2004/2/26

北海道開発局(開発監理部開発計画課地域連携推進室)御中

「社会資本整備に関わる北海道の将来の姿(素案)」への意見

武田 泉
北海道教育大学岩見沢校助教授
地域交通政策論

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**全般的事項について
*意見聴取の手法について:
 意見:今回のパブコメに至る行政手続の経緯についての情報提供が希薄である。特に 、これまでに開催された「北海道ブロック戦略懇話会専門部会」や「地域連携会議」に おける意見がわからず、議事要旨等のパブコメ意見表明に必要な参考資料を、添付資料 として公表・配布すべきである。

〜理由:素案で書かれている内容(図表・記載項目)についての位置付けや意図、意義 がわかりにくく、今回の提示では意見提出には不十分と考えるためである。また、「地 域の声が適切に重点整備方針に反映されるよう努力」するというなら、パブコメの前に 市民団体や一般公募で意見吸い上げるように配慮すべきである。

*社会資本に「鉄道」が含まれないことについての意見:
・意見:社会資本整備の対象に「鉄道」を一分野としてしっかりと位置付け、対象とし て含めるべきである。

〜理由:社会資本重点計画法は従来の部門別縦割りの5か年計画を統合したものだが、 今後は従来通りの縦割りの計画を単に束ねるだけではなく、その相互連携や相互補完性 、統合的計画樹立について、積極的に対応していくべきである。
 中でも鉄道については、現在一部の街路事業系の支援事業以外は、社会資本整備・公 共事業としてはほとんど位置付けられていないのが現状である。そもそも鉄道分野の総 合計画は、国鉄時代には部内で5か年計画は存在し、公共的性格を有するものであった。
 しかしながら、国鉄改革の結果インフラ整備を含めて全てを一括して民営化しJRに建 設部門を含めて移行させため、公共事業としての鉄道インフラ整備は事実上存在しない 状況となっている。それは鉄道だけが原則としてインフラ整備も運営も全て自前で実施 せざるを得ず、事業の採算が取れない限り鉄道インフラの改良がなしえない状況になっ てしまった。このため、鉄道インフラの整備は道路等公共事業として位置付けられてい る他の交通系の社会資本整備と比べ著しく立ち遅れることとなった。とりわけ採算の確 保が極めて困難な地方鉄道路線では、たとえ重要度がある線区であっても、施設の維持 ・更新も満足に出来ずに陳腐化している現状が多く見受けられ、インフラの抜本 的な改善が図れないケースが少なくない。
 とりわけ、道内のような地方における不採算の地方路線の場合、改良よりもむしろ廃 止・撤退の危機へと向かうことの方が多く、公共交通の維持の危機に繋がっている。国 鉄時代に一定数の輸送密度に及ばない路線はバス転換すべきものとして整理され、一部 には第三セクターとして存続した事例もあるが、基金運用事情の大きな誤算により、経 営危機を迎えても支援の方策が無く、強引に廃止に向かわせようとしているのが今日の 交通政策ではあるまいか。このような政策は近い将来必ずや禍根を残すであろう。今の うちから鉄道を含めた地方における総合交通体系の樹立に向け、その試金石となりうる ような施策のとりまとめが必要である。
 さらには「高速交通ネットワーク」に、「高規格道路」や新幹線だけではなく「高速 化された在来線鉄道」も含めるべきである。

*「北海道開発予算」の対象分野について:
・意見:「北海道開発予算」の対象に「鉄道」等も含め、従来の事業分野の経過だけに とらわれることなく、真に政策上必要な内容に再構成すべきである。

〜理由:近頃出版された伴野著「北海道開発局とは何か」他によると、「北海道開発予 算」は戦前の北海道開拓の系譜を引きつつ、戦後に全国的な食糧生産地としての骨格を 形成すべく農地開発や道路整備等が位置付けられた。そして、開発本局−各開発建設部 の系列の組織によって大々的に事業が推進され、北海道の開発に大きな役割を果たして きたのは事実である。しかしながらこれらのインフラ整備が一定の水準に達した今日、 新たに同種の新規事業を開始するよりも、既存の施設や老朽化した施設を維持・更新し て、改良・連携を図る方が、今後の持続可能な発展形態を目指す上で重要と考える。
 まず鉄道のように、制度や政策の不備によって十分な整備もままならない類のインフ ラを改良していくことを可能にする方策こそを、是非とも目指すべきである。そのため には、鉄道特有の技術(インフラ施設整備計画)に卓越した職員のポストを、北海道地 区ブロック(現行の開発局内に道庁と分担して)で用意することが必要なことを指摘し ておきたい。

