下により、利用者が鉄道からクルマの利用に離れていく現状に強い危惧の念を持ち
ます。
昨今のクルマに押されがちな鉄道の復権を願い、我々は下記の項目について抜本的
な改善が必要と考えます。よろしくご検討いただきたくお願い申し上げます。
記
[1]
鉄道事業法に、消費者保護や第三者によるアセスメントの規定を設け、鉄道輸送サービスに利用者の声が十分に反映されるような制度を確立していただきた
い。
[2]
鉄道輸送に「着席率」の概念を明確にして、すべての輸送統計データに記すとともに、着席率を上げるような施策を講じるよう鉄道事業者を指導していただ
きたい。
[3]
エネルギー多消費型のクルマや航空機重視の経済社会から、環境に優しい鉄道利用を重視する社会に脱皮するよう関係各省庁と連絡調整して、今後の環境重
視社会にふさわしい交通体系の樹立を目指していただきたい。そのために、鉄
道事業法と軌道法との統合を含め、必要な行政改革には積極的に取り組んでい
ただきたい。
[4]
国鉄改革10周年を期にその部分的見直しを図り、民営化後のJRに対して噴出しているさまざまな問題点の解消を図っていただきたい。
[5]
特定地域においては、新型列車の導入に伴い鉄道利用者の利便性が著しく阻害されています。鉄道事業法第23条の規定に基づき、車両ならびに列車の運行計
画に関して改善処置を命じていただきたい。
なお、検討結果については、
6月末日までにご回答いただきたくお願い申し上げます。
陳情項目の内容
[1]
鉄道事業法に、消費者保護や第三者によるアセスメントの規定を設け、鉄道輸送サービスに利用者の声が十分に反映されるような制度を確立していただ
きたい。
JR
の経営上は画期的な合理化が図られても、そのしわ寄せが利用者へのサービス低下という形で現れる場合があります。例えば、
JR東日本が東北地方の寒冷地に導入した短編成ロングシート電車、
JR西日本やJR四国が導入したトイレなし列車の長距離運用、
JR各社が行っている駅待合室の撤去など枚挙にいとまがありません。問題なのは、それに対して利用者が改善を申し入れても何ら根本的な改善が図られてい
ないということです。民間企業であるがゆえに、地元の自治体は
JRにお願いすることしかできません。行政監察局といえども民間企業の経営判断には口出しできない
のが現状です。独占禁止法では鉄道事業はその適用を除外されています。ここにお
いて、利用者は全く
JRのなすがままです。苦情を言っても聞き入れられないのでは、利用者は鉄道から離れていくしかありません。それは、大量輸送機関を
JRのみに依存している地方にとっては、単に一民間企業の合理化努力云々の問題ではなく、さ
まざまな面で重大な影響を及ぼします。
我々は、「鉄道利用者を消費者として保護するシステムが存在しないこと」に問題
があると考え、下記の改善を要望いたします。
(1)
利用者の声を適切に吸い上げるためにも、(当面の施策として)地方運輸局に利用者 (苦情処理)専門担当官、苦情110番を設置して鉄道事業者に運輸省を
通して利用者の声が届くようにしていただきたい。
(2)
鉄道事業法第1条でいう「利用者の利益を保護する」ため、利用者の苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備を図り、利用者の声に敏速に対
応するよう鉄道事業者を指導していただきたい。
(3)
その地域の鉄道利用状況にそくして、運用区間に応じた適切な車両を導入するよう鉄道事業者に義務づけていただきたい。
(4)
新型車両導入、ダイヤ改正、駅舎の改築・レイアウトの変更等に関しては、その計画段階から情報公開して第三者も交えたアセスメントを行い、利用者の意
見を聴取・反映させるような制度を検討していただきたい。
(5)
利用者に列車の接客設備面の情報を提供する意味で、ロングシート車、トイレなし列車、そして寒冷地におけるデッキなし列車については、そのことを逐一
時刻表に明示するようにしていただきたい。
[2]
鉄道輸送に「着席率」の概念を明確にして、すべての輸送統計データに記すとともに、 着席率を上げるような施策を講じるよう鉄道事業者を指導していだき
たい。
日本の鉄道輸送では、輸送力ということは考慮されても着席率の概念がありません。
鉄道営業法では、
第15条2項にもあるように「全員着席」が基本理念だと思われます。一極集中による大都市圏の混雑は、「輸送」が精一杯で着席まで手が回らない
状況にあることは理解できますが、最近、さほどの混雑でもない地方に当初から定
員の半数以上の立席定員を想定した電車が導入されています。
そのような電車は「輸送」という面で考えると効率的ですが、中長距離乗車の快適性を考えると明ら
かに劣ります。中長距離を移動する交通機関で着席の保証がないのは鉄道だけです。
また、普通鉄道構造規則第
