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地方鉄道の問題について

 

■表面化した問題
国土交通省が地方鉄道の維持のあり方を検討する専門委員会を設置しました。廃線案が浮上している上田交通別所線をモデルに、今年度末までに地方鉄道の再生に向けた提言をまとめるそうです。

この、上田交通の廃止問題というのは、実は京福越前線の存廃問題でも出てきた鉄道総研による「安全検査」(正式名称が別に有ります)の問題です。京福越前線の存続に必要な金額の見積もりが114億円から一気に150億円超に跳ね上がったのと同じものです。

鉄道総研は、今年度と来年度の2年間で全国のすべての地方私鉄で、この「安全検査」を実施します。上田交通ではそのため親会社の東急が事前調査を実施した結果、鉄道総研から指摘されるであろう箇所の補修に15億円かかることが判明しました。しかし上田交通ではその費用負担を行う財力が無く、東急も地方子会社の支援は行わない方針で、沿線唯一の自治体である上田市も負担できる状態ではなく、そのために廃止が浮上したというのがこの上田交通問題です。ちなみに上田交通は鉄道部門は赤字であるものの、会社としては黒字を保っており、地域において立派に機能しています。

道路の補修なら、地方交付税の基準財政需要額というところに算入して国に必要額を申請すれば、そのまま地方交付税として降りてきます。しかし鉄道への投資は基準財政需要額の算入対象ではなく、また、黒字の地方鉄道は近代化補助の対象外で、鉄道に税金が投入される道筋がありません。
※グレードアップを伴わない補修は赤字路線でも近代化補助の対象にはなりません。

全国の地方私鉄は黒字でも赤字でも線路状態は同様で、安全検査によって必要となる費用は十数億から数十億、百億といった単位になると考えられます。よって今のままではこの2年間で多くの地方私鉄が廃線に追い込まれることが予想されます。

この問題は私がうかがった某県の某電鉄会社も例外ではなく、安全検査が今年実施されますが、親会社も資金的援助は行わない方針で、県総合交通課もこの安全検査の実施を理由に「LRV導入どころではない」という立場をとっています。

そこの鉄道部長さんも国土交通省に交渉に行かれたそうで、「普通は地方私鉄には補修を行う体力が無いが、指摘項目を補修しなくても運行しても良いということか」「そういうわけにはいかない」「では補助制度を創るのか」「それはしない」「ではどうするのか」「・・・・・・・」という会話が行われたそうです。

実はJR可部線の廃線問題も耐用年数を過ぎたトンネル・橋梁・崩落危険箇所の擁護壁の更新を行う枠組みがJRにも地方自治体にも国にも無い状態の中で、それぞれの同意によって廃止を決めた側面があります。これも地方交付税制度の問題で、跡地を道路に造りかえれば国から地方交付税が必要分だけ降りてくる事になり、どうしても地方としては鉄道廃止・道路整備を選択することになります。そしてこれは全国の地方線区全体の問題です。

実は国やその周辺が動いているのはこのあたりの問題が表に出てきたからで、今までのように実状を伏せて問題を処理することが出来なくなっているということのようです。われわれとしても、ここであと一押し、二押しが必要というところでしょう。

■利用者もサポーターに!
私たち、鉄道の利用者は、鉄道の利便性が向上すれば、日常の移動に鉄道の利用を選択する機会が増えると思います。また、多くの人に鉄道を利用してもらうためには、車両の改善、地域整備と連動した、多くの人が使える便利な駅の設置等、もう少々魅力が必要だと思います。私たち利用者はそのために鉄道に税金を投入することに同意する必要があります。サポーターとしても協力する必要があります。"乗る運動"と"ハード整備"は車の両輪です。

現在の鉄道維持の仕組みも、地域(住民と市町村)が自らの意思で、税金を投入し、利用促進を行って鉄道を残し、支えると決めた場合は、都道府県もそれを支援し、国も支援するという形を採っています。

鉄道はもともと大きなポテンシャルを持っています。きちんと行政が関与して整備し、ポテンシャルを引き出すことが重要です。そして、私たち鉄道の利用者はその鉄道をますます利用し、自分たちで支えて行く必要があります。

■案外知られていない事実
今各地で問題にされているのは鉄道の赤字ですが、そもそも鉄道の独立採算制は世界的に見て異例です。また、日本でも独立採算制が成立したのは過去のことです。というのは、現在、地方の鉄道のほぼ全てが赤字なのです。どこも赤字でありながら大きな役割を果たし、社会資本として現在も地域の経済・社会に貢献しています。実は、バスの経営状態はもっと深刻です。全国のバス会社の約8割が赤字で、全国のバスの利用者の減少率は鉄道の利用者の減少率よりはるかに大きく、路線撤退も鉄道よりもバスのほうがはるかに多いのです。鉄道の廃止路線を引き継ぐ代替バスの乗降客数は一般に鉄道時代の5割ぐらいに減るといわれていますが、岐阜県で最近廃止された名古屋鉄道の路線では代替バスの乗降客数が鉄道時代の約1割に落ち込んだ例もあります。公共交通の捉え方を変えなければ全ての地方から全ての鉄道とバスが失われます。

今、全国的に鉄道に税金を投入することを考える時期に来ています。国土交通省も鉄道行政を見直す時期に来ていると指摘しています。中部運輸局も、鉄道は鉄道として、バスはバスとして残すことを考えるべきだと指摘しています。

ところで、国と地方の道路予算は11兆円、鉄道予算は1500億円で道路予算の1.4%程度(平成13年度予算)。そのうち約半分が新幹線、約半分が地下鉄。地方鉄道は微々たる金額に過ぎません。また、道路予算の50%超は一般財源で、道路特定財源は道路予算の50%未満です。鉄道全体の輸送分担率は25.8%、マイカー普及率の非常に高い某県でも鉄道の輸送分担率は2.7%(平成11年度)あります。地方を含め、鉄道への税金投入は決して不合理ではありません。今後、国にまず、予算配分と地方交付税制度の変更について検討してもらわなければなりません。最終的に必要なのは、各県における交通施設の整備状況を勘案しながら、国から地方に財源を移譲し、各県の判断で、必要に応じて、道路と鉄道への公共投資を選択・配分できるようにすることかも知れません。

いずれにしても、実状を知れば誰もが「おかしい」と感じるような今の政策をもうそろそろ、改めなければならない時期にきたのではないでしょうか。

(清水省吾)


全国鉄道利用者会議・地方鉄道助けてくださいキャンペーン