*対本省に、地域事情から逆に制度改変を要望していくような観点の欠如:
・意見:鉄道インフラ制度・政策のように、本省に対して地域事情から逆に制度改変を 要望していくような観点が欠如している。

〜理由:北海道の持続可能な発展の側面で必要な交通政策の実現のため、鉄道インフラ 施設への公共の関与・支援を拡大し、他の交通手段と同様な方式に改善を図っていく必 要がある。
 具体的には、例えば道路と鉄道が並行するのに防災施設を鉄道側で整備している場合 (鉄道林;例えば岩見沢市幌向付近の一般国道12号線とJR函館本線の並行区間等、現 在は道路側が鉄道側にいわば「只乗り」の状況にある。)、そうした防災施設を道路側 の公共で管理することにすることを是非とも検討いただきたい。網走開発建設部管内で は、旧名寄本線跡地の鉄道林を一般国道の防雪林に所管換えした事例があるが、現役の 鉄道であっても道路と言う公共側で管理すべき合理的理由が存在する。
 こうした観点をさらに拡大すれば、「開発道路」や「特殊街路」(都市計画運用指針 中の)等の認定を道路に限定せずに鉄道にも拡大して、道内の地方鉄道を「開発インフ ラ」として認定し、線路基盤施設を開発局の鉄道管理所(仮称)で管理することが出来 るように制度改変することを、構造改革特区制度も駆使しつつ、本省に対して逆提案す べきである。

*省庁再編を地方支分局にも拡大し、北海道開発局と北海道運輸局の機能統合をすべき である:
・意見:建設省と運輸省等が省庁再編により本省レベルでは再編統合されたのであるか ら、地方支分局にも拡大し、北海道開発局と北海道運輸局の機能統合をすべきである。

〜理由:鉄道を含め総合交通体系を樹立していくための専門部署を道庁(道州制政府) との関連も含め、設置すべきである。とりわけ鉄道政策は現在のところ規制目的で運輸 局に置かれているだけで、インフラ整備には直結していないのは問題である。また現在 、開発局での鉄道の所管が北海道新幹線のみに限られ、また港政課が所管していること も不十分である。もはや開発局(本州方面では地方整備局)と運輸局が並立している状 態こそ不可解であり、早急に人事交流をはじめ組織の一体化に努めるべきである。

*国土交通省以外の省庁の政策分野との連携:
・意見:国土交通省以外の省庁の政策分野とも積極的に連携すべきである。

〜理由:林野庁・環境省・農林水産省等の公共事業との連携の視点が希薄であり、境界 領域の事業に縦割りに構図を持ち込んでいる。
 具体的には、長距離自転車道(道路局)と長距離自然歩道(環境省自然環境局)、砂 防事業(河川局と林野庁)、一般の土木事業と農業土木事業等について、地域における 一体的かつ効果的な連携と政策の相互調整を促進させるべきである。

**素案記載事項への意見:
*図表の誤り(わかりにくさ)についての指摘:
・意見:29頁の国鉄特定地方交通線の廃止の図に誤りがあり、修正を願いたい。

〜理由:国鉄旧名寄本線の遠軽〜中湧別〜湧別が図から抜けている。
 また、穂別町は石勝線が北端部をかすめているが、駅がないためバス依存圏に入れる べきである。
 さらに、鉄道路線の地図上での曲がり具合(経由地)がいい加減であり、市町村界と の位置関係が不適切である。開発局の道路計画部門においても、従来の縦割りの「道路 計画オンリー」の状況から脱却し、総合交通インフラ整備の視点からの地域整備へと変 化させ、公共交通の現状に重大な関心を払って把握すべきである。何でも道路を建設す ればよいと言う時代は終わったのであり、道路土木技術者の大胆な意識改革と徹底した 研修が必須である。