194条1項によれば、客室内は快適でなければなりません。そのような快適性の面で鉄道とクルマを比較すると、「座れるとは限らない」とい
うことだけで鉄道は明らかに劣ります。そもそも、中長距離区間を運行しながら、
半数以上を立席定員で輸送しようという発想自体に大きな問題があります。我々は、
利用者をクルマから鉄道に引き戻すには、この「全員着席」ということがポイント
だと考え、下記の項目について運輸省の規制対象に取り入れ必要な法改正を行って
いただくよう要望いたします。
(1)
鉄道輸送サービスの根底となるデータに着席率の概念を取り入れ、各線区ごとの着席率を公表していただきたい。
(2)
運輸省の許認可項目に着席率を追加して利用者保護を図っていただきたい。(3)
中長距離区間の運用車両については、 一定の着席率を確保するよう義務づけていただきたい。
(4)
鉄道事業者には、この着席率を向上させるような施策を講じるよう指導していただきたい。
(5)
新型車両の設計の承認においては、着席率に一定の下限を設けていただきたい。(6)
最近、こうした着席率が大きく低下しているような地区においては、早急な改善策を講じるように鉄道事業者を指導していただきたい。具体的には、東北線、
宇都宮線、高崎線、東海道線、横須賀線などで着席率が大幅に低下しています。
[3]
エネルギー多消費型のクルマや航空機重視の経済社会から環境に優しい鉄道利用に脱皮するよう関係各省庁と連絡調整して、今後の環境重視社会にふさ
わしい交通体系の樹立を目指していただきたい。そのために、鉄道事業法と
軌道法との統合を含め、必要な行政改革には積極的に取り組んでいただきた
い。
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世紀を間近に控えた昨今、エネルギーや環境問題がクローズアップされています。特に、エネルギー多消費型の現代クルマ社会は、都市周辺の渋滞や排気ガス汚染等
さまざまな問題を引き起こしています。その一方、環境に負荷の少ない大量輸送機
関である鉄道では、民間企業として当然の採算性重視の観点を過度に強調した経営
が行われ、特に不採算地区においては利用者サービスの大幅低下でますます鉄道か
らクルマへの移行が進んでいます。
これらの問題について我々は、道路と鉄道という国民にとっては基本的な「交通手
段」が、運輸省と建設省という別個の省で別々の施策により取り行われていること
に根本原因があると考えます。特に公共事業では、鉄道に対して著しく不利な予算
配分には大きな問題があります。運輸省におかれましては、
21世紀に向けた総合交通体系樹立に向けて行政改革に積極的に取り組まれると共に、鉄道の復権に向けて
国民各層への啓蒙活動を行っていただきたく思います。行政改革に関して、我々は
下記の点がポイントになると考えます。
(1)
建設省とのいわゆる「100年戦争」に終止符を打ち、 鉄道のインフラ整備やガソリン税の算入を含めた「総合交通特別会計」を設置して効率的・総合的な交
通体系の実現を目指していただきたい。鉄道事業法と軌道法を統合し、鉄道の
インフラが十分に公共投資できるような真の総合交通体系確立のための制度・
法体系にしていただきたい。
(2)
各地方の地域事情に適した細やかな交通体系を創設するためにも、本省やその出先機関が持っている種々の許認可権限を地方(都道府県・市町村)に委譲す
ることを検討していただきたい。
(3)
公共投資が道路や空港と比べて鉄道整備に著しく不利な現状にあることを強くPR
し、国民に対して鉄道復権に向けた啓蒙活動を行っていただきたい。(4)
運輸審議会や運輸政策審議会など各種審議会や、許認可行政による決定に対して情報公開を行い、運輸行政に対する透明性・公開性を確保していただきたい。
(5)
鉄道と道路とを一体化した総合交通体系を考えるためにも、建設省との積極的な人事交流(特に鉄道局と道路局)を検討していただきたい。
[4]
国鉄改革10周年を期にその部分的見直しを図り、民営化後の JR に対して噴出しているさまざまな問題点の解消を図っていただきたい。
国鉄改革
10周年を迎える今年は、この改革の意味や功罪について検証する絶好の機会です。
JRの民間企業としての活性化が図られた面では高い評価が与えられていますが、公共交通確保の面からの検証は不十分ではないでしょうか。民間企業が不採
算部門をいかに取り扱うかは自明の理です。しかし、地域独占の特殊会社にそのよ
うな対応を取られた不採算地区の利用者はどうなるのでしょうか。政治的圧力を排
するためになされた民営化が不採算地区の大幅なサービス低下を引き起こすのでは、
国土の均衡ある発展は望めません。公正な経済社会の運営のためにも、運輸省にお
いては必要な規制は断固としてこれを行っていただきたく思います。我々は、公共
