その他の環境整備【108】


   リハビリ学校での講義

  〜ベッドコントロールを知らない学生たち〜

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   毎年、某リハビリ学校から招かれて「介護老人保健施設のリハビリテーション」という
   講義を行っています。学生の反応は新鮮なので、毎年の講義を楽しみにしています。
   今回、あっという間の4時間講義の中で一番印象に残った内容を書きたいと思います。
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介護老人保健施設施設(老健)のリハビリを効果的・効率的に機能させるには、
医療機関からのリハビリの引継ぎを、如何にスムーズに行うかが鍵です。

医療機関からは入所時に詳しい情報を提供していただけることもありますし、
殆ど情報が入らないこともあります。
老健は、医療機関とは異なるのでレントゲン画像なども手に入ることは稀です。
元々の目的が異なるので、仕方ないといえば仕方ないのかも知れません。。。
骨折後の方などが入所されてくると状態がわからず困ることも多々あります。


老健は医療機関の「急性期」「回復期」を経て、「維持期」になった方が対象です。

医療機関のリハビリでは、「機能回復」を主に目指しますが、老健のリハビリは、
更に広範囲な「生活回復」を目指した、「在宅復帰・維持」が最終目標なのです。

・・・しかし、老健に於いても「機能回復」を希望される方が結構いらっしゃいます。
その中の多くは、医療機関で行っていたリハビリと同等のものを求められますが、
介護保険は始めから医療保険よりも予算を削りに削った体制で臨んでいますので、
老健のリハビリスタッフは人数も足りず、設備も足りず、時間も足りず・・・
結果的にご希望に副わないかたちとなり、ご迷惑をおかけすることになります。

先ほど述べたように老健は「維持期」になった方が対象ですので、回復の見込みが
あると判断されれば、迷わず医療機関でのリハビリをお勧めしています。
(医師が回復見込みがあると認めれば、医療保険のリハビリを受けれるからです。)

逆に回復が頭打ちとなった「維持期」となれば、障害を前提として生活の可能性を
探るリハビリへと方針転換を図っていきます。そこが老健としての位置づけです。

私は、老健リハビリは生活そのものであり、朝から晩までリハビリと考えています。
当然、そのようにケアプランを立てますし職員全員がそのつもりで望んでいます。

そこで問題になりますのが、医療機関が老健に対してどのような認識をしているか、
ということになります。
Aさんとそのご家族が、病院で「次の施設でも麻痺の回復訓練を受けて下さいね」と
と言われれば、いつまでもそのような施設を探してさまよい続けることになります。
本当は、「次の施設では、生活面を中心としたリハビリ指導を受けて下さいね」と
より現実的な話をしてもらえると、かなりスムーズな引継ぎがし易くなると思います。

現在の医療は平均在院日数という縛りがあり、地域医療のために健全な経営を
継続していくには「ベッドコントロール」をするのは止むを得ないことかと考えます。

リハビリの専門職は、より現実的で効率のよい「ショート・ゴール」を積み重ねて、
次なる老健へと繋いで欲しいと考えています。
(昔は、一度担当すればその方と一生付き合う環境でしたので「ロング・ゴール」
というものをたてることができましたが・・・今では夢物語となっています・・・。)

「今の医療現場はベッドコントロールがすべて」といっても過言ではありません。
いくら希望していてもリハビリ中途で退院させられることだって十分有り得ます。
今の医療現場にとって最大の敵は「ベッドコントロール」ではないでしょうか。


         
        老健にもベッドコントロールの時代はやってくる?!

・・・・・・

そこで、講義したリハビリ学校の4年生(インターン前)に質問しました。

卒業したらどこに就職したいかと聞くと、「医療機関に就職したい」という
学生が殆どでしたが、「平均在院日数」「ベッドコントロール」について
知っていた者は37人中、たったの1人でした。
その1人に話を聞くと「評価実習のとき、カンファレンスに参加したことがあり、
そのときにDrが『あと●日しかない』と言っていたのが印象に残った」とのこと。

しつこいようですが、
今の医療現場のリハビリには時間的余裕はありません。
ベッドコントロールを受けることを前提として、効率的に無駄の無いリハビリを行い、
退院後の施設・家庭へ繋いで欲しい。ただ、それだけです。

そのためには、学校教育として今一番問題となっている
「ベッドコントロールとは何か」くらいは教えていただきたい。

そのように思ったわけなのでした。

久々に長い文章を書いて疲れました・・・・
(「医療・老健・教育をめぐるリハビリの環境整備」という内容でした。。)  (;^_^A


追記: 
毎日のように「介護疲れで・・・」という悲しいニュースが報道されています。
医療機関のベッドコントロールの煽りを受けて、在宅生活を余儀なくされてしまった
方達が犠牲になっていると考えます。
医療機関は、ただ退院をすすめるだけでなく、その後のフォローをどうしていくかを含め、
ご本人・ご家族と相談し、各機関と連携を密にしていただきたいと願うばかりです。
教育現場もこの現実から目を背けずに、学生のうちから教育すべきと思います。
(先生方が現場・現状をご存知なければ教育のしようもないのですが・・・)









                                (介護型リハビリシステム研究所)



〜システムでよりよい未来へ〜
介護型リハビリシステム研究所
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