*新エネの導入状況(9頁):
・意見:日本海側の苫前町付近の図示表現が不適切である。

〜理由:どの自治体なのか判別しにくい。むしろ鋭意識別のため「引き出し線」を付け て、市町村界を識別しうるようにすべきである。

*物流の記載に「鉄道貨物・青函トンネル」についての記載が存在しないことについて(5〜8頁):
・意見:物流で鉄道貨物や青函トンネルの果たす役割が存在されているにも拘らず、素 案では一切表記がない。実情に合わせて、しかるべき記述をすべきではないか。

〜理由:道外からの物流では、鉄道貨物や青函トンネルの果たす役割は、雑誌や農産物 等の輸送で一定の役割を演じている。素案自体に「鉄道軽視」の姿勢が見え隠れしている。

*自然公園の取扱いが不明確(12頁)
・意見:自然公園については保護計画の他に利用計画の側面もある。土木・建設当局は 、単に「規制をクリアさせるだけ」と考えるだけではなく、自然公園の設置目的に合致 したような自然への負荷を抑えた交通流動を計画すべきである。

〜理由:例えば知床が世界自然遺産へ指定された場合、来訪者が大きく増加することが 十分予想されるが、それに伴った交通計画については「適正化要綱によるマイカー規制 」以外は環境省側は自らの政策分野とは認識していない。また、道東等地方部の交通は 基本的にクルマ中心と看做されていて、公共交通の活用は著しく軽視されている。知床 五湖に女満別空港からのレンタカーが大挙して押し寄せても一向に構わないのか、そう した「エコトランスポート」としての問題意識を強く持つべきである。観光施策であっ ても自然地域内での「エコツーリズム」だけでなく、自然地域までの交通手段について も重大な関心を払うべきである。

*観光面に関して:
・意見:道の駅に公共交通機関の利用者がアクセスしにくい

〜理由:公共交通機関の利用者にも道の駅が利用可能となるように、設置にあたっては 鉄道・バス事業者との協議をすべきである。

*特定地方交通線の廃止の影響に関する図について(29頁):
・意見:「鉄道を高規格道路が代替する」と言う論拠は不適切である。前述の通り「高 速交通」の定義を再検討すべきである。

〜理由:地域の交通としての機能は高規格道路よりも一般国道が担うべき性格のもので ある。また都市間輸送についても、今後予定の高規格道路(一部のJHの高速道路の新直 轄区間も含まれる)を膨大な事業費(数千億円規模以上)をかけて新規に建設しなくて も、既存の一般国道の改良や既存の鉄道の改良の方が数億円から数十億円の規模で、か なりの効果をあげることが出来る。
 例えば、ふるさと銀河線や現存鉄道路線の役割が書かれていない、鉄道高速化につい ても触れられていない点も遺憾である。ふるさと銀河線も「廃止ありき」ではなく、「 簡易高速化」を手始めに「完全高速化」を公共事業として目指す等のため、鉄道インフ ラを開発建設部で鉄道管理所を有して管理することも検討されて良い。以前開発局で「 簡易軌道」が所管されていたが、それに倣った制度が検討されて良いと考える。
 さらには、自動車免許を持たない人を排除するものなのか、現行のクルマ社会を是認 するものなのか、地球温暖化対策としてのマイカー対策をいかに考えているのか、等の 認識についても、行政当局の姿勢を確認したいものである。

*42〜43頁の記述について:
・意見:鉄道(支援)に関わる施策が事実上存在しない。前述の通り、開発局として鉄 道インフラを含めて正面から鉄道が所管できるようにすべきである。

〜理由:現行制度では街路事業の一部としての連続立体化・自由通路・駅前広場等の駅 周辺事業としてか、若しくはバリアフリー対策としてしか、鉄道の支援事業が公共側か らはなされず、鉄道施設の整備が著しく立ち遅れている。また前者ではあくまで道路側 の向上が無ければ事業化されない仕組みとなっている。こうした点を、鉄道整備によっ て地域や都市間交通の向上に貢献する場合は鉄道インフラ整備を積極的に行えるように 制度を改変すべきである。


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