交通維持の観点からも、民営化された
JRに現状のまま不採算地区のサービス向上まで要求することには無理があると考え、下記のような改善を要望します。
(1)
公共鉄道維持の観点から、不採算線区に対する追加的なサービスのコストについては自治体の公的資金の補助を行うなど、民営化されたJRに公共性の面で
過度の負担を負わせすぎないような方策(地方行財政再建特別措置法の特例拡
大もしくは改正等)を検討していただきたい。
(2)
運輸省や各鉄道事業者から独立した鉄道の監視・監督専門機関を創設して、鉄道を監督する権限を強化していただきたい。そこには、専門的知識を有する鉄
道事故調査のための第三者機関も含めていただきたい。
(3)
地域独占を許容されて公正な競争状態にないことによる弊害も見られるので、現行の地域分割方法の再検討を行っていただきたい。また、上下分離を広範に
押し進めていただきたい。
(4)
日本の国鉄改革は世界的も高い評価を得ていることから、国鉄再建管理委員会や国鉄再建法の成立過程等、この改革の経緯を広く世界に情報公開していただ
きたい。
[5]
特定地域においては、新型列車の導入に伴い鉄道利用者の利便性が著しく阻害されています。鉄道事業法第23条の規定に基づき、車両ならびに列車の運
計画に関して改善処置を命じていただきたい。
JR
の民間会社としての経営合理化・効率化が、不採算地区のサービス低下をもたらしていることはたびたび触れましたが、特に
JR東日本管内では極端な施策が行われています。
東北の寒冷地に導入された701系ロングシート電車については、鉄道有識者からの批判の声も高まっています。鉄道旅行者(愛好家)の間ではこの電車を
嫌い、東北の鉄道による旅を敬遠する動きもあります。長時間乗車が多く高齢化の
激しい東北では、このようなロングシート電車は地域の利用実態には到底そぐいま
せん。
JR西日本やJR四国ではトイレなし列車の長距離運用が行われ、人権上も大きな問題があります。利用者は何度も
JRに改善を申し入れていますが、根本的な改善は一向に図られる気配がありません。利用者としては、もはや鉄道事業法第
23条にいう改善命令に期待するしかない状況にあります。我々の要望する具体的な改善事
項は下記のとおりです。よろしくご検討いただきたくお願い申し上げます。
(1)
東北の寒冷地の中長距離区間に導入されている短編成の701系ロングシート電車に関して、「増車」「ボックス型への改造」「車内暖房の抜本的改善」「ド
アチャイム音の改善」を命じていただきたい。具体的には、
(a)
朝夕の通勤通学時における2両短編成による運行を廃止し、4両編成での運行を命じていただきたい。(上りでは盛岡6:56発、下りでは一ノ関7:27発、水
沢7:15発の快速、一ノ関15:00発の混雑が酷い。)
(b)
盛岡・一ノ関間は岩手県中央の平野部に点在する県内主要都市を縦断する重要路線であり、中長距離利用者が多いといえます。利用者の利便性のために
も、ボックス型への早急な改造を命じていただきたい。次善の策として、
・仙台地区の719系と盛岡地区の701系とのトレードを検討していただきたい。
・盛岡地区でも秋田地区のような中間車(サハ701)をはさんだ3両編成を導入
し、その中間車にはボックス席を設置していただきたい。従来車は順次ボッ
クス席付きの車内に改造していただきたい。
・北海道の721系を東北に導入することも検討していただきたい。
(c) 701
系の扉開閉時のチャイム音については、 「持続的に聞き続けると軽い難聴のおそれがある」との医学文献があることから、 全701系車両(青森・一
ノ関間は改善済み)についてその改善を命じていただきたい。
(d)
東北の寒冷地を走る車両として、車内温度が10度にまで低下するような車両は地域にあった電車とはいえません。冬季の暖房方法について抜本的な改善
を図るよう命じていただきたい。
(e)
盛岡・一ノ関間にも、秋田・青森・宮城(仙台・小牛田間)に導入されているような快速列車を導入していただきたい。
(f)
田沢湖線の701系に設置されたボックスシートは背もたれ部分が低く長時間乗車には適していないことから、背もたれ部分を高くするように指導してい
ただきたい。
(2)
北海道に導入され701系と同様の車内構造を持つ731系・ キハ201系のロングシート車両については、その運用範囲を札幌近郊部に限定し、これ以上の車両の
増備計画を見直すよう強力に指導していただきたい。
(3)
山陰の中長距離区間に導入されているJR 西日本のキハ120系やJR四国1000系等では、トイレなし列車の長距離運用が行われ人権上も大きな問題になっていま
す。早急な改善処置を命じていただきたい。
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