その他の環境整備【64】

  膝装具(KO)の作り方

今回は「膝に使う装具の特集」です。
膝の支持性が極端に弱い方へ、劇的に状況が変化する可能性がある装具を、
ほとんど「タダ」で作ってしまいましょう。

9年程前に某専門ジャーナル誌にでも紹介したことのあるこの装具。
老健施設では、わざわざ作ってまで訓練を行うことはなく取り上げませんでしたが、
(老健は現実にできる能力を前提に、生活内で安全・確実にするリハビリを行う為)
今回はタマタマ作る必要性があったので、この際紹介したいと思います。


  

↑今回通所で利用開始となった利用者(脳卒中・左片麻痺)の歩容です。
患側(麻痺した側)の膝はプラスチック短下肢装具を装着していますが、
膝の支持性がゼロで体重を支えることができず、膝折れをおこしてしまいます。
とても実用的な歩行を目指すような訓練をできる状況ではありません。

これでは当人ならず介護者(治療者)にもかなり負担がかかってしまいます。
でも当施設に来る前の病院では、これで無理やり歩行訓練をしていた様子・・・。

大きな声では言えませんが・・・、これはハッキリ言って「装具の処方ミス」です。( ̄〜 ̄;)
膝から支えるしっかりした装具を初期からつくらないと、時間・体力・精神力・コスト、
全ての無駄になりかねません。

健側(よい側)の脚力強化と、移乗動作を含めた日常生活動作の改善が目的なら、
立上り・立位保持訓練を中心に行えばよく、無理やり歩かせる必要はありません。

捕装具は、個々の症状にあわせて状況判断してつくらないと後々困ります。
オーダーメイドでつくるため、決して安くない代物ですから尚更です!
そのために病院では「評価」や「カンファレンス」を行っているはずなのです!
・・・などと、一人で憤慨していても仕方ないのですが。。。(;´д`)
(以前は、処方した病院になぜ現状に見合わない装具を処方したのか問い合わせたこともあります・・・)

このようなケースは稀ではなく、医療や介護の現場で意外に良く見かけます。



本来は作りかえるのがベストですが、なかなか金銭的・状況的にそうもいかない
という場合、どのような対応をすればよいのでしょうか???


@そのまま無理やり引きずってでも歩いてもらう。
A歩くのは諦めて、車椅子操作訓練等に切り替える。
B何とか工夫をして歩いてもらう(膝装具を追加する等)。

(↑この中で一番現実的なのはAです。また、Bのように後から膝装具を追加して
歩行訓練をする場合もあります。@をひたすら闇雲にやっているだけの病院・施設も多いようです。)


今回はBの「お金をかけずに何とかする方法」を紹介したいと思います。
                   
(b^ー゜)


【作りかた】




↑まずは、ダンボール(適当な大きさ・・・後から説明)とガムテープ(布製)をご用意
ください。




↑それで膝を包みます。(ダンボールの目に沿って包むのがコツ)




↑それで、やや重なるくらいが適当な大きさと言えるでしょう。




↑ダンボールをテープで覆います。(覆う場所は後の画像で判断しましょう。)




↑このようにダンボールを丸めたまま固定するためのテープをつけます。
剥がしやすいように先端を折っておくと良いでしょう。
2枚重ねの方が、切れにくく丈夫です。




↑できあがるとこんな感じになります。
「固定用テープのテープを貼る場所」も内側につくっておくと便利です。


【装着方法】




↑短下肢装具をつけたままダンボールで覆い、テープで固定します。




↑これで装着終了!!とってもカンタン!!




↑患脚は体重を安定して支えられるようになり、
介助歩行はグンと楽になりました。一目瞭然、劇的に支持性がアップします!!
(ウソだぁ・・・と思う方、試しにやってみて下さい。膝が伸びきる分、多少のコツは
必要ですが、歩行距離は倍以上、介助量は半分以下になるはずです。)


この方、実は通所リハビリの利用が始まったばかり(初日)で、
「現状ではどうしても玄関先を介助にて数歩歩行しなくてはならない」とのことで、
「どうにかなりませんか?」とスタッフから相談がありました。
「それじゃ、これなんかどぉ?」と、評価時に『パ・パッ』と作って差し上げた次第です。
現在は、より安全に車椅子のまま出入りできるような住宅改造を検討しています。




これを知ってしまうと「膝装具がないからやってあげられない」とは言えなくなります(?)

                                (介護型リハビリシステム研究所)
← 介護職がやっているので、
  ちょっとおっかなビックリで
  介助歩行中です。
(利用者も利用初日で大変です。)
←左足に全く体重がかけられず、装具が用を成さない状態。
介助者が必死で体重を支えないと危険です。