ラジオ「夕日のかなたに」1999年3月21日放送分

 

赦すことができますか

 

こんにちは。夕日のかなたに、札場義宣です。

今日は「赦すことができますか」というタイトルでお話しします。

聖書の中に、イエス様に対して弟子のペテロが興味深い質問をしている場面が

描かれています。新約聖書マタイの福音書18章21節と22節です。

 

「そのとき、ペテロがみもとに来て言った。「主よ。兄弟が私に対して罪を犯

したばあい、何度まで赦すべきでしょうか。七度まででしょうか。」イエスは

言われた。「七度まで、などとはわたしは言いません。七度を七十倍するまで

と言います。」

 

多分、この放送をお聞きの皆さんにも、僕にも共通して言えることは、赦すと

いうことは難しい、ということではないでしょうか。しかし、同時に言えるこ

とは、赦すことができるならばすばらしい、ということです。

 

幼い時にこんな思い出があります。おもちゃのブロックで僕はライオンの顔を

作りました。それが大傑作で、何ともすばらしい出来映えでした。世界中で、

こんなにすばらしいブロックのライオンはないだろうな、と思いました。それ

で、自分の机の引き出しに、そのライオンを隠していました。ところがある日、

僕が学校から帰ってくると引き出しにライオンが見当たりません。そして、す

ぐそばで妹と弟が2人でブロックで遊んでいるのです。そのブロックはまさに

あのライオンを形造っていたものでした。僕は怒りましたね。激しく抗議しま

した。つかみかかったかどうかは覚えていませんが、親にもこれ以上無いとい

うくらいにしつこく訴えました。しかし、いずれにしろ後の祭りです。もうあ

の見事なライオンは二度と作ることはできないだろうな、と思い悲嘆に暮れま

した。このショッキングな出来事は幼い心に深く刻みこまれて、兄弟喧嘩の度

に、怒りを倍増するように何度も何度もよみがえってきました。

 

それから、中学生になって僕は救い主イエス様をはっきりと信じて、心に受け

入れました。そしてその後、しばらくして僕は気づいたのです。僕は妹と弟に

対して憎しみを持っているということを。その原因は、あのライオンであるこ

とは自分で分かっていました。これは神様の前には罪だと知っていましたので、

神様に赦して下さるようにイエス様のお名前によってお祈りしました。神様は

僕のお祈りを聞いてくださったと思います。しかし、僕の内から憎しみが消え

るためには、妹と弟を赦さなければならない、ということもわかりました。僕

は中学生なりに一大決心をしました。相手が完全に悪いと思っていましたが、

それでも赦すことにしました。もちろん、僕にとっては簡単なことではありま

せんでした。長く抱えてきた憎しみの種ほど、取り除くのに難しいものはあり

ません。僕は神様に「赦す」決心ができるように、赦しを実行する力を下さる

ように祈ったのです。そして、僕は赦すことができたのです。本人を目の前に

して「赦す」と言ったかどうかは、はっきりと覚えていませんが、でも赦した

という事実はしっかりと覚えています。

 

それからは、このライオン事件を思い出しても、憎しみや怒りは湧いてこなく

なりました。妹や弟に腹を立てる時があっても、その怒りを増幅する材料とし

てこのライオン事件が僕の心の中に登場することはなくなりました。これは僕

にとって、赦すことのできた、その結果のあらわれた貴重な体験でした。

 

これはまだ小さい時の出来事ですが、ある意味で憎しみに年令は関係ありませ

ん。最初に読んだ聖書の言葉で、何度赦すか、という質問にイエス様は、七度

を七十倍と答えましたが、これは何度でもという意味で答えたのです。私たち

は、小さい時から大人になっても、人生の中で何度でも「赦す」という行為を

しなければなりません。確かに「赦す」ことは簡単なことではありません。し

かし、イエス様が何度でも赦しなさい、と言われる時、その言葉の保証もして

下さるのです。「God is able」「神にはできる」のです。私たちは人一人で

すら、なかなか赦すことができないけれども、「神にはできる」のです。そし

て、この神様にあって、私たちも赦すことが「できる」ことを体験するのです。

 

今、いかがでしょうか。あなたが本当は赦したい、と思っている人がいらっし

ゃるのではないでしょうか。その名前や顔が思いうかぶでしょうか。今、自分

の力で赦すことができなくても、神様にあって赦すことを実行しませんか。今、

僕がお祈りしますので、どうぞあなたも心を合わせてお祈りして下さい。「イ

エス様、今私の思いの中にある、赦したいけれども赦せない、と感じているそ

の人を赦します。イエス様、あなたの赦しの力をあらわしてください。また、

何度でも赦す力を与えてください。イエス様のお名前によってお祈りいたしま

す。アーメン。」

 

今週、あなたの上に神様の赦しの祝福がありますように。来週も「赦し」につ

いてお話しますので、ぜひお聞き下さい。それでは、さようなら。

 

*実際に放送されたものに若干加筆修正しました。

 

